12)「マーケティング理論」で、1982年に予測した通りになった2020年代 【本当に売れるマーケティング】
1)これまでの振り返り
第1回は「セールストーク。AIDMAの法則」=「マーケティング0.5」について述べました。
第2回は「商品志向。販売分解。顧客分析」=「マーケティング1.0」について述べました。
第3回は「市場獲得。シェア。経営戦略の重要性」=「マーケティング1.5」について述べました。
第4回は「それまでの理論の総合再構築」=「マーケティング2.0」の誕生について述べました。
第5回は「理論を具現化して実績を上げる」=「マーケティング2.0」の実現について述べました。
第6回は「売れるデザインを本当に作る」=「マーケティング2.3」の発展について述べました。
第7回は「ここまでの多くの理論の大編纂」=「マーケティング2.5」の「編纂」について述べました。
第8回は「売れる広告を本当に作った」=「マーケティング2.3」の発展の別バージョンについて述べました。
第9回は「コトラーのライフサイクル」=「マーケティング2.5」の「編纂続編」について述べました。
第10回は「マイケル・ポーターのファイブフォース」=「マーケティング2.5」の深堀りについて述べました。
第11回は「デビットアーカーのブランド論」=「マーケティング2.5」の「別のエレメントの深堀り」ついて述べました。
この順番には「意味」があります。この順番で読んでいくと、これからの時代にも使える「売れるようにしていく実践的なマーケティング」というものの「根本」が、しっかり理解できるからです。
面白そうなところだけ「つまみ食い」して、良い感じにならないか? などと思わず、しっかりと順序立てて読みこなして欲しいと思って、一所懸命に書いています。どうぞ、ご理解ください。
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2)800万部の大ベストセラー
今回は「John Naisbitt(ジョン・ネイスビッツ)」、1982年に未来を予言した「未来学者のマーケティング」について、少しご案内しておきたいと思います。
彼が執筆した本。「メガトレンド」は、1982年に「世界の先を行くアメリカの未来」を予見した「Megatrends: Ten New Directions Transforming Our Lives」という本を出版され800万部の大ベストセラーとなりました。日本では竹村健一さんの翻訳版が1983年に出版されています。
【メガトレンド】
http://urx.blue/6qZw
学者の書く本ですから、少しわかりにくい書き方がしてあります。が、中身はとんでもないほど凄い。何が凄いのか? この40年前に出版された「40年後は、こうなる」と書かれた内容の通りの世の中に、今、なってしまっていることです。
1)情報社会化
2)ハイテク化
3)グローバル化経済
4)第三世界の隆盛
5)自助精神
6)民営化
7)タテ型からヨコ型社会へ
さらに、まだ「現実化していないこと」が少し残っています。特筆すべきことは、この「40年前のサイクル」が、再度今、繰り返し起こりつつあるということです。結論から言うと、この本を若い人たちが読むと、きっと「面白くない」と思います。
なぜなら「今、本当に 当たり前になってしまっている普通のこと」しか書かれていないから。しかし、その当時に社会で仕事をしていた人たちにとっては「神の啓示」のような「未来予測のバイブル」だったということは ご理解ください。
80年代にアメリカで予測されたこの内容が「2010年代〜2020年ごろの世界を、実際に見て書いたのでは?」と錯覚するほど現実化されています。そのため、現代人がこの本を読んでも「そんなの、知ってるよ」という感想を抱いてしまうことでしょう。
ここで注意するべきポイントは、この本の内容は、1910年頃から およそ10年刻みで進化してきた「マーケティング」の先は「こうならないと おかしい」という、それまでの「マーケティング研究の集大成のような本」であったということです。
実際は「今、この予測通りになっている社会」は、過去に「どういう理屈で予測されたのかを紐解く本」という位置づけで、本当に読み直していただいた方が、もっともっと、色々なことが見えてくると思います。
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3)読む時のポイント
