雨の匂い
明日から雨マークが並んでる。
朝からTVが地元のニュースと天気予報を伝えているのをチラ見しながら、私はトーストを食べた。何の変哲も無い朝だけど、どうやら午後から天気は下り坂らしい。
湿気が多いから嫌だなという思いもあるにはあるけれど、それ以上に嬉しいような小躍りしたくなるようなそんなちょっと不思議な気持ちが込み上げる。
それは自分自身の思いなのか、
はたまた、周りの"声"なのかはわからない。
私は昔から人の"声"に敏感な子だった。
それはこの世に生を受けているものはもちろん、かつて生を受けていたものに対しても同じように感じる。声といっても空気中を伝わり鼓膜を震わすあの振動ではなく、脳の中に響くような視覚的に色を持つような、そんなふんわりとした"雰囲気"に近いもの。ホログラムのように今ある景色の上に重なって存在するもの。
私は美しさしか感じないのだけれど、人は時に残酷で、そんな美しい"声"ですらも気味悪がる。
「まあ、わからなくも無いけれど…」
思わず口走ってしまった言葉を押しとどめるように、トーストの残りを口に押し込んで珈琲で流し込む。
目を向けても"声"がそこに像を結ぶことはない。目を凝らせば凝らすほどぼやけてしまうし、そもそも今の景色に薄く色がついてる程度なので、見えてるというのすら烏滸がましい。だから、感じるという表現の方がしっくりくる。
九十九神や八百万の神のように長く生き永らえているものに宿っていることもあれば、人の強い無念や怨念や執念に共鳴して関連のあるものに宿っていることもある。
でも、私は傾聴者で傍聴者。
ただ感じるだけなのだからそれ以上のことはできない。その思いも様々なものが混ざって私に届くから、個々を分別することはできないし、なんとなく喜んでいるのかなと感じる。
それでも、俗にいう霊感はあるのだろう。その括りに入ってしまうこと自体不本意で悲しいことなのだけれど…。