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400字で分かる落語「鰻のかざ」

「う」の58:鰻のかざ(うなぎのかざ)
【粗筋】 ケチな男、隣の鰻屋の匂いをおかずに飯を食っていると、月間になって勘定書が届いた。「かぎ代」とある。「よし払ってやる」と、銭をジャラジャラを放り出す。鰻屋が拾おうとすると、「おう、取っちゃいけねえ。音だけ聞いて帰れ」
【成立】 安永2(1773)年『軽口大黒柱』巻三の「独弁当(ひとりべんとう)」があるが、同年『坐笑産』の「蒲焼」や、安永9(1780)年『大きに御世話』の「蒲焼」らがほぼ現行通り。袋に銭を入れて振るという演出もあるが、上方の本ではそれが本来の落ちで、銭を投げ出すことは絶対に無いと書かれている。まあ、投げ出す方が江戸っぽくていいじゃない。
 「かざ」は「香気」と書いていい匂い、香りのこと。上方言葉と書かれた本があるが、江戸でも普通に使う言葉。「匂いを嗅いだだけなんだから、音だけ聞いて」と説明するとくどくなる。「鰻代」とも。
 三遊亭円生(6)が、匂いを嗅ぎながら、「今日の鰻はちょっと細いな」というのがおかしかった。
【蘊蓄】 『ナスレディン・ホジャ物語』では、肉を煮る湯気にパンをあてて食べ、代金を請求されたホジャが銭の音を聞かせる。
『パンダグリュエル物語』巻三之書(ラブレー)第37章では、焼き肉屋の前で匂いをかぎながらパンを食う人足に代金が請求され、通り掛かった者が「銭の音で支払いは済んだ」と宣言する。

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