J-starXフィンランドコースでの学び
経済産業省の海外派遣プログラムJ-starXの研修で約1週間フィンランドへ。
ガーナ滞在中に合格通知が届き、人生上手くいきすぎていると思った。
“いつか”行きたいと思っていたフィンランドにこんな早く足を踏み入れることができるなんて思ってもいなくて、だんだん自分が参加するプログラムの規模の大きさを知り、この恵まれすぎたチャンスから最大限のことを吸収したいという想いでフィンランドに飛び立った。
直前まで岡山でのイベントに追われていたので、気づいたら渡航の日になり、フィンランドにいるという実感を得るのに1日、2日は時間がかかった気がする。
フィンランドでの一週間で学んだこと、感じたことはたくさんある。
これはガーナに行った時も同様だったが、一緒に行った仲間との関わりや対話の中で学んだことも、プログラム本体から学んだことと同じくらい(下手したらそれ以上)ある。
特に今回は、今まで自分がずっと心の奥底でもやもやしていたことの納得できる答えを得ることができた。
このnoteでは、学んだ知識そのものというよりは、そこから私が感じたことや経験したことなど、より自分ゴトな学びを書き留めておきたい。
起業において大事なことは、世界中どこでも同じ
最初の3日間は、アントレプレナーのマインドセットを組み込んだ教育で有名なアールト大学の見学や講義を体験した。
私の長期的な展望として、中島とアジアの国を中心とした技能実習生のアントレプレナーエコシステムをつくりたいという想いがあるので、アールト大学をはじめとするフィンランドのアントレプレナー教育には非常に興味があった。
世界トップレベルのアントレプレナー教育はいかがなものかと心して臨んだけれど、本質的に大事なことは決して目新しいことではなくて、根本的なことだった。
これは決してネガティブな意味では全くなく、むしろ世界トップレベルの起業家教育のレクチャーの中でも言われるということは、本当にエッセンシャルなことなのだと再認識することができた。誰もが分かっているけれど、頭ではわかっていても、実践することは別次元的に難しい。
それは「顧客のニーズと課題を捉えること」
スタートアップが失敗する一番の原因は、プロダクトやサービスがマーケット(顧客のニーズ)にフィットしていないことらしい。
ちょうど日本に来る前にもその話を聞いていたので、より自分に刺さった。
自分のサービスは起業家にとって自分のbabyみたいなもので、それを変えたりやめたりするのはとてつもなく心苦しく、エネルギーを使うことだろう。
でも、それがいかに自分のエゴや独りよがりではなく、顧客のニーズに合っているものなのかを徹底的に追い求めることが何よりの成功への近道になる。
だから私も、実習生や島の農家さん・お客さん(になるであろう人)にもっともっと寄り添って徹底的に対話したい。そう心から感じた経験になった。
物事の本質は世界中を探し回って見つけるものではなくて、それ自体は近くにあって、世界を回る中で自分の中に落とし込んでいくものなのではないだろうかとも思う。
また、フィンランドのスタートアップがグローバル市場を見ている要因として、フィンランド自体の人口が約500万人と少なく、マーケットとしては小さいためだだと言う。
人口が少ないことは一見するとスケールにあたっての障壁のように思われるが、むしろ創業当初から世界を見る要因になるというのは、予想もしていない事実だった。
中島も2000人という人口規模だからこそ、島内だけでなく、日本も飛び越えて最初から世界規模でビジネスを始めることができたら、本当にグローカルな島になりそうだ。
目の前の人に向き合うということ
プログラムとは直接関係ないが、私の中での大きな出会いがあった。
最終日の自由時間にマーケットに行こうとすると、横断歩道のそばで座り込んで通行人にお金を求めているおばあさんに出会った。そのまま通り過ぎようかと思ったが、どうしても気になってしまった。
高福祉国家で世界一幸福度の高い国と言われているフィンランでも、このような人が存在することが引っかかって、このまま見て見ぬふりをすると後で絶対後悔すると思い、そのおばあさんに話しかけた。
彼女は英語が話せないようだったため、Google翻訳を使いながらコミュニケーションが故になかなか意思疎通が難しかった。
ブルガリア出身で、お金も家もないから何よりお金が欲しいと主張していたけれど、ガーナでの経験もあり、その場でお金を渡すのではなく、一緒にコーヒーを飲むことを提案した。
彼女にコーヒーを奢る代わりに、話を聞かせてもらうという対等な関係を築きたかった。
言語の壁があり、十分な情報を聞くことはできなかったけれど、
などが彼女の話から分かった。
たまたまSLUSH経由でstartup refugeesという難民や移民の就労支援や起業支援を行っているフィンランドのNPO団体を知っていたので、ここにアクセスすれば何か解決策が見つかるかもしれないと思い、一緒にこの団体のオフィスに行くことを提案したが、「知らない人とは一緒に行けない」と言われ、結局この団体のメールアドレスを書いた紙と5ユーロを渡して彼女とは別れた。
ブルガリアという国をよく知らないが故に彼女の背景を何も理解することができないこと、フィンランドという自分のホームではない国では何の力にもなれないことに悔しさと無力感を感じつつも、一方で、私できる最大限のことはできたのではないかとも思っている。少なくとも、私はあの時の自分の行動に後悔は全くしていない。
自分には何もできなかったとしても、目の前にいる人のことを知ろうとすること、寄り添おうとすること、向き合おうとすること。
そんなほんのちょっとの“〇〇しようとすること”で世界はもっと優しくなれる気がした。
仲間との対話の中での気づき
このフィンランドコースには起業に関心がある/起業を志す/既に起業をしている中学生から大学院生までの50名が参加していた。
