【MMD】何もしない(アニメーション)を極める
MikuMikuDance(3DCG動画制作アプリ)愛好家の皆様、日々の苦行を楽しんでいらっしゃいますでしょうか?
毎年気を抜くことなくJCで居続ける事を頑張っているかんなです。
さて、今回は「何もしない」をMMDで極めてみようかと思います。
レンタルできるアレではありません。
日本語だと表現が難しいですが、基本人間はまったく微動だにしない事ができない生き物ですので、人物(キャラクターモデル)がまったく動かないというのは、デフォルメされてない限りないわけです。
ですので、今回は「(キャラが)何もしてないモーション」にチャレンジしてみませんか、というお誘いと私ならではの手法を説明してみます。
こちらのサンプルモーションを配布しています。
MMDで「何もしない」モーションを作る
https://youtu.be/8YZif8FdNDE
「何もしない」の定義
何もしていない人間はどう動いているのか、をマジマジと観察している人は、恐らく(CG・手書きにかかわらず)アニメーターくらいではないでしょうか。
普通の人はマジマジと見ていたら不審者に思われてしまうかもしれませんね。今の所、少なくとも私は不審者としてMMDユーザーが職質されたという事件等は聞き及んでおりませんが、観察する時は注意しましょう。
さて、MMDはお手軽な3DCGアプリではありますが、細かい動きなどを作る時には少しばかりテクニックが必要な部分でもあります。
ですので、MMDで(比較的)初心者でも出来る「何もしない」アニメーションの定義をまず記します。
まばたき
呼吸
微動(ブレ)
多くを定義しても困惑すると思うので、この3つに絞ってみます。
「まばたき」を先頭に挙げたのは、MMDだとシンプルなまばたきの動作を作るのが簡単で、「まばたきランダム登録」という機能が最初から備わっているからです。
これを使えば自動的にまばたき動作が登録されるので、初心者でも一発で「何もしない」アニメーションが作れます。
一方、呼吸や微動を作るには、それなりに自分でキーフレームを打ったりしなければなりません。
比較的分かりやすい「呼吸」、そして地味に良い塩梅を作るのが難しい「微動」。
これらについて、アプローチ方法を説明していきます。
ランダムに頼らない「まばたき」
自動で追加される「まばたきランダム登録」は確かに楽ですが、あくまでもランダムなので不自然さが出てしまう事もあります。
一度ランダムで登録して不要な部分を削除する方法が手早くはありますが、よりこだわったアニメーションにチャレンジしてみましょう。
どんな瞬間に人はまばたきするのか、どの頻度でまばたきするのかをじっくり観察する人は少ないかと思います。ですが、今一度これを機に観察してみると良いでしょう。
一番他の人に迷惑を掛けずにやるならば、スマホなどの自撮りで1分くらい録画してみると良いでしょう。できれば自然体でいられるよう、ブラウザでニュースなどの記事、X(Twitter)などを見てる自分を撮ると良いです。
そこで気づくと思いますが、思ったほどまばたきの回数は多くないという事に気付くでしょう。もし頻繁にまばたきしている場合は、目の乾燥や何かしらの疾患の可能性があるので、眼科に行く事をお勧めします。
ランダムで登録してしまった場合と比べると、そんなに頻繁にまばたきしなくても……となりますし
「何かしらの視線が変わる前後、もしくは動作した時にまばたきしている」
ことに気付くと思います。
ですので、自然なまばたきにも動く意味があるというのがお分かり頂けるでしょう。まさに意味のない動作などないという生命の神秘です。
ですので、基本的には、
視線が変わる
何かしらの動作をする直前
目が乾きそうな時(比較的長く瞼を開いてた時)
に「まばたき」の動作を入れると自然に見えるでしょう。
例えば、ダンスの場合などは顔を横に向ける時や腕を大きく動かす時などにワンポイントまばたきを入れると効果的です。
ドラマなどの演技の場合では、会話を始める直前や、考え事をする前後などに入れると良いかもしれませんね。
また、困惑した時などもアニメではまばたきの回数を増やして表現している事があるので、そういう部分も参考にしてみると良いでしょう。
まばたきの一瞬にこだわってみる
まばたきの動作自体は、閉じて・開く、というシンプルなものですが、よく観察するとまばたきの動きは一定ではありません。
MMDではモーフ(シェイプ・表情)については補間曲線の設定はできません。ですのでキーフレームを増やす必要があります。
通常、まばたきは次のようなキーフレームにする事が多いでしょう。
10フレーム目から順に開ける(開けてある)→閉じる→再び開ける、というものです。