1982年(日本語版は1983年)に出版された「メガトレンド」において、著者のジョン・ネイスビッツは将来はグローバルな情報化社会が到来し、商品に変わって知識サービスに価値が生まれると予想していました。2000年までにPCが電話感覚で家庭に普及し(スマホ)、読者が本を書き(Blog)、視聴者が番組を作る(You Tube)時代になるとも40年も前に予測しています。
内容のすべてが的中しているわけではありませんが、現在の情報化社会に至る流れが的確に描かれています。当時この本に接した際に、特に印象に残ったのが「ハイ・テックとハイ・タッチの共存」という考え方でした。この理論は今、Webマーケティングで注目を再度浴びている「戦略」です。
「ハイ・テック」とはハイ・テクノロジー、つまり高度に洗練された技術のこと。一方「ハイ・タッチ」とは、生身の人間同士が触れ合う、いわゆるフェイス・トゥ・フェイスの関係。ネイスビッツは、技術化が急激に普及してきた社会では、人々はその反動で非常に人間的な価値システムを発達させようとするだろう、と予測していました。
たとえば、情報が即時に共有できるネットワークが構築されてしまった現代では、人々はわざわざオフィスに通勤せずともパソコンさえあれば自宅で仕事をこなすことができるようになりました。
しかし、多くの人はずっと自宅で作業するよりも、頻度は少なくなってもオフィスに集まることを選ぶに違いない、なぜなら人々はオフィスで他の人たちと同じ空間を共有(=ハイ・タッチ)したいからと「人間心理」「人の欲求」をしっかりと分析しています。
オーガニック志向の高まりや、故郷の大切さが盛んにメディアで取り上げられるようになった今、スマホなどのハイテク機器に囲まれながらも、いいえ、そういうハイテク機器に囲まれているがゆえに、自然や人とのつながりをいっそう希求するようになった現代人は、まさにハイテクとハイ・タッチの2つの価値のもとで生きていると言えるでしょう。
情報化社会になって在宅勤務が当たり前になっても人は他の人と一緒に過ごすためにオフィスに行き、ホームシアターが普及しても映画館はなくならない。経験の共有が重要であり、その自由度を高めるために技術が利用されるようになるという予測は、現在の多様化されたワークプレイスや仮想と現実をつなぐ現在のSNSのあり方をも的確に捉えています。
今後もこの考え方は、十分に通用します。1980年頃に立てられたメガトレンドでの予測は、それまで構築されてきたマーケティング理論をベースに、より具体的な事実に基づき組み立てられています。いってみれば「朝顔の成長記録」のようなもの。パターンが見えていて「今、どの状態にあるか?」がわかれば、その先の予測はつくということ。
将来の姿を予測するのは簡単ではないと思っている人も多いのでしょうが、その時々の事実を適正に収集し適正に積み上げられてきたマーケティング理論を順序立てて解釈していけば、未来への流れはその延長線上に見えてくるということの証明です。
この1980年代初頭に発表された「メガトレンド」の中で、21世紀の特徴はグローバル化であり、グローバル化はすでに始まっているという意味で「21世紀はすでに始まっている」と刺激的な発言を行っています。
インターネットによって、企業規模を問わない経済活動が盛んになっており、21世紀はこうした小規模な経済活動が世界を動かしていくと指摘しました。また、ネイスビッツ氏は、21世紀は「パラドックス(逆説)」の時代であると指摘しています。
パラドックスの時代を生き抜くには、固定した観念にとらわれず、不確実性を前提に意思決定を柔軟に変えていく必要がある。彼が最初に提示したパラドックスは「世界市場の規模が大きくなるほど、それを構成する要素は小さくなる」というもの。
これは、経済規模がグローバル化が進めば進むほど、国、企業、個人など、経済活動を支えるパーツが小規模化し、力を増してくるという。この本が出版された頃、すでに米国経済にはこのパラドックスを裏付ける兆候が現れていました。
1970年代、米国経済の70%を「フォーチュン500」の企業、すなわち米国のトップ500社が牛耳っていたのです。ところが、1985年頃のデータでは、こうした「それまで米国を牛耳っていた大企業」の米国経済に占める割合は、わずか10%にまで減少してしまっています。
さらに、19人以下の企業が、米国輸出の50%を担ってしまったのです。米国では95年度、なんと100万社もの企業が設立されましたた。こうした新しく小規模な企業が、米国経済を牽引する原動力となっていたのです。
「起業家にとってはすばらしい時代が到来した」とネイスビッツ氏は、当時、声高らかに宣言しています。しかし、既存の企業、ことに大企業にとっては、厳しい時代。「大事なことは、まず“分社化”すること。より小さく、より強力な企業体で活動することだ」とネイスビッツ氏は1982年の段階で説いています。
