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王様ゲームシリーズを読んだので感想をまとめてみた
最近王様ゲームシリーズを読み終えて、内容が中々面白かったので感想をまとめてみようと思います。
王様ゲームの小説版は2009年に第1巻が発売され、最終巻となる第8巻が発売されたのが2015年。第1巻に関しては今から15年前に発売されたということで今更感が否めないですが、発売当時から作品自体は知っていて、今になってやっと読み終えることができました。
以下の感想にはネタバレ含みますのでご注意ください。
王様ゲームシリーズの解説
感想を書く前に、王様ゲームシリーズについて簡単にまとめておきます。
王様ゲームとは、夜中の0時に王様からの命令がメールで送られてきて、24時間以内に実行しなければ罰が与えられるというものです。「AさんとBさんがキスをする」という簡単なものから「Cさんは3人の人間を殺す」というハードなものまで色々あります。これらの命令を実行できなければ突然死してしまいます。突然首の骨が折れたり、勝手に全身が切断されたりと結構グロい死に方をします。人間同士が騙し合い、争いあった末に誰が生き残るのか、という点が王様ゲームシリーズの見どころです。
王様ゲームの小説は8巻まで発売されています。発売順は以下の通りです(分かりやすくするために上下巻は1巻としてカウントしています)。
王様ゲーム
王様ゲーム 終極
王様ゲーム 臨場
王様ゲーム 滅亡6.08
王様ゲーム 滅亡6.11王様ゲーム 起源
王様ゲーム 再生9.19
王様ゲーム 再生9.24王様ゲーム 煉獄10.29
王様ゲーム 煉獄11.04王様ゲーム 深淵8.02
王様ゲーム 深淵8.08
金沢伸明が登場する第1巻から始まり、王様ゲームの生き残りである本多奈津子と邂逅する終極、王様ゲームが日本中に広まる滅亡、再生と続き、原点回帰として30人程度のグループで行われる煉獄、深淵となります。
時系列順としては第1回目の王様ゲームを描いた『起源』が最初で、第2回目の王様ゲームである『臨場』、第3回目の無印と続き、第4回目の『終極』となります。その後は滅亡→再生→煉獄→深淵という順番です。ただし読む場合は時系列順ではなく、発売順で読むことをおすすめします。
王様ゲームシリーズの感想
金沢伸明や本多奈津子が登場する前半のシリーズは生き残りを予想するのが面白く、シリーズ後半のナノクイーンが登場してからは生き残り+王様を予想するのが面白かったです。初めて第1巻を読んで、命令を出してクラスメイトたちを恐怖に陥れる悪役が実はウイルス、ということを知ったときは正直がっかりしました。人間同士の争いも面白いですが、やっぱり犯人を予想するのが醍醐味だと思うので、人間がラスボスであってほしかったなと思います。逆に、王様ゲームの正体ともいえる意思を持った新種のウィルス・ケルドウィルスを自在に操るPCソフト・ナノクイーンが登場してからは人間側が命令を自由に指定できるようになったため、少しずつ減っていくクラスメイトの中から犯人を予想する、という展開になっていき、シリーズ後半のほうが個人的に好きです。
「王様から命令がメールで送られてきて、24時間以内に実行しなければ罰が与えられる」というルールがシリーズ全体で一貫しているため、まとめて読んでいると若干マンネリ感がありました。「このキャラは序盤で死にそう」と雰囲気で予想できたり、「悪役は最終的に全員死ぬ」などの傾向がつかめたりしました。ただし、『滅亡』で王様ゲームの内容が大きく変化したことによって一気に面白くなりました。王様ゲームの範囲が1クラスから日本中になり、大人がゲームに介入し始め、さらに命令を操れるようになったところはワクワクしました。
主人公の性格は「クラスの人気者で誰とでも友だちになれるいい奴」というキャラが多い印象でした。そのような主人公は、最後まで誰も殺さず、殺されそうになってもなんとか生き残って、最後は仲間のために死ぬ、というような展開が多かったです。逆に「生き残るため、仲間を守るためなら敵は殺す」という『臨場』の本多奈津子や『煉獄』の佐々山夢斗のようなタイプもいました。私は後者のほうが人間味があって好きです。また、思いがけない方法で敵を倒したりするので見ていて面白いです。
王様ゲームシリーズ 各巻の感想
※『無印』『終極』『臨場』『起源』は小説版だけでなく漫画版もあります。kindle unlimitedで無料で読めます。
1. 王様ゲーム
ある日、高校1年生のクラス32名全員の携帯電話に"王様"からメールが届いた。内容は【クラスメイトの浩文と美奈子がキスをしろ】。最初はみんな面白半分だったが、命令は次第にエスカレートし、クラスメイトが1人、また1人と死んでいく…ついには、命がけのゲームが始まった。大人気サバイバル・ホラーを全面改稿&パワーアップして文庫化!
