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#050 お手紙

最近手紙を書く機会がない
便箋の上でペンを走らせることがない

メッセージカードを書く機会が年に数回あるが レターセットを使って「手紙」を書くこともいただくこともめっきりなくなった


先日友人から手紙をもらった
正確に言えば友人の息子くんがわたしの娘に当てて書いてくれた手紙を預かった
幼稚園に行くのがあまり好きではない娘のために激励の言葉を綴ってくれたというのだ

5歳の彼と5歳の娘
お互いひらがなは覚えたてである
ゆっくり一つ一つの文字を追って読み上げていく娘 顔が緩んでいる

娘に了解を得てわたしも手紙を見せてもらうと とても丁寧に書かれた文字に驚いた 5歳ってもうこんなに上手に書けるんだなと

そして何より感じたのは 手紙ってこんなに心が温まるものなんだ ということ

昔から手紙のやりとりは好きだった
学校の友人と 他校の友人と たくさんのやり取りをしてきた
いつの間にか メールやチャット 電子メッセージの機能が発達するにつれて世の中から手書きの文字のやりとりは激減した
近年は年賀状のやり取りですらなくなりつつあるのだから 手紙を書くことなど本当に稀だろう
手紙のあたたかみはそれなりに知っている しかしそれを実際に感じられたのは久しぶりのことだった

手で書かれた文字には言葉だけではないメッセージが詰まっている
わたし自身「文字」を書くときには調子というのがあって 安定していつも同じように書くことができない
その日の体調や心の状態はもちろん ペンや紙の種類によっても文字は変わる
きっとほとんどの人がそうだろう
安定した字を書くには訓練が必要なのだ 


5歳の彼が書いた文字は整然としていてとても丁寧だった
きちんと心がこもっている
娘が文字を書くときのことを思えば 彼もきっと一文字一文字ゆっくりと時間をかけて書いてくれたのだろう 
娘もお返事を書いているとき 一つ一つ確認しながら丁寧に書き進めていた
これであってるかな?きちんと伝わるかな?って 一枚の手紙を仕上げるのにかけた時間は一体どのくらいだっただろう

大人のわたしが友人にメッセージをしたためるとき いくら相手のことを思いながら丁寧に書いたとしても 明らかにもっと早く仕上げてしまう
自分の心で描いた文字が きちんと相手に届くかどうか そんなふうに思いながらドキドキすることも ずいぶん前から味わっていない感覚だ


伝えることの大切さはあちらこちらで訴えられていて 日頃から感謝の言葉を述べるとか 相手を褒めるとか 意識的に発しようという風潮と 手軽にそれが叶うツールのおかげで 温かい言葉も日々の生活の中で頻繁に飛び交っている
ただし それに慣れてしまったわたしは人の手で書く「文字」の温度や それに費やす時間と想いの尊さを忘れかけていた

人を嬉しい気持ちにさせてくれる言葉が 世の中に溢れることはとてもいいことだけど たまにはそこに温度を乗せてあげたい

娘がいただいた手紙は 封筒を開ければいつでもそのあたたかみを感じられる
幼稚園に行くの嫌だな っていう娘の心に頑張ろうって勇気をくれる その勇気は例えわたしが同じ言葉でいくら丁寧に書き綴ったとしても与えることのできない 特別なものだ 

そんな特別な一通をわたしもいつか大切な人に届けたい



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