最初は正直、ものすごく壁を感じていたというか、距離を感じていた。私の理解することのできないテクノロジーの話をする人もいれば、本当に自分の好きと好奇心で研究に没頭している人もいた。2社目の会社を立ち上げましたなんて人もいて、自分は背伸びをしないと彼ら・彼女たちと対等に話せないのかもしれないとも思っていた。
でも、ほぼ24時間×一週間を一緒に過ごす中で、彼ら・彼女たちの人間的な部分に触れ、そんなファーストインプレッションはだんだん溶けていった。
そして十人十色の49人と関わる中で、自分の大切にしたい価値観がより磨かれた気がする。やはり人は、自分と異なるものと触れて接する中で、磨製石器のように磨かれていく。
そんなこんなで、たった1週間の中でも様々な対話や議論が巻き起こった。その中でも、私の根底にあるもやもやや大事にしたい価値観に刺さった話をどうしても書き留めておきたい。
すべてはバランスであり、すべては役割。
その中で自分はどう在りたいか。
スタートアップは何年、何十年先の社会を構造から革新的に変えるイノベーションを起こそうとしている。極端に言えば、目の前の100人を見捨てようと50年先の100万人を救うことに重きを置いているのだろう。
一方でNPOは、今、目の前で困っている/苦しんでいる100人を救うことに注力している。それは根本的な解決にはなっていないいたちごっこのような活動なのかもしれない。
しかし重要なのは、どちらが良くて、どちらがすごくて、どちらが地位が高いという話ではなく、すべてはバランスで、すべては役割だということ。
スタートアップは何十年も先の社会をよりよくするために奮闘している間に、NPOが今の社会をよりよくするために奮闘している。
すなわち、どちらも(どんな形でも)社会全体としては必要不可欠であって、その中で自分は社会においてどんな役割を担いたいかということ。
今回話したメンバーの中にも、様々な考えや価値観を持つ人がいた。
それでいいのだ、それがいいのだ。
先程のエピソードからもお察しかもしれないが、第一に私は目の前にいる人を見捨てることはできない。自分の周りにいる人を幸せにすることができなくて、誰を幸せにすることが出来よう。手触り感のあるコミュニケーションや価値創造がしたいというのも一つにあると思う。
何度も言うが、これは私の在り方であって、銘々に自分の大切にしたいことがあっていいし、あるべきだと思う。
理想論もしれないが、その上で私は、目の前の人に向き合いつつも、社会の根本や仕組みを変えるような動きを起こしていきたい。
自分が今NPO的な活動を行っていて、金銭的な限界を感じているからということも大いにあるが、これからの長い人生の中でそこに挑戦したいという野望的な部分もある。
だからこそ、どれだけマネタイズが難しくても、私はソーシャルビジネスにこだわり続けたい。目の前の人を継続的に救えるしくみをつくることができたらどんなにいいだろう。難しいことは百も承知だが、これが私の在りたい在り方で社会の中で担いたい役割。
さらに、いわゆるビジネスやスタートアップとNPOの境界線を溶かしたい。お互いがお互いの役割や必要性、強みを尊重し、生かすことができたら社会は急速に良い方向に進む予感がしている。
ディストピアはそっとしておく?ためらわず斬り込む?
私は、ディストピアに対しての自分のスタンスに長らくもやもやしていた。
具体的な例を出すと、私は技能実習生に対して将来のキャリアが広がるようなサポートを提供することが彼らが望んでいることで彼らにとってよいことだと思っていた。私自身、自分の将来の選択肢が広がったことで、人生が何十倍も楽しくなったからだ。そして、同じようにキラキラしている人を周りにたくさん知っている。
しかし実際に実習生に話を聞いてみると、
「とりあえず今はお金を稼ぎたい。実習が終わった後のことはその時に考える。」
という言葉が返ってきたのだ。
その言葉を聞いたときに、私はどこか寂しさを感じたと同時に、自分のこの良かれと思っていた考えは単なる独りよがりでおせっかいだったのだと気が付いた。アールト大学の講義で出てきた顧客のニーズにフィットしていなかったのだ。
でももっと深堀りをすると、わたしの考えていた仮説は彼らが潜在的に求めていることなのかもしれない。
一緒にフィンランドに行った一人のメンバーからは、
「潜在的な価値を発掘・創造するのが起業家じゃない?」
と言われ、はっとさせられた。顕在化しているニーズばかりを追い求めていたら、イノベーションなど起こらない。速く走れる馬ではなく、自動車は生まれなかっただろう。
仮に、ディストピアにいる人々がその状況に満足していて幸せだったとしても、私はそこに斬り込みたい。
あなたたちが感じている幸せとはまた違う、もしかしたらそれ以上の(私はそう思っている)幸せもあります。そして私はその幸せへの道筋を提案したい。
と、ただただ身勝手にではなく、その道筋を添えて。それが身勝手でおせっかい者の責任だと思うから。
夢のような一週間
リアル夢の国みたいなクリスマスマーケットも、同じ学生が運営しているとは思えないSLUSHも、図書館の域を超えたヘルシンキの図書館も、私の人生の中では全て初めましての経験で、そんな初めましてに出会う度に、生きている実感と素晴らしさを噛み締めた。自分がこれから人生をかけてやりたいこと・熱中したいこと・成し遂げたいことへのギアが高まった。
そして、このメンバーでフィンランドに来れたこと、こんな経験が出来たことにただただ感謝の気持ちしかない。
それぞれの分野でこれからの日本や世界を担う50人のこれからがすごく楽しみで、今後も繋がり続けたい。
正直フィンランドが世界一幸福度が高い国と言われている所以を解明することをも感じることも十分にできなかったし、オーロラを見ることも会いたい人に会うこともできなかったので、フィンランドはまた訪れたい国になった。
次はアントレプレナーとしてフィンランドの地に降り立ちたい。
Kiitos🇫🇮
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?