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歌舞伎Next『朧の森に棲む鬼』(12/14昼)(ネタバレあり)③登場人物たち
注意事項
・2024年12月14日・昼の部の感想、ネタバレしています。
・ライ役は幸四郎、サダミツ役は松也バージョン
・2007年の劇団☆新感線版『朧の森に棲む鬼』を観ていますが、それ以来DVDやゲキ×シネなどで鑑賞し直していないので、記憶違いなどあると思います。
・「07年版」と記載したら、2007年の劇団☆新感線版を指します。
・歌舞伎役者さんを襲名前の名前で書いてたり、今の名前で書いてたり、混在しています。
敬称もついてたりついてなかったりします(その時のフィーリングで・・・)。
・20年くらい歌舞伎鑑賞にブランクがあるので、現状を分かっていない記述がありましたらご容赦下さい。
キャラクター、演じてる役者さん、印象的なシーン、07年版で思い出したこと、衣装などごちゃまぜになってます。
ライ
07年版を見た身としては、「やっぱり染さまのライが歌舞伎でどうなるか観てみたい」とライ=幸四郎回を取ったのですが、「いい意味でそのまま」だった。
17年経って「変わらない」というのはもともとの完成度が高かったってことですよね・・・(もちろん色々アップデートされてるんだろうけど)。
松也ライVer.も観たくなりました。
ツナ
観る前は「歌舞伎の女形」が新感線作品の強い女性像を演じることができるのか?ちぐはぐになるんじゃ?という危惧があったのですが、ツナ初登場シーンを見て、杞憂だった!と思いました。
強くて美しくって凛々しくて殺陣ができる。
「首を洗って待っていろ!!」と怒りと闘志に燃えて叫ぶ女性を歌舞伎の舞台で見ることができるとは・・・・!(嬉)
パンフの時蔵さんインタビューでは「これまで古典歌舞伎ばかりを演じてきた」とあって、よけい驚きました(「ファイナルファンタジー歌舞伎」にも出てたそうですが)。
初登場シーンの衣装(大きな百合の紋章柄?の袴)も凛々しくてよかった。
二幕最初の夢から醒めた後にライが訪ねてくるくだり。
ライが去ったあと、箱を開けるとパイナップルのはずがヤスマサの首が出てくるシーン、07年版だと秋山ツナは泣き崩れていた記憶があるのですが、今回は静かにじっと夫の首に見入る、という感じで、これも良かった。
ネット上でサロメになぞらえてる感想を見て、なるほどー、と。
あのシーン、幻想的でちょっと前後とつながらないというか、ちゃんと理屈を考えようとすると、あれ?となるのですが、そんな理屈を超える美しさがありますね。
キンタ
07年版の阿部サダキンタはとにかくかわいかった。
「兄貴ー!」って感じがめちゃくちゃハマり役でした(実は阿部サダヲさんの方が染五郎より年上だったのだが・・・、でも芸歴自体は染五郎の方が長いという)。
そこから右近さんにあわせてキャラが変わります、と中島かずきさんが言っていたのですが、観てみて、正直、あんまり変わらなくない・・・?(笑)
悪い意味ではなく、「永遠の弟分」っていうキャラポジションが右近さんにもめちゃくちゃハマってるという。
「硬派なヤンキー」キャラで行く、ということでしたが、もともと「腕が立つ暴れ者だけどライのことは慕ってる」という基本ラインがあるので、そこからそんなに外れてる感じではないんですよね。
オクマの求愛をうっとうしがって「硬派だから恋愛に興味ない」みたいな感じになってましたが、それはそれで結局ラブコメっぽくなってたしなー。
くせっ毛っぽいくるくる髪のカツラも07年版と似てましたね。
眼が見えなくなってからの演技、07年版の阿部サダキンタも良かったんですが、右近キンタもすごく良かった。
ちょっと悟りを開いた感じになるんですよね・・・。
「響かねえ、アニキの言葉、響かねえよ」の名ゼリフが沁みます。
剣を逆手に持っての「座頭市」っぽい殺陣も素晴らしい。
マダレ
古田さんのマダレが(あて書きなので当然ですが)ハマり役だったので、どうなるかなー、と思っていましたが、ラジョウのシーンで現れたとたん、
(マダレだ・・・!)と息を呑みました。
暗黒街のボスとしてのふてぶてしさ、狡猾さ、ライをだんだん恐ろしく感じるくだり、己の出自を知ってからの逡巡、ライに刃を向ける決意、すべてが違和感なく「マダレ」そのものでした。
猿弥さん、初めて(多分)観たのですが素晴らしい!