王様ゲームの命令を本気にせず実行しない→仲間が死亡してクラス中戦慄、という一連の流れが今では懐かしいとすら感じます。無印はクラスメイトたちの仲が比較的良く、相手を殺してでも生き残ってやる!というキャラは少なかったように感じます。だからこそ、「不要なことを犯すな (涙を流すな)」という命令で8人も死んだのですが。というより、「不要なこと」が分からなすぎます。死んだクラスメイトの状況から推測するしかないので、理不尽な命令第1位でしょう。
王様ゲームの第1巻だけかなり昔に読んでいたのですが、この本を初めて読んだときは、次にどんな命令が出てくるのか、誰が生き残るか、という展開がハラハラしてとても面白かったのを覚えています。
2. 王様ゲーム 終極
悲劇から7ヶ月。最初の王様ゲームで、唯一生き残った生徒が転校した学校で、再び命がけのゲームが始まった!謎の少女・本多奈津子の登場で、徐々に明らかになっていく謎。王様からの過酷な命令により、1人、また1人と減っていく生徒たち。最後に生き残っているのは誰なのか!?大人気サバイバル・ホラーの第2弾が、パワーアップして文庫化!
なんだかんだ主人公は生き残るだろうという自分の考えが打ち破られた作品。まさかの全員死亡END。他のシリーズ作品は誰かが生き残っているので、そういう意味でも死亡率100%という珍しい作品です。
本多奈津子という明確な悪役キャラがいたことで、仲間同士の裏切り合いの展開が多く、人間のドロドロしたところがしっかり描かれていたと思います。ただ、本多奈津子はあえて人を殺す場面も多く、王様ゲームシリーズ野中でもかなりの畜生キャラだったと思います。人によって好き嫌いの分かれそうなキャラですが、個人的には綺麗事を並べるだけのキャラよりも人間味があって好きです。
3. 王様ゲーム 臨場
金沢伸明と本多奈津子のクラスで"王様ゲーム"が行われているころ、女子高生の児玉葉月は事件の謎を追ってある廃校に辿り着いた。葉月はそこで1冊のノートを見つける。そこには、奈津子が転校前に体験したもう1つの"王様ゲーム"の経過が克明に記されていた。さらに葉月は夜鳴村に行き、33年前の悲劇の真相に迫る……大ヒットサバイバル・ホラーの最新刊!
『終極』を読んで「本多奈津子ってヤバかったな~」とか思ってたら、もっとヤバいやつがいた作品。シリーズ後半には王様ゲームを楽しむキャラがちらほら登場しますが、佐竹舞はそのようなヤバいキャラの最初の一人ではないでしょうか。
印象に残っているのは体重測定の命令。1日でより体重を減らしたほうが生き残れるという内容。包帯に装飾品を仕込んで実際の体重よりかさ増しさせることで体重が落ちてないように見せるという、中々小賢しい手を使って相手に希望を与えたうえで勝利していました。わざわざ上げて落とすようなことをしており、畜生っぷりが伺えます。
王様ゲームシリーズが『終極』→『臨場』という順番で発売されているのに対し、時系列としては『臨場』→『終極』であることから、『臨場』は本多奈津子の一人勝ちEND、ということが事前に分かっていたのが少し残念でした。ただ時系列順に発売してしまうと、転校先で本多奈津子が猫を被っているのが読者に丸わかりなので、そこは難しいところかなと思います。
4. 王様ゲーム 滅亡
2010年6月8日、日本に住む高校生に"王様"から命令が届いた。【広島県にいる者全員、岡山県に移動する】。命令は携帯メールだけでなく、テレビ画面上にテロップのように映し出された。高校2年生の修一と友香、智久は、半信半疑ながら岡山に向かう――それは、日本を滅亡へと導く悲劇の始まりだった。大人気サバイバル・ホラーの新たな扉が開かれる!
