『女の子らしさ』って結局なんだったんだろう~『硝子の靴を叩き割れ』制作秘話~

硝子の靴を叩き割れ秘話。
こちらは作品発表時にTwitterにて更新していたものをまとめて加筆修正したものです。
本編のネタバレが含まれますので読了後の閲覧推奨。
本編は無料で読めるpixiv版と、書き下ろし短編をプラスした書籍版がありますのでお好きな方でご覧下さいませ!


☆以下から裏話開始です!


メグミとケイ


「正反対で同じ」「違うようで一緒」が2人のキーワードだったので、最初から「恵(メグミ)」と「恵(ケイ)」という同じに見える違う響きの名前だけは決まっていました。(なんなら仮タイトルが『恵と恵』だったくらい。そのまんまだね)

美少年のように見えるけど実は女の子らしさに憧れているケイ……は初期案からほとんど変わっていないのですが、メグミは「ケイの反対にいる女の子、鏡写し」というのがあってから生まれたので、だいぶ初期から変わっているところがあったり。
「女の子らしいけど中身は別にそうじゃない」というところは今とそんなに変わらないのですが、今と比べるともっと男らしい……というかもっと冷めてる子でした。
まあ結局最後まで書いてみたら行動がめちゃくちゃ男前な子になったので原点回帰したっちゃしたんですけどね!!

 


舞台設定について

ほとんどの場所は特にここ!って明確に決まってる訳では無いんですけど。
イメージした所がいくつか。
友樹とメグミが通う大学→埼玉県にある某所。近くに喫茶店があって、比較的アクセスがよくて、キャンパスが広い……というイメージにぴったりだったので。
ちなみにメグミは語学系、友樹は経済系の学部に通っているイメージでした。
メグミのパパはホテル経営に関わるお仕事をしているので、メグミにも国際的な場で活躍出来る力を身につけて欲しかったんですね。
メグミ的にも「キャンパス広くて綺麗だし、電車もあんまり混まなそうだし、そこそこお店も揃ってる環境だし、語学も別に嫌いじゃないからいっか」みたいな感じで割と好都合だったので。

水族館→すみだ水族館。
室内でゆったり見られるし、スカイツリーの中にあるのでお買い物デートにも最適(ダイレクトマーケティング)。
イルカみたいな大きな生き物はいませんが、ペンギンを見ながら利用出来るカフェがあったり、ちょっと珍しい金魚の展示やクラゲのエリアなどが充実しているのでおすすめです。
ちびっ子で賑わうレジャー施設、というよりもゆっくりお話しながら見られる素敵な空間っていう感じがいいなと思ったので採用しました。ちなみにケイが自分の過去を語るシーンは実際にすみだ水族館でペンギンを見ながらスマホで書いてました。
このご時世(※Twitterにて投稿した当時はコロナ禍真っ最中でした)ですが、すみだ水族館ではTwitterで館内の様子を配信しているのでぜひ見てください。
あと年間パスポートはマジでお得なのでぜひまた開館した日には年間パスポートを買ってペンギンを見ながらのんびりドリンクを飲みながらケイの気持ちを味わってみてください。
結局すみだ水族館のダイマで終わってしまった……。

メグミとケイのお買い物デート→渋谷。
あの異世界感……というか。大きいビルがあって、色んなものがツギハギになったみたいなあの風景がいいなと思ったので参考にしています。
ちなみにメグミがよく行くファッションビルのイメージは109。

ケイとメグミの思い出の場所についてはこのくらいで。

物語の都合上現実とちょっと変えたところもありますが、聖地巡礼できないことはないのでもしよかったら実際に行ってみてくださいね。


ケイについて

「見た目は王子、中身は姫」というのがスタートだったケイですが、思っていたよりもかなり可愛く仕上がりました。
最初はもっと余裕たっぷりのシーンが多かったはずなのに……どうして……。
まあ、メグミから見て「かわいい!すき!愛しい!!」ってなる様を読む人に伝えてこそのケイなのでかわいくなるのは必然だったとも言える。
ケイをかわいいって言ってくれる読者の方が多くてめちゃくちゃ嬉しかったです。
ただひとつ言えるのは、男でも女でも関係なく、メグミはケイだからケイを好きになったということ。
例え男の子でもメグミはケイのことを好きになったし、2人が男同士であったとしてもそうだったと思います。 
あと、これは蛇足なのですが。実は最初はケイが語り手だったりしたんですよね。 
冒頭の喫茶店のシーンなんかはケイ目線のボツ原稿があったりして。


メグミについて

「かわいいを武器にして戦う戦士」。
それがメグミの始まりでした。
「かわいい」って女の子にとっては武装でもあると思うんですけど、メグミはそれを最大限に活用して戦う子でした。
例えばメイクだって、自分の為にやっているという女の子が多いと思うんです。
自分のなりたい顔になりたい。
自分の気分が上がるから綺麗なお化粧をしたい。
そんなふうに。

自分がいいと思う自分になりたい。
憧れているモデルさんみたいに綺麗になりたい。
好きな服が似合う体型でありたい。
オシャレとかかわいくするのって、そういう側面もあると思うんです。

でも、世間的にはまだまだそうじゃない。

「女の子がかわいくするのは他人に気にいられたいからだ」なんて思ってる人がまだまだいる。
かっこいい服とかかっこいいメイクが好きな人だっているのに「もっと女の子らしいほうがいい」とか。
もう「うるせーーーー!!!しらねーーーー!!!」って感じです。
そもそもその女の子らしさってのは誰が決めたもんなんだ???
女の子らしさだけじゃなくて、「○○らしさ」を押し付ける風潮というか、こうあるべきみたいなものはどんな属性の人にもきっとあって。
でも、それってその人個人を見てるわけじゃないよね……?