この時、11フレーム目は直線補間が掛かってるので、単純にまばたき50%の状態になります。
まばたきはよく観察すると、生物的な動きなので直線的な動きをする事は稀です。半目といえばそうですが、閉じ始めは早く動き、閉じきる前にはスピードダウンします。
たった1フレではありますが、案外1/30秒というのは目に止まるスピードなので、もう少しだけ閉じた状態のキーフレームを敢えて打ってみましょう。
手間をかけたぶん味が出る、という訳ではありませんが少しだけリッチなモーションに仕上がるでしょう。
さらに一工夫加えて、閉じる途中は67%、開く途中は32%にするなどすれば「細かいところに拘ったリッチ感のあるアニメーション」が出来上がります。
こららのような基礎的なアプローチ方法を見つければ、あとは複数パターン用意して部分的にモーション化したり、コピー&ペーストで対応するなどれすれば、まばたきランダム登録よりも楽しいアニメーションが作れるようになります。
目線を動かす
目線(両目ボーンなどの目ボーン)も、よく観察してみると、比較的こまめに動いている部分です。
なかなか間近で観察できない部分なので、アップショットが多いドラマなどを見てみると良いでしょう。
一方、アニメ的な表現をするのであれば、必要な時以外は固定させるという方法もあります。
今回は、少しだけリアル寄りな動きをつけ、「何もしない」を見てる人に飽きさせないための工夫となります。
人間だけでなくペット・動物なども同様で、クイックに動いては止まり、しばらくしてからまたクイックに動きます。
MMDでキーフレームをひとつ打つだけではゆっくり動いてしまうので、アニメ調でもリアル調でもなく、違和感を得る事があります。
ですので、少し手間ではありますが、両目ボーンを使って、
動く前のキーフレーム
動き始めのキーフレーム
動き終わりのキーフレーム
と打っておくと後から楽になります。
この図では、まばたきしている間に視線を変える、という感じで打ってあります。
これは、「自発性まばたき(無意識に行われるまばたき)」の一種で、資格情報を記憶しやすいよう、目線が動いた時にまばたきを行い、情報を整理しやすくする現象です。
また、正確に対象物を見ようとする素早い動きのことは「サッカード現象」といいます。これにより、眼球の動きが素早く動く表現に使います。
(それぞれについては、Google等で検索してみてください。色々生物について面白い発見があるかもしれません)
もちろん、まばたきせずに目線を動かしても良いのですが、できるだけキーフレームは短い方が良いでしょう。せいぜい空けても2~3フレームです。眼球がゆっくりと動くという事はありません。
ゆっくり対象物に向く時は、両目ではなく首または頭ボーンで動かした方が自然です。
さらによく観察すると、いわゆる「ガン見」してる状態でも数秒以上まったく動かない状態にはなりません。ヒトは半ば無意識的に周囲を観察する事があります。
これらを意識して、両目ボーンの動きを作ってみましょう。
もう少し凝るのであれば、両目ボーンを動かした後、左・右のどちらかのボーンを少しだけ動かす事で、より非対称的であり生物っぽい動きを表現する事ができます。
やりすぎると違和感を得てしまうので、ほどほどに。
生物は呼吸するので完全静止しない
多くの生物は呼吸や脈動がありますね。当然ヒトも呼吸しますし、呼吸の動はは完全静止していません。
また呼吸の速度や大きさで感情を表現する事もできます(ため息や深呼吸など)
MMDでは少しテクニックが必要ですが、モデルのボーンを多段化する事で、2種類のモーションを混ぜ合わせる事もできますし、モーション作りに慣れてくれば多段化せずとも、呼吸を意識したものを最初から作る事もできるでしょう。
肩Pボーン(肩キャンセルボーン)を活用する
本来、ヒトの呼吸は上半身全体で行っている(動いている)動作ですが、リアリティさを求めると大変なので、簡易的なアプローチから始めてみましょう。
一番シンプルに活用できるのは肩P(肩キャンセルボーン)を使用することです。
肩キャンセルボーンは、腕の動きに(さほど)影響を与えないまま、肩の上下・前後に動かせる特殊なボーンです。
今回は呼吸モーションで利用するので、まばたき同様に肩を上下させるのが一番見た目にも分かりやすいでしょう。
上図のようにほんの少しだけ肩を上げた状態、そして戻すの繰り返しです。実際にはまばたきと呼吸は連動していませんので、肩Pのキーフレーム間は長くなります。
ネットで調べると1分間に16~24回が正常値、との事なのでこれを上げて・下げるのセットを1回とした時、計算してキーフレーム間を決められるでしょう。
最初に付ける時は、見た目でも分かりやすい大きさでキーフレームを打っておき、次にキーフレーム間を調整します(呼吸の速度調整)。そして時間の調整が終わったあと、「少し大げさかな?」と思ったら、「ボーンフレーム位置角度補正」機能を使って、動きを小さくしてみましょう。
