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観音寺から演劇文化を発信したい!を応援したい!
観音寺から演劇文化を発信したい!
あるクラファンが目にとまった。(現在は終了)
香川県・観音寺市出身の2人の女優さん(嶋尾明奈さん、廣田琴美さん)が「地方での演劇文化を盛り上げたい。演劇を通じて故郷に恩返しをしたい」という志しの下、観音寺公演の運営費を募っていたのだ。
地方発信のこういった試みは困難が伴う。演劇ともなれば尚更だ。私自身も地方都市出身だから分かるが、まず地元で演劇文化と言うものが根付いていない。根付いていないから集客に苦労する、集客しないから採算が取れない、儲からないから先細りしていく、という悪循環に陥りがちである。音楽であれば地方でも野外フェス文化が浸透しているが(香川県でも「MONSTER baSH」(モンバス)という大規模な野外フェスが実施されている)、残念ながら地方演劇が盛り上がっているとは言い難い。
音楽に限らず、スポーツでも、各種アトラクションでも、生で体感するのに勝るものはない。演劇も然りである。演者の息遣いを感じるほど近い距離から観劇することは、テレビドラマを見るよるもはるかに心を揺さぶられる。圧倒的なライブ感は何物にも代え難いのだ。
たが現実では「生観劇サイコー!」という認知は市民権を得ていない。そもそも生演劇を見たことが無い人が圧倒的多数だからそれも仕方がないのだが。
そんな状況を打破すべく手を挙げたのが前出のお2人だ。地元に演劇文化を根付かせるために、「たのしいくわだて香川公演」(以下、たのくわ)というプロジェクトを立ち上げ、クラファンを募った。目標金額は80万円。
私が些少ながら出資したときは、終了日まで1か月を切っていたにも関わらず、10数万円しか集まっていなかった。観音寺市民に2人の想いが届いてくれ!と祈るような見守っていたが、それから各メディアで紹介された影響なのか、あれよあれよと出資金が積み上がり、最終的には、88万円強と目標額の110%を達成してフィニッシュ!
そして2024年8月24日(観音寺市)・25日(三豊市)の公演が実現することとなる。
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いざ本公演!
私は、8月24日はお昼くらいに行われた公開リハーサル(ゲネプロ)を拝見させてもらった。場所は、かまぼこ音楽堂。
実は前日、嶋尾さん、廣田さん、川上さん、森脇さんの4名様が当ホテルにお越しになったので、今回の「たのくわ」について色々とお話を伺っていた。
今回の出演者は、事前に行われたワークショップ参加者から選ばれた、ということで、現役でお芝居に取り組まれている人もいれば、以前お芝居をやっていた人、今回初めてお芝居をする人、と様々なスタンスの人が参加されているらしい。お芝居未経験の人がひとりいるけど分かりますか?とクイズも出されたので、しっかりと見極めようとリハーサルにお邪魔した。
今回の公演では2つの話が上演される。それぞれ20~30分なので、計1時間が今回の上演時間となる。演劇は不勉強な身なれど、それぞれの話の感想を記してみよう。(以下、公開リハーサルの感想となります。本公演では内容が多少変わっているところがあるかもしれませんので、ご承知おきください)
1本目「灯りがともる頃」
ちょうさ(お祭り)を眺めている、5人の男女。アラフォーの男女3人と、老女とそれに寄り添う女性。
他愛もないセリフの掛け合いから、この5人の関係性が少しづつ明らかになっていき、最後には大団円と言うにはちょっとほろ苦いラストを迎える、というお話である。人生経験が豊かな人ほど、身につまされたのではないだろうか。かくいう私自身も登場人物に自分を重ねて、色んなことを想い出した一人である。