上下巻にふさわしい大スケールの作品。今までは30人程度で行われていた王様ゲームでしたが、いきなり日本中の高校生を巻き込んでのゲームとなります。初めて命令1を見たときは今までと違う展開にワクワクしました。
命令2の女が男を学校に捕まえるという、いわゆるケイドロも今までは出来なかったタイプの命令で新鮮でした。一度女に捕まえられた男は、まだ捕まってない男にタッチされれば学校から逃げ出すことが出来る、というルール。無理やり逃げようとした男たちの死体が校門に山積み、という展開は中々リアルでグロかったです。
『滅亡』で忘れてはならないのがナノクイーン。ナノクイーンは王様ゲームの命令を自由に操ることのできるPCソフトです。『臨場』で登場した佐竹舞の意思を受け継いだ女子高生・国生蛍がナノクイーンを手にすることで、ついに人間の王様が誕生します。逃げる王様と追う警察の攻防が面白い。警察が王様の拠点に押し入ったとき、マンションの別部屋を囮に使って逃げ出すトリックはハラハラして見応えありました。
シリーズ全体の中で最も変更点が多かった本作。そして主人公の彼女に最も救いがない作品でもあります(泣)。今村友香は物語中盤から精神喪失、最後は日村海平のマインドコントロールによって彼氏を殺そうとし、一瞬だけ我に返るも自殺するという悲しい結末です。王様ゲームで嫌いなキャラランキングを作ったら、日村海平がトップになるんじゃないでしょうか。そんなキャラに目をつけられた今村友香もまた、救われない主人公の彼女ランキングトップでしょう。
5. 王様ゲーム 起源
最初の悲劇の32年前、ある夏の朝、中国地方の寒村、夜鳴村で黒い封筒が見つかった。そこには「王様」からの命令が書かれていた。命令に従わない者は「首吊りの罰」。最初は誰も本気にしなかったが、翌朝、命令に従わなかった2人が首を吊って死んでいた――大人気サバイバルホラー最新作!すべての悲劇はここから始まった!
村社会の怖さが現れている作品。子供から大人までを含めても30人程度しか暮らしていない山奥の小さな村が今回の王様ゲームの舞台です。1977年という時代設定ということもあって、人が多く暮らしている場所からは物理的、情報的にも隔離されています。
疑わしきは罰せよ、という言葉の通り、村の一部の者たちから王様と疑われた本多奈津子は瀕死の状態まで追い込まれるのが怖かったです。今までの王様ゲームだったら相手は高校生でしたが、今回は猟銃を持った大人が相手なので勝ち目がなく、なかなか物騒でした。
私は小説版はほとんど読んでおらず漫画版をメインに読んだのですが、個人的には平野ミチ子が好きです。生きるためなら他人を躊躇なく殺すという割り切った性格とかっこいいビジュアルが良かったです。漫画版もおすすめですので、kindle unlimitedに加入している場合はぜひ読んでみてください。
6. 王様ゲーム 再生
日本中を襲った悲劇から3ヶ月――北海道各地で、腹部を切り裂かれた死体が見つかった。それは、とても人間による犯行とは思えなかった。そして9月19日の深夜0時、北海道に住む人たちの携帯電話に、人類をあざ笑うかのうような命令が届く――ジウン類による人類への挑戦が始まった!大人気サバイバルホラー、最新刊!