この本を読み直してみると「今の若い方々が 見落としているポイント」が見えてくると思います。古書しか ありませんが、ご覧になった方は「面白くない大前提」で【見落とされた宝物を探す宝地図を見るような感覚」で読んでみると、きっと【自分の仕事にとっての宝物】が見つかる。そういう気がしています。
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4)40年前にも同じことが起こった
私は理系出身者で、文系企業の代表みたいな「百貨店」という業界に入社しました。大学時代の専攻は「物理学」。物理を勉強したかったわけではありません。当時は「情報系の学部」なんて【存在しなかった】のです。私は「コンピュータ」を学びたかった。大学で学んだのは「COBOLやFORTRAN、BASIC」といったプログラム。
そういうことを1970年代に研究したり、学べたりという学科は「物理学科」ぐらいしかなかったのです。言ってみれば「情報学部 プログラム学科」の「はしり」のような学問を大学で学びました。とてつもなく「大きく、のろいオフコン」で、そういうものを学ぶしかなかった。
そもそも「POS システムの構築」が取り沙汰されていた時代に「POSプログラム」を組みに百貨店に入ったわけです。当時は「バーコード」なんてものは存在しませんでした。今から たった40年前です。そして「POSデータから、顧客分析をする」という部署が新設され、私は、そちらの新部署に移動。
それが「マーケティング」を行っていた部署でした。そこは「販売戦略」を立てたり「出店計画」を立てたり。「販売促進戦略」を立てたり「広告」を作ったり「店内の設計」をしたり「新店舗」の内装計画をしたり。そういう部署でした。理系の私には、まるで「別次元の宇宙空間」のようでした。
そんなことを感じていた時に「衝撃的」に登場したのが、この本でした。今、Web設計をしたり、デジタルマーケティングをしている人たちが大勢いらっしゃる。そういう方々に 私が伝えたいことは「コンピュータ」も「スマホ」も「タブレット」も、所詮、時代の最先端をいう「おもちゃ」でしかないということ。
当時も「コンピュータがあれば、なんでもできちゃう」といった感覚が取り沙汰されていました。でも、そうじゃなかった。「機械」は「単純なこと」しかできない。その向こうには「人間」が存在して「経済」を「人間が動かしている」という事実は不動です。これは、今の時代も変わらないし、これからも 変わらない。
Webマーケティングや、デジタルマーケティングを していらっしゃる方々に理解して欲しいことは「人間相手のマーケティング」が理解できていないと「プログラム設計のフロチャートは書けない」ことは、40年前から、何ひとつ変わっていないという現実です。
「文系の会社」の「文系の部署」に移動配属され、タイヘンだったことは「マーケティング」を学ばなければ「周りについていけなかった」ということ。そして、トクをしたことは「フロチャート」が書け、パソコンを他の人達より少々マシに使いこなせたということです。
POSという「金融プログラム」は「COBOL」という言語で動きます。「WindowsPC」が登場する前の「MS.DOS」の時代。Microsoftの「EXCEL」の前身である「LOTUS1.2.3」を使いこなせていた少数派の人間であったこと。「COBOL」から発展した「D.B.MAGIC」という言語が少々理解できていたこと。
こういうことが、当時の私の評価を高めたことは否めないと思いますが、それでも、私は「コンピュータは 人間の使うオモチャ」で、マーケティングで対峙するべきは「その向こうの人間だ」という感覚は、この40年、まったく変わらないのです。
フィリップ・コトラー博士が、近年「マーケティング4.0」という理論を発表していますが、ほぼ、この「メガトレンド」という本の中身の「あたっているところ」を再踏襲している考え方と言って良いと思います。しかも、こちらの方が「読むポイントがわかりやすい」のです。
この話の延長線上にある話は「A.I.」に関わってきたり「Amazon」などが、どうやって巨大化していったのか? という話に関わってきます。その話をする時に、この話の続きを ご案内しようと思います。その話をする前に「もうひとつ、ふたつ」伝えておかなければ、今回の話の続きに「つながらならないポイント」がある。次回は、そのBridgeとなる お話を・・・