メグミにはそれを逆手にとってもらいました。誰かが勝手に決めた女の子らしさを完璧に着こなして世界を嘲笑ってくれるような強い女の子になってもらいました。
メグミにとって「女の子らしさ」は鎧。
鎧の中身のことは誰も見えてない。

全力で色んなことに対して「うるせーーーー!!!しらねーーーー!!!私は!!!好きにする!!!」って駄々こねてもらいました。もちろん、人の理想を演じるだけでは満たされなかったのですけど……。


初期案のメグミ

初期案のメグミはもっと違う感じだった……ってさっき書きましたけども、具体的にどんな感じで違ったのかっていうのをボツ案のセリフ集からご紹介します。

「結局みんな『女の子』っていうものを見ているだけなの」
「自慢もお世辞もいらないよ。私はただ……お魚を見ていたいだけなのにね」
「欲しいものが手に入ったことなんて一度もない」
「嫌い。みんな嫌い。私に構ってくれないパパも、私を置いていったママも!私を愛してくれなかった人達は、みんな嫌い」
「こんなに楽しいことをしてたんだぁ、あいつら。ずるい、ずるいなぁ。こんなのずるいよ」

なんか……なんだろう……。
めちゃくちゃスレてる……。
もしこのメグミのまま話が進んでたらこの話はもっと救われない話だったな……というか。
少なくともケイは幸せになれなかったと思います。
だって怖いもんこの女……。


岸田友樹について

彼は……いい子なんです……。
いい子なんだけどデリカシーというものが1gもないだけなんです……。

それはさておき。

友樹の由来は「友達としてはいいやつ」「友達止まり」っていうところから。
苗字は当時聞いていた曲のアーティストの名前からとりました。
性格に関しては「クラスに3人くらいいる残念な男の子の悪いところの詰め合わせ」みたいな感じです。
良くも悪くもテンプレ通り、というかわりとよくいる感じを目指しました。

女の子に対して理想を抱きすぎてるところとか、良かれと思って空回りするところとか、余計なことばっかり言っちゃうとか、仲のいい子にはつい軽口叩いちゃうとか。
そういう子、なんとなくクラスに1人ずつくらいいたような気がするんです。
向こうに悪気がないから……って分かるところが尚更タチが悪い。

ただ、友樹みたいな子が出来上がっちゃう原因のひとつは、それを教えてあげられなかった周りの人とか学ぶ環境がなかったことかなとも思うので彼も被害者といえば被害者なんですよね。
わからないから憶測で語っちゃう。
わからないから、なんとなくそういうもんだと思っちゃう。
これは性別だけじゃなくて年齢とか職業とか様々な所に対して。
相手のことをわからないからわからないままで決めつけちゃう。
…………誰の心にも岸田友樹はいるんだ、いるんだよ。

彼が失ったものは彼にとって大きいものでしたが、それ以上に得たものも大きいと思います。自分の良くないところをちゃんと良くないってわかったので。
いやまあでも……かわいそうっちゃかわいそう……。
幸せになって欲しい。岸田友樹。


……ちなみに、岸田友樹が主役の話も後に出ました!
ある意味で硝子の靴と対になる話ではあるんだけど……。
岸田友樹、実は作者の中で一番の問題児というか。
今までで一番困らされた子だったりするのです。
なんなら未だにもうちょっとどうにかなんねーかなって思ってるよ!実はね!
わかんないなりに考えて足掻いた岸田友樹を見守ってくださる方は是非こちらもよろしくお願いします。 
あ!成人向け描写があるよ!気をつけてね!




そんなわけでいかがでしょうか。 
最後まで宣伝になってしまったのはすまぬ〜。
個人的に作者の裏話とか、どんなことを考えてキャラを作ったのかとか、そういう話が聞きたい人なので自分でも書いてみましたけど。
こういうの、読みたい人他にいたりしますかね。
『硝子の靴を叩き割れ』、本編はずいぶんと前に書いたものなのですが実は未だに私の中でこれより納得いくものは実は書けずにいたりするのです。
なんならこれを書ききった時に全て出し切ってしまったのでは?と思ってたこともあった。
色んな意味で思い入れのある作品です。
最近になってまた読んでくださる方がいらっしゃったのもあって、改めて裏話をまとめてみました。
もし他にも裏話が出せそうなものがあったらそのうちだそうかな!
ではまた!

鹿野月彦

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