(74)過去生のふたり
そんなふうに、
須藤さんを好きでいる日々は、
めちゃくちゃ報われた気持ちになる日と、
放り出されたような気持ちになる日とで、
ジェットコースターのような感情の起伏を味わうことが多い。
基本的には、わたしがほとんど一方的に好きで、
彼がそれを遠慮がちにゆるく受け止めてくれている、そんな構図だと思う。
そんな中、
ときどき、この関係の意味が知りたくていくつかスピリチュアルのセッションを受けたりして、
何人かの人に、
「前世で報われなかったふたりみたいですね」
「想い合っていたのに引き裂かれた過去があるみたいです」
というようなことを言われた。
なんとなくそうなのかもしれない、と感じながら、
友人のセッションで深掘りする機会があった。
そこで出てきたふたりの過去はいくつかあって、その中でもとくに響いた中世ヨーロッパの時代のストーリーがあった。
その時ふたりは世間に知られてはならない禁断の恋の関係で、
結局、最終的には彼が毒をふたりのぶどう酒に盛って、無理心中しようとしたというもの。
結果、彼だけが死に、わたしだけが毒にもがきながらも生き残ってしまって、その後牢獄に入り、なにもかも失って、友人も家族もつくらず、自暴自棄で若くして死んでいった
そんなストーリーだった。
そのはなしに耳を傾けながら、自然に涙が頬を伝う。
どうしようもなく彼を追いかけて求めてしまう理由が少しわかったような気がした。
その過去生でわたしは、先に死んでしまってもう会えない彼を、じぶんが死ぬまでずっと愛し、求め、恨み、焦がれ続けたのだろう。
だからこんなにも、苦しいのか。
彼の方はその人生で愛を貫いて死に、そこで卒業したようだった。だから、今世ではもう、わたしを追い求めることはないのだ。もうとっくに終わらせて次に行っているのだから。
とても納得した。
これですべての感情が溶けて気持ちがすっきりするわけではないけれど、
このどうしようもなく奥から来る抗えない感情の理由が腑に落ちて、
これは今の感情ではなくて、
ずっとずっと過去の、報われなかった哀しみなのかもしれない
そんなふうに、少し俯瞰してみれるような気がした。