パンフのインタビューとか読むと、スタンスというかマインドがなんか古田さんっぽいような印象を受けます・・・。
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出演者へ皆様からの質問を大募集‼ #歌舞伎家話でコレ聞きたい で投稿お待ちしてます✨
出演#尾上松也 #市川猿弥 #古田新太
番組詳細はこちら🔗https://t.co/Wb78P7nUni#歌舞伎NEXT #朧の森に棲む鬼 pic.twitter.com/uLO6Uu3Fm1
猿弥さん×右近さん×古田さんのトークライブなんて面白そう!と思ったんですが、年末年始のあれこれで余裕なく、見逃してしまいました・・・。
後になればなるほど(見れば良かったー!)と後悔がつのります(苦笑・後で悔いるから後悔・・・)。
シュテン
去年の歌舞伎座8月の『狐花』で初めて染五郎を観て(うわー、もうこんな”青年”になってるのか!)と思いましたが、役が悪人側だったので、顔も「悪い」メイクだったんですよね。
今回シュテンを観て「キラキラしてるー!」と大層びっくりしました(笑)
新感線作品のキャラで言ったら、早乙女太一さん系の目元涼しい長髪美形。
07年版真木シュテンはフォークロアっぽい衣装だったような印象でしたが、今回の衣装は銀が基調でキラキラ!
今回のオーエ国はお金に余裕があるのか・・・(笑)
ネタバレあり感想①でも書きましたが、シュテンが女性から青年になったのは良かった。
真木シュテンも女首領の凛々しさとか、山の民っぽい小柄さとか、よかったんですが、なにせストーリー展開がキツくてね・・・。
牢での親子殺陣対決、見ごたえありましたねー。
染五郎丈が「いつかライをやりたい」「いつか劇団☆新感線の舞台に立ちたい」と言ってて、うわあそれはどっちも観たい!
実現するその日まで、体力つけてお金も貯めておかねば!と意力が湧きました。
シキブ
かわいかったー!
「オオキミ、ガンバ!」のところとかほんとかわいい・・・。
「恋の不死鳥!」のくだり、歌舞伎の女形(綺麗系)があれだけはじけまくるのを初めて見ました(笑)
個人的にシキブに関しては、07年版の聖子シキブより今回の新悟シキブの方がハマってる気がします。
舞台上の聖子さんって「すっぱり!きっぱり!さっぱり!なきっぷのいい姉御」、か、「権力をふるう女ラスボス」のイメージなんですよね。
「恋に生きる浮かれ女」って感じではないというか・・・。
ヤスマサにも手を出してた、とか、”戦の唯一の生き残り”の話を聞いて「会ってみたいー!」と言うとか、そういう「若い娘の軽率な感じ」は新悟シキブの方が似合う気がする。
07年版の田山オオキミの影うすキャラともあいまって、聖子シキブはライが現れなくても、あと2、3年したら実質・最高権力者として権威をふるってたのでは、という気がします(苦笑)
オオキミを毒殺するくだりも、新悟シキブは「好きな男に言われるがままやった愚かしさ」みたいな印象があるのですが、聖子シキブだと「色(愛人=ライ)と欲(権勢欲)とのふたり連れ」みたいな。
ライに殺されなければ自分も権勢を握る気まんまんだったのでは・・・、と思わせるものがあった。
でもツナとふたりになって、「つらいでしょ、私の胸で泣いていいのよ、さあさあさあ!」っていう、うっとおしさは聖子シキブの方が強かった(笑)
あと、「あなたのそういうところ・・・、だあいっきらい」っていうあのシーン、聖子シキブこわかったなあ・・・。
今回の新悟シキブは「いったん扇で顔を隠してから」という動作が入ってて、これはこれで良かったです。
イチノオオキミ
キャスト発表になった時、(彌十郎さんにはオオキミをやってほしいなー)と思ってたら叶いまして。
いやあ、素晴らしかったー!
