マジで正直な大学生@ルノアールTOHOシネマズ前店
大学生という男の子は、とても正直な人のようだった。
「正直これが、最後のチャンスですし、正直これを逃したら、もう次はないです」
「問題は、資金調達ってことですよね。だったら、正直いい方法があります」
「僕が諸々手配できるんで、おまかせいただければ、正直お金は調達できます」
独り言を言っているのではない。
ワイヤレスで通話しているのだ。
「とりあえず、車を買ったテイで、現金を持ってくるんですよ。正直、その方が消費者金融より安く済むんですよ。月々の支払いよりも、投資の利益のが多くなりますから。正直僕も、最初FXを50万で組んで455万まできたんですよ。だから、僕オススメしているんですよ。正直ずっとお付き合いしていきたいお客さんだからきちんと説明しているんですよ」
「まず、審査だけ受けてみませんか? 今話していて、正直僕、一緒に仕事したいと思ったんです。だから、審査が通ったら、すぐ、北海道飛びますよ」
相手は北海道らしい。
「僕は大学生ですけど、正直この商材のおかげで随分、勉強しました。20代後半とか30代の人にすすめないんですけど、同世代の人にはすすめるんです。じゃあ、とりあえず、申込書送りますよ。正直今の給料より大きく稼げますよ。じゃ、次のアポがあるんで」
突然会話が変わった。
「あ、お疲れ様です。マジ契約取れましたよ。マジでマジで。北海道の消○士さんで、この前の自○隊の人のパターンでした。あ、車の契約のパターンで決めました。マジですか?時計のがよかったですか? マジですか?あ、車で大丈夫ですか。よかったっす。あ、マジいまっすか? ルノアールです。ゴジラのほうっす。なんか、靖国通りの方にいたんですけど、マジMLMの人が8人くらいいたんで。こっちきちゃいました。じゃあ、ここで待っていますね」
マジで正直な大学生の彼は電話を切って
スマホをいじり始めた。