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大丸・PARCOの株で資産運用する!

大丸松坂屋とPARCOを運営するJ.フロントリテイリング(株)の2024年3-8月半年分の決算発表が、10月8日に発表され、コロナで落ち込んでいた業績が文字通り、"J"字回復しており、その回復理由と、今後のさらなる成長期待の予測を見ていきたいと思います。

J.フロントリテイリングって、なんだっけ?

J.フロント リテイリングは、2007年に大丸と松坂屋の合併により誕生しました。両社はともに日本の百貨店業界で長い歴史を持ち、関西を拠点とする大丸と中部・関東を拠点とする松坂屋が経営統合を行い、新しい持株会社であるJ.フロント リテイリングが設立されました。(この頃の話はまた次の機会に書きたいと思います。)

2012年、J.フロント リテイリングはPARCO(パルコ)の株式を取得し、子会社化。PARCOは、若者向けのファッションやカルチャーに強みを持つショッピングモール運営企業で、これによりJ.フロント リテイリングは、百貨店事業だけでなく、ショッピングモール事業へも事業展開。その後、2019年にはPARCOを完全子会社化。

2017年、東京・銀座に大規模商業施設GINZA SIX(ギンザシックス)が開業。これはJ.フロント リテイリングが中心となり、森ビルやLVMHグループなどが共同で開発したプロジェクトです。GSIXは約241店舗の高級ブランドやレストラン、文化施設などを備え、銀座エリアのランドマークになりました。かなり高級店舗が揃うお店ですが、若者と観光客が多く、かつての銀座の百貨店のイメージを刷新しました。
施設には、現代アートで有名なアーティストの作品が展示されており、香港のK11 MUSEAみたいな感じです。

不動産事業へシフト

2012年頃から、ショッピングモールの運営企業だけではなく、不動産事業への事業転換も少しずつ始めます。自社が保有する不動産を開発して新しい商業施設の開発やオフィスビルの複合ビルを開発していきます。

その代表例が、

2019年に大規模な再開発でリニューアルオープンした「大丸心斎橋店」です。この施設は後述しますが、復活の立役者のひとつです。

その他にも、2017年に、上野にオープンした「上野フロンティアタワー」も百貨店だけでなく、オフィスやシネマコンプレックスが含まれます。そして、「松坂屋名古屋店」の再開発プロジェクトも同様に主に商業施設とオフィスの複合施設です。

この10年でJ.フロントリテイリングは、自らで旧型百貨店を再開発で一気に優良資産に入れ替えており、2017年くらいの前の収益構造と利益の質が明らかに変わっております。

利益の質が変わったにも関わらず、現在の株価が昔と一緒というのは、少し違和感ありますね。市場の評価が厳しすぎるか昔の百貨店のイメージが払拭出来ていないかもしれません。今後の更なる成長も期待できることは明らかです。2017年の時に、現在の顧客層の変化や収益構造の変化と、2024年度以降の成長を市場が織り込んでいたとはさすがに想像出来ないので、その頃と同じ株価というのは、低すぎますね。

J.フロントリテイリングの株価推移

回復理由と今後の成長

ここまで過去の歴史を振り返っただけでも、回復理由は一目瞭然ですが、直近の決算発表でその回復っぷりを数字で見ていきましょう。

まず、はじめに数字の話の前に、決算説明会資料の表紙に書いてある一言が大好きなので、そこから紹介させてください。

〜 変革の、スピードを上げる。〜

経営者のメッセージがストレートに乗っていて、社内での号令と株主への宣言がシンプルに表現されており、2012年の合併時の百貨店オワコン論からの脱却を掲げていることが、この1文でよく分かります。この一言を表紙に掲げているだけで応援したくなります。
この短い文章の句読点にも深い意味と議論の末の結論がにじみでております。

店舗別売上高

店舗ごとに売上高を見ていくと、対2023年度でも対2019年度でもほぼ2桁スコアの成長していることが分かります。2020~2022年度の3年間はコロナ期間なので、ここの落込みは特殊であるという説明のもと、22年度、23年度、24年度と、それはそれはすごい成長率です。

大丸松坂屋の売上高
PARCOの売上高

大丸心斎橋店本館

上記の通り新たにリニューアルオープンした「大丸心斎橋店」の売上高UPが、特にすごいです。心斎橋店は、同社のなかでもリニューアルして大成功した事業のひとつとして取り上げております。元々百貨店だった彼らにとっては、この施設の百貨店とショッピングセンターを融合させることは、プライドとの戦いでもあるうえ、ビジネスモデルの違いから社員のスキルセットの違いもあり、大チャレンジなのです。

同店舗は、全体面積の約65%をショッピングセンターモデルにしております。これは、少し顧客目線だと何を言っているか分かりにくいところですが、要は、運営方式が異なるのです。

百貨店は、会社が店舗を直営しており、百貨店自身が商品を仕入れて自ら販売しています。在庫リスクを抱えながら、社員が売れそうなものを自ら見極めて仕入れて販売していきます。一方で、

ショッピングセンターは、それぞれのアパレルや飲食などのテナントに定期賃貸借契約で床・スペースを貸出し、施設オーナーとしては賃料収入を固定もしくは固定+売上歩合で収受します。当然、何を売るかはテナントが決めます。

これだけトレンドが目まぐるしく変わり、顧客層も日本人だけではなくなったりすると、百貨店がひとつの会社として全ての業態のマーケットトレンドを把握することに限界があり、ショッピングセンター型にして、各専門店にそれぞれの分野でトレンドを研究して商品構成してもらった方が、顧客ウケが良かったという結論になります。

古参の社員からすると受け入れがたい事実だと思いますが、Jカーブ回復のきっかけとなった明らかな主要因のひとつであり、経営判断とそれをリードした経営陣がすばらしいです。

インバウンド需要の増加

売上高の急成長のもうひとつの理由として、免税部門の売上高の成長があげられております。要は、外国人観光客/インバウンドのお客さんが、復活の要因のひとつということです。コロナ期と比較は、おかしいにしても、2019年度対比でも2倍超の成長が確認できます。

ちなみに、中国人の爆買いが話題になっておりましたが、決算資料の中では、この免税売上高の64.2%が中国人のお客さんだというので、中国人の爆買いは引き続き健在ということです。

J.フロントリテイリングの免税売上高はJカーブ成長

日本の観光庁では、2030年までに訪日外国人観光客を6,000万人まで増やすことを目標にしております。岸田元総理大臣も宣言するほどの力の入れようと現実感です。(かなり色々な前むきな施策と宣言をしょっちゅうしていたのに、なぜあんなに人気がなかったのでしょうか。)

6,000万人を実現する為に、国を相当な予算を割いております。例えば、地方空港の活性化やマーケティングに力をいれると、多くの取組みを実施中です。
訪日観光客数は、2023年度が2.5千万人、2024年度が4千万人に届くかもと言っているので、6,000万人はむしろ低くすぎる目標なのかもしれません。

そして、この6,000万人に到達するころには、当然、この免税売上高も更なる成長が期待できます。

さてさて、

10月8日のJ.フロントリテイリングの発表を受けて気持ちが盛り上がってしまい、かなり長文になってきてますね。長すぎるので、この辺りで止めようと思います。

まだまだ書きたいことがたくさんあります。それはまた次の機会に!

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