07年版の田山オオキミは影うすい印象(もちろんその中でも、崇められているようでもお飾りにすぎない悲哀とか、品格とか、分かっていながらシキブのために毒を吞んでやる気持ちとかが感じられましたが)。
今回はおっとり、のんびり、かわいらしくてでも品格もちゃんとあるオオキミで衣装も豪華!
初登場シーンで花道を出てきた時、劇場中に(わあっ・・・)ってなにかが広がったような印象で、その後も彌十郎オオキミが舞台に出てくると、観客みんなにこにこしちゃうような感じでした。
登場シーンで、花道で鯉にエサやるところ、2階から観てて(花道わきのあんないい席複数も、関係者があらかじめ座ってたの!?)と思ったのですが、あとでよく見たら「指示(お願い)」の紙が前の席の後ろに貼ってあったんですね。
舞台に参加したうえに、役者さんからお菓子を頂けるなんて嬉しい役得。
血人形の呪いで血が出る時は銀の紙吹雪&赤いライトで表現してたのですが、オオキミ毒殺のシーンは血のりを使ってて、銀の綺麗&豪華な衣装に赤い血が垂れていくのが鮮烈な印象でした。
ウラベ&サダミツ
なんというかガラっとキャラそのものが変わったなー、というのはウラベとサダミツのふたりですね。
ウラベはやっぱり粟根さんのメガネキャラの印象が強かったので・・・。
亀蔵さんの顔立ちゆえか、今回の扮装のせいか、ウラベのビジュアル、生瀬勝久さんに似てませんか!?
最初ポスターで見た時、(あれ、生瀬さん出てる!?)と思ってしまった。
サダミツはライとWキャストなこともあり、ことさら道化役というか「歌舞伎人形」みたいなビジュアルでしたね。
コミカルだしやられ役だけど、それはそれで負担大きそう。
これと主役を公演ごとに入れ替わるって、考えただけでもやっぱりすごいな・・・。
アラドウジ
「ジョーカー」っぽいピエロメイクでしたね。
それも不気味さを感じさせて良かった。
しかし男色家になるとは・・・、でもキャラ的にそこまで違和感ないか。
演じた宗之助さん、ふだんは女形とのことでびっくり!
役者さんってほんとすごいな・・・。
ヤスマサ
幕間休憩でパンフ読んで「川原さん出てるの!?」と知りました。
カツラとメイクがすごくて、一幕冒頭では川原さんだとはわからなかった。
ヤスマサって一幕冒頭で出てきてすぐ死んじゃうのですが、その後もちょこちょこ出てくるし、四天王の一員なのでそれなりの強さと格を感じさせないといけない、という、舞台演劇としてはどういう役者さんをあてがうか、けっこう難しい役だと思うんですよね。
アクション監督である川原さん自身が演じる、というのはすごくいいなー!
あと、ラジョウの屋台で最初にライとキンタの相手をする年増女がすごく良かったです(役名を失念してしまい、役者さんがわからないのですが)。
07年版だと山本カナコさんが演じてるんですが、私はカナコさんのお顔が好きなので、「高嶺の花(ツナ)じゃなくても、ここにも花があるじゃない・・・」みたいにライに迫ってるとき、「そうだそうだ、かわいい!」みたいに応援してしまって(笑)
今回の役者さんはいかにも「長年繁華街ですれてしまった年増」感が漂っててすごく良かったー。
観ながら(07年版ではこの役〇〇さんがやってたなー)、と思い出したり、(こういうせりふ回しってことは、07年版ではこの役〇〇さんだったのか!?)と思ったりするのも趣きがありました。
オクマ観ながら、((中谷)さとみさんはこの頃「押しかけ女房」キャラ多かったよなー)と回想したり。
「女優が急に野太い声で悟ったようなことを言う」みたいな演出って、時々新感線舞台でありますが、歌舞伎で女形がそれをやると、「女形が地声の男の声で喋ってる」印象になるなー、という発見もあったり。
そうそう、ショウゲンは河野(まさと)さんだったな!と観ながら思い出しました。
ああいうキャラは河野さんですよね・・・。
立場が上、とライに威張り散らしてたのがあっという間に追い抜かれて逆転、の図式がコミカルではあるのだけど、けっこうクライマックス近いシーン、ライが相当鬼畜になってからその逆転図が出てくるので、ちょっと笑うには緊迫感の方が強くてもったいなかったような。
あのくだりはもうちょっと早めに出してほしかったなー。