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敢えて二日酔い

今日と明日は休みだったので昨日は家でスコッチウイスキーを飲んだ。
予定通り二日酔いになった。ボトルが一晩で半分になった。

紀元前から繰り返されているであろう飲み過ぎという過ち。
お酒が好きな人なら分かると思うが「今日はたくさん飲んで明日は二日酔いだろうな」となんとなく覚悟して飲むことがある。
二日酔いになると朝から昼過ぎくらいまでずうぅっと気持ち悪く、半日潰す行為である。今日も15時くらいまでずっと気持ち悪かった。
あまりにもデメリットが大きい。
そうなると予感していて飲む理由は単純である。

私は「冷静な脳みその夜が怖い」からである。

夜と素面は相性が悪い。
一人暮らしだからかもしれないが、基本的に自分が動いて発した音しか鳴らないので、うっかりするとすぐに静まり返る。それが単純に怖いのである。
おばけが出そうというか、若干霊の気配を感じる傾向があるからか23時以降に洗面所で顔を洗うのは怖い。5歳くらいまで夜中に起きると廊下に出てトイレに行くのが怖く、ものすごく大股でジャンプするようにダッシュしていた。
そういう傾向もあるからか、深夜が静まり返る状態が32歳の現在も苦手である。
従ってそれを誤魔化す為に酒を飲んでいる。
仕事のストレスで飲む、というのは飽くまで後付けで、基本的に恐怖から逃れるのが主たる目的である。なので、飲むのは98%が家で一人のケースである。外で飲むのは友達と1~2カ月に一回行くらいである。

素面で静まり返った夜は怖い。
寂しいという気持ちもあると思うが、それ以外のそんなこと考えずにさっさと寝ろよ的な問いが浮かんでくる。
「なぜ戦争はなくならないのか」「なぜ自分はここにいるのか」
みたいな系である。
そんなことを考えなくても、普通に仕事をして給料をもらって生きていくことはできる。しかし、既に浮かんでいる問いと向き合っていないといつか大きな皺寄せが来るような気がする。
浮かんできた素面の夜は大抵仕事があった日なので浮かんだ勢いのまま素面でその問いについて考える力は残っていない。残っていないのに浮かんでくる。考えてしまう。解放されたい。そこで酒。となるのである。

毎晩毎晩こうはならないが、一カ月に一回くらいの頻度で発生する。
当然酒を飲んだだけで問いの答えはでないので、小説で表現していくことになる。そういう風に一時的に脳をだます為にウイスキーは私にとって必須アイテムである。

こういう日は大体飲む数時間前からそういう予感がしているので、3000円くらいするウイスキーを買わ必要がある。氷結の500ml二本、などではすぐに醒めてしまう。安い酒はそれはそれで美味しいが、酔いも安い。脳みそを完全に「今」から解放させるにはスコットランドなどの遠い異国で製造されたクオリティの高い酒である必要がある。香りからその異国の地の潮風をなんとなく想像し、なんとなくリッチな気分になり、浮かんだ問いを忘れる時間。2~3年前に比べてラフロイグが2000円くらい高くなっているのでワイルドターキーなどのバーボンを買いそうになるが、スコッチでしか満たせない領域がある。

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冠
小説を書きまくってます。応援してくれると嬉しいです。