そして最後に補間曲線を設定します。モーフ(表情・シェイプ)と違ってMMDではボーンには補間曲線設定が使えるので活用しましょう。
やや緩やかなカーブで、呼吸を「吸う時」には早めの補間、呼吸を「吐く時にはゆるやかな曲線」を描くと、リアリティさが増します。
少し余談になりますが、「完全に停止する瞬間」を取らないためにも、補間曲線は天井や床側にぺったり貼り付ける事をせず、それぞれを少し浮かした状態にしておけば完全に停る事はありません。
また、右肩と左肩のキーフレームポイントを1フレずらすなどすれば「身体全体が完全停止」する事が防げます。
このようなアプローチも、後々完成版に生きてくる要素です。
肩Pだけでなく首や頭も呼吸させる
アプローチとしては肩Pと同じで、首と頭を上下させるような動きを付けると良いでしょう。
首と頭は多段的な使い方もできるので、動きを緩やかにしつつキーフレームをずらす事で、完全静止状態を避けることができます。
今回の場合は、できるだけ「何もしない」状況なので、首と頭は相殺するような動きを付けます。
この作業を行う時は、横からの視点で作業をすると良いでしょう。
これはやや大げさ目に角度を付けましたが、最終的には先述の「ボーンフレーム位置角度補正」で程よく手直しします。
首と頭の角度の付け方は、首ボーンで頭を上げたあとに頭ボーンで少し下げるという感じです。
この時、初期状態と同じなるようにしてしまうと、頭が後ろに下がっただけのように見えてしまうので、顎が少し上向きになるくらいが良いでしょう。
大きく息を吸い込む場合は、頭だけ上げるのではなく、首と頭を組み合わせて顎を上げる動きにします。
また逆に、目線を下にしたい場合は、初期状態に比べて首と顎を下向きに動かすという方法になります。
補間曲線の設定は先述の肩Pと同様に、ゆるやかな変化をしつつ「息を吸う」「息を吐く」で違うものを設定してみてください。
この2つを同じ補間設定にしてしまうと、緩やかな動きでも機械的な繰り返しのように見えてしまうので、少しでも自然さを出す「ゆらぎ」を補間設定でも表現します。そうすることで、よりキャラクターが「生きる」感じになります。
体全体のゆらぎ
生き物が呼吸している時は、基本的に体全体も動いています。キャラクターをさらに「生かす」ためにも、体全体を動かしたほうが良いのですが、全てのボーンを動かす必要はありません。
体は動いていても、足は地面に着いているので足IKは動かす必要はありません。
となると、一番手軽に全体を動かせるのは基本的にセンターボーンとなります(全ての親ボーンでは足も動いてしまうため)。
さらに、後から他の動き(モーション)と組み合わせられるようにする事を考えると、センターボーンよりもセンターの多段であるグルーブボーンを使う事をお勧めします。
(グルーブで呼吸の動きを付けつつ、センター等で他の動きを付ける等)
グルーブを動かすといっても、パっと見でわかるような動きはさせません。まさに「微動」となるような動きを付けます。
画面上だけでなく、数値表示を見つつ、「Ctrlキー+ドラッグ」で細かい動きを付けてみます。
キーフレーム間は、呼吸に合わせるよりは5~7秒くらいといったように、大きく空けておくと良いです。もちろん、補間曲線も緩やかな曲線で設定しつつ、少し凝るのであれば、X/Y/Zの移動をそれぞれ別な曲線設定にするのも効果的です。
これで、「何もしない(呼吸だけ)」というのを凝って作る事ができるでしょう。
まとめ
シンプルな「何もしない(呼吸だけ)」でも、少し手を加えてみれば好きなキャラクターモデルが生きている感じがします。
ここまでの作業で最低限の労力で活かすことができます。
より凝ろうと思えば、肘や腰、足の向きなども手を加える事が(場合によっては)可能です。
ですが一方、あまり凝りすぎてほとんどのボーンを動かしてしまうと、逆に不自然さが出てしまうので、程度の調整が必要です。
できるだけ労力を減らしつつ、自然な動きを付けるように意識してやってみてください。
ここまでの事をまとめると…
手付でまばたきを付ける(タイミングが大事)
完全静止部分を極力減らす
体全体で呼吸する
できるだけ手抜きできる箇所を模索する
となります。
「推し」のキャラが画面の中でも「生きて」いるとシンプルに楽しいものです。上記のアプローチではアレンジできるようにもなってますので、お時間ある時にチャレンジしてみてください。
それでは良きMMDライフを……
どこにでも居るバーチャルJC MMDユーザーの一人。 MMDアニメーター、動画制作・編集、VTuber関連制作などを行っているただのJC。