今までの王様ゲームからルールを大幅に変更してきた意欲作。従来までは人間同士の争い合いがメインだったのに対し、第3の性を持つ完全な存在・チャイルドの登場によって人間vsチャイルドの戦いになります。
チャイルドは王様ゲームの命令を受けないというチート能力によって人類を次々に殺していくため、命令との相性によっては一気に多くの人間が殺されます。命令1では【今いる場所から100メートル以内に留まれ】という命令が下されますが、チャイルドは自由に動き回れるので人間側が完全に不利となります。そもそも、王様ゲームが行われることすら知らされていない一番最初に出される命令にしては鬼畜すぎる命令です。車に乗っていたら即死するので、初見殺しにもほどがあります。唯一の救いとしては、命令が深夜の0時に出されたことでしょうか。ほとんどの人は外出していないでしょう。まあ、私は深夜に外出していることが多いのでもし王様ゲームに参加していたら即死ですが(笑)。
印象に残っている命令は、命令3【血液型がAB型の者は5人の人間を殺せ】です。この命令の結末は涙なしには見られないでしょう。火事の中から救出した女の子・前田りりかの血液型がAB型だったため、無惨にも王様の命令によって殺されてしまいます。最後まで泣かずに頑張ったりりかちゃん……。原神に登場するクレーをイメージしながら読みました。
序盤に王様の正体が明かされる、という点はシリーズの中でもおそらく本作だけであり、かなり斬新に感じました。人間vsチャイルドという戦闘シーンにかなり力を入れており、最終的に生き残った神崎斗志雄も強キャラだったため、やはり力こそパワーということでしょうか。
7. 王様ゲーム 煉獄
日本中を震撼させた、北海道のチャイルド事件の1ヶ月後、埼玉県内の高校で1人の男子高校生が自殺した。それから2ヶ月後のある日、クラスメイト全員に【王様】と名乗る者から1通のメールが届いた――ナノクイーンを盗み出し、クラスを恐怖のどん底に陥れたのは誰なのか!?恐怖の物語が、再び幕を開けた!
王様ゲームシリーズの中で一番好きな作品。私は、終わりよければ全て良し、という考え方なので、主人公と彼女の2人が生き残るという終わり方はかなり満足しました。ハッピーエンド最高!
本作はクラスメイトの中から王様を見つけ出す、という犯人を予想するタイプの物語だったためかなり楽しめました。王様は自由に命令を出すことが出来ることから、自分に危害が加わらないような命令を出していると予想していました。しかし、犯人が運要素で終盤まで生き残っていたので予想が外れました(笑)。
死んだように見せかけて実は死んでいない、というトリックが作中で2回も登場しており、読者としてはしっかり騙されました。クラスメイトたちに死んだと思わせることで影で暗躍していた王様・高橋星也と、王様に死んだと思わせることによって最後まで生き残った松崎風香が印象に残りました。主人公・佐々山夢斗のもう一人の彼女である伊藤由那が死亡したことは残念でしたが、彼女は天国から夢斗と風香の行く末を見守ってくれるでしょう。王様ゲームシリーズの中で最も救いのあった作品だと思います。
8. 王様ゲーム 深淵
ある年の8月。日本・韓国・台湾の高校生32名が、国際交流の研修で台湾にある孤島に集まった。研修5日目のよる、生徒たちのスマホに【王様】を名乗る人物から謎のメールが送られてくる……そして、再び地獄のゲームが始まった!生徒たちの間には、やがて民族間での疑心暗鬼が募り、対立が広がる――大人気サバイバルホラーシリーズ、2冊同時刊行!
「3ヶ国のキャラが登場するから名前覚えづらいなー」「30人程度のメンバーで王様ゲームをする、という内容だから従来と似ているところが多いなー」などと思いながら読んでいたらラストでしっかり裏切られました。まさかの王様が2人。確かに怪しい人物は何人かいましたし、美佳が邦友を殺したときは「あ、美佳は死ぬな」などと思いましたけど、王様が2人とは予想できませんでした。今までと違う方向性で物語を組み立ててくる金沢伸明先生、流石です。
今までの王様ゲームの傾向から、怪しいキャラは逆に怪しくない、という理由で永明を王様から外して小説を読んでいましたが、しっかり王様でした(笑)王様は美佳と予想していたので半分は当たっていたのですが……。流石に元彼の記憶が完全になくなってしまうのは怪しすぎました。
終盤でいきなり主人公が名探偵になったところは個人的にマイナスポイント。もっと序盤から推理していたり、主人公が優等生キャラだったら納得感のある締めくくりだったのかなと思います。ただ、王様が2人という点がインパクトが大きく、ストーリーとしても面白かったのでシリーズの締めくくりとしては良かったと思います。
まとめ
王様からの命令を24時間以内に実行しなければ死亡、というシンプルなルールで一貫しつつも、作品ごとに特徴があって面白い作品だったと思います。
2015年発売の第8巻『深淵』を最後に続編は出ていませんが、できれば続編を読んでみたいです。それくらい、私は王様ゲームシリーズが面白かったです。