(73)ちゃんとわかるかたちで愛情が届いた
須藤さんと久しぶりに身体を重ねることができて、
とてもしあわせな余韻で夏は過ぎた。
相変わらず、ひと月以上会えない日々だったりしながらも、
旅の写真を送ってください、と伝えるとその旅の風景の写真がいくつか送られてきたり、
なんとなく、ふんわりとした感じでやさしく繋がっていた。
そんな秋。
わたし自身の大きな節目の大事なイベントがあって、
須藤さんが忙しいのは知っていたし、その日も予定が入っているのはわかっていたけれど、
「明日、少しだけでも会えたら、がんばれます」
と前日に思い切ってメールをしてみた。
いつもは無茶を言わないように、困らせないように、と思って控えめにしているけれど、この大事な日くらいは、そんなわがままを言ってみてもいいかな、と思ったのだった。
須藤さんからは、行けるかどうかわからない、といういつもの感じの返信がきた。
まあ、そうだろうな。
当日、もう期待はせずに、会場で着々と準備を進めていた。
ちょうどひとりで準備をしていたところだった。
須藤さんがしずかにふわりと現れた。
自分の仕事の前に、わざわざ寄ってくれたのだ。
ほんの数分、ふたこと三こと言葉を交わして、ハグをして次の現場へ向かっていった。
とてもタイミング良くほかの誰もいないじかんだったので、ハグはぎゅうっと念入りに。
須藤さんが、来てくれた。
ほんの数分だけ、わたしに会うために。
嬉しすぎる…
そしてその後さらに、
彼からのお祝い花が届いた。
さっき会ったときは「お花を贈ったよ」なんてひとことも言ってなかったのに。
なんて素敵。
神様ありがとう。
これまでずっとずっと、夫や、須藤さんにも、満たされない思いを抱えてきた。
でもこんな、うれしい思いで満たされる日があるんだなあ。
ご褒美みたいだ。
好きな人に、ちゃんとわかるかたちで愛情を示された。
今年は、誕生日プレゼントを初めてもらったり、
身体を久しぶりに重ねたり、
この6年以上の関係の中で、いつもよりなかなかに報われる瞬間があったなあ
なんて、味わい深く感動していた。