さて感想だが、脚本が練られているなぁ、とまず感じた。セリフで長々と説明することなく、会話のキャッチボールだけで、個々人のバックボーンがなんとなく透けてくる。「こーいうやり取りがあったんだろうな」「過去にあーいう出来事が起きたんだろうな」と言外のストーリーを観客に想起させられるのは非常によくできた脚本だからだろう。そこが言葉足らずだと観客が「え?どういうこと?」って途中で脱落してしまうだろうし、全てをセリフで説明し過ぎると演劇の意味が無い。そのセリフ量が絶妙だったように感じた。
その必要最小限のセリフを演劇として成立させたのは、演者の演技力の賜物だろう。セリフを補完する、各々の所作や口調は素晴らしかった。特に話の中心である川上さん、廣田さんは揺れ動く心の機微が伝わってきた。腫物を触るような微妙な距離感から始まり、徐々に蓋をしていた想いが溢れてきて、徐々に自分の心に素直になっていく様は、本当に引き込まれた。
実はこの1本目に、芝居未経験の演者さんがいて、私はそれを当てることができた。もっとも5人の中で、その方が演じた役柄が一番一般人に近いので、その人かなぁとフワッと思っただけである。演技未経験の方にそこまで重いバックボーンを背負った役はあてないだろう、という邪推である。演技の巧拙だけでは決して見分けられなかった。それほどその人も上手く演じられていたと思う。というか、5人全てが必要なピースとして機能していたので、終演後、心地よいカタルシスを感じた。
2本目「まつりのあと」
こちらは1本目と打って変わってコメディ色が強い作品である。大阪行きの高速バスが舞台で、クセが強い乗客が続々乗り込んでくるが、発車時刻を過ぎても、なお発車しない。運転手は、既に乗り込んでいる乗客にせっつかれるが・・・という内容である。
運転手と乗客のやり取りを通して、なぜバスは発車しないのかが明かされていくのだが、正直言うと、最後まで気持ちが付いていかなかった。1本目で様々な感情を揺さぶられての2本目である。何か仕掛けがあると思って身構えて観ていたが、最後まで観終わって「あー純粋にコメディとして見れば良かったんだ!」と気付いた次第である。その構造が分かった上で、もう一回見ると印象はガラリと変わるはずだ。あるいはこちらが最初に上演されていたら、すっとコメディの世界に入れただろう。
と、このような心境で観ていたんですよというエクスキューズを入れておいての感想である。クセが強い乗客が次々に登場するが、スラップスティック・コメディとして成立させるため、という側面が強いのかなと感じた。どのような役柄も賑やかし以上の意味は持っていないというか。
劇中、落ち込んだ運転手を乗客が励ますシーンがあったが、ただ励ますだけではなく、乗客それぞれの特技を持ち寄り、運転手のピンチを救うという展開があっても良かった。結局バスを出発するもしないも、運転手のさじ加減で決まってしまうので、乗客がもっと積極的に関与して運転手の問題を解決した上で、いざ出発!となった方が話として盛り上がったのではないだろうか(私の好み的に)
とはいえ演者の皆さんの演技には何ら違和感は持たなかった。コメディこそ演技力が求められるが、きっちり仕上がっていたのではないだろうか。色んな要因が重なって私が没入できなかっただけなのだ。たのくわの舞台を観る機会がまたあれば、コメディを観るモードで臨みたい(事前にコメディだと分かっていれば)。
「たのくわ」の今後
今後の「たのくわ」の活動としては、まずは再びワークショップを開催することが決まっている(2024年10月26日)。その後は、キャストを選抜、第2回公演を行う、という流れになっていくのだろうか?
地方から何か発信するというのはなかなか難しいことだが、その動きは必ずその地方にプラスの影響を与える。ただ、その効果が目に見えるようになるまで、時間がかかるのは仕方ない。種を植えたとて、定期的に水や肥料を与えなければ芽は出ないのだ。
「たのくわ」の最終目標は、国際的な演劇祭を育てることである。まだまだ挑戦は始まったばかりだが、私自身、こういった活動は芽が出るまで応援したいし、きっと芽が出ると信じている。演劇のことは何にも分からないが、今後、第2回公演のために出来ることがあれば、喜んで協力させていただきたい。
「たのくわ」の未来はきっと明るい!そう強く信じる