msToonCoordinatorを使ってみた
先月末にリリースされた「msToonCoordinator」を今更ながらに見つけたので、使用感などをレポートしてみます。自身の健忘録兼ねてますので、ややわかり辛い部分もあるかもしれません。
MMDはデフォルトでトゥーン調のシェーダーとなっていますが、時代と共に変わっていく質感や流行りなどもあります。そういう意味ではMMD標準シェーダーはやや古くなっている感を得てしまう場合もあるでしょう。
最近の多くのモデルでは、標準シェーダーでも見栄えするようにモデルの材質やテクスチャを工夫して「それっぽく」魅せるものが多くなっていますが、作者が違うモデルを並べたときには、ある程度、質感を合わせたくなる場合もあるでしょう。
そういう時には、やはりMikuMikuEffectのシェーダーで弄るのが最善ではあります。
が、この「msToonCoordinator」が出る前までは、多くのトゥーン調シェーダーは、MMEでいうカテゴリの「シェーダー」の枠になります。
一方、「msToonCoordinator」は「ポストエフェクト」となりますので、非常に手軽であるし、他エフェクトとの組み合わせもしやすくなっています。
また、ExcellentShadowとの組み合わせで、影・ハイライトの質感調整も一括して行えるのが強みです。
ikenoさんの質感調整ポストエフェクトなどと組み合わせる事で、今現在の放映アニメなどに近しい質感をえられる事ができるでしょう。
今回は、その辺りをレポートします。
シェーダーとポストエフェクトの違い
MMEのエフェクトの種類は厳密に区分けされているわけではありませんが、(個人的には)以下の4つに大きく別れていると考えています。
■シェーダーエフェクト
モデルやアクセサリの描写を直接弄るエフェクト。材質やエッジ、テクスチャの質感を自由に弄る事ができる。
MMEの「エフェクト割当」でエフェクトを割り当てる事で、そのモデル(または材質別)の見た目を変更する。
それにより、該当のモデル(材質)は他シェーダーエフェクトと併用できない。
■ポストエフェクト
出力画面全体の質感を弄るフェクト。映画調にしたり明るくしたり暗くしたり、色味を付け加えたりとするエフェクト。
全体調整となるのでモデル(材質)毎の調整はできない。調整はアクセサリ編集で行う。
■描写エフェクト
いわゆるパーティクル系エフェクトを代表するもの。細かい粒子やテクスチャものを画面に追加表示させるもの。
水面や床面反射などがこれにあたるが、ポストエフェクトの一部と捉えることもできる。
■ライトエフェクト
文字通り、光源を追加するエフェクト。ライトを当てたり影を自由に弄るためのものだが、処理が重い。
今回使用するのは「ポストエフェクト」に該当します。画面全体に影響するものなので、モデル個別に設定はできません。
(エフェクト名を変更して個別にする事も不可能ではないですが、その場合はシェーダーエフェクトの方を使った方が良いでしょう)
シェーダーエフェクトはモデル毎に設定できますので、一体一体細かく調整する事ができます。が、やはり手間がかかります。
lessさんの作られた「AltanativeFull」なんかは、専用の設定とテクスチャを用意すれば、恐らくUnityなどのゲームエンジンの描写にかなり近づける事ができるでしょう……が、かなり面倒です。
(未だ、使いこなせてるのはlessさん本人以外に私は知りません)
そういう意味では「ポストエフェクト」である「msToonCoordinator」は複数体のモデルをまとめられるので楽です。その一方、細かい調整やモデル毎の調整ができないといったところでしょうか。
その代わり、ポストエフェクトなので他のエフェクトとの組み合わせがかなり楽にできるようになっています。
ExcellentShadowは標準で対応していますし、ポイントライトやSSAO、リムライトなどとの併用も楽になっています。
実際使ってみた感
お手軽、とはいえ他のポストエフェクトのようにメインのエフェクトアクセサリ(○○.xなど)を入れればすぐに効果が出るものではなく、導入に必要な手順があります。それについては、元の配布記事を御覧ください。
標準状態ではExcellentShadowも切れてしまう為に影の出方が大幅に変わってしまっていますが、このようにイッパツで「それっぽく」できるようになっています。
このエフェクトの特徴としては、影の色味、ハイライトの色味、サブライトでの全体質感、エッジの色味調整などができることでしょうか。
また、各数値を調整するための調整用表示も行えます。またこの表示を使って合成編集用のマスクも出力できるようです。
標準状態ではやや色味が濃いめにはなっていますが、元々MMDの照明(というか材質?)がかなり明るめ(輝度高め)になっていますので、色味と共に落ち着いた感じで調整されているようです。
この色味や濃さなどは、専用のコントローラーモデルを使って、かなり幅の広い調整が可能です。
一方、このエフェクトでは、いわゆる「セルルック」に近い形の調整がなされているので、テクスチャのディティールが潰れる(もしくはボヤける)状態になります。新海誠作品やエヴァのようなディティールもくっきりといったリッチな質感用ではない事がわかります。
恐らくそういったセルルックよりもリアル系を求めるのであれば、「sdPBR」などの追加プラグインを使った方が良いでしょう。
さて、標準ミクさんだけではわかり辛いので、様々なモデルを並べてみました。
これは標準状態です。
これらのモデルを並べた理由を述べておきます。
■あにまさ式標準ミクVer.2
いわずと知れた標準ミクさん。すべての基準であり、デファクトスタンダードであり、天使である。
■Tda式初音ミクV4X
テクスチャのディティールが細かく、陰影も含めたグラデーション調なものとなっている為。差異が分かりやすい。
■VRoid製モデル
Unity系シェーダーで調整されているモデルなので導入。PMXに変換した後、本来であれば専用のシェーダーを割り当てるべきだが、今回はmsToonのものに差し替えてどのように変化するか見てみる。
■まめぷ式メジロマックイーン
ゲーム本体自体が推測だがUnityだが、シェーダーは専用のものを使っていると思われる。かなりセルルックな質感が出ているものを参考にして作られたもので、MMD標準シェーダーでも近しい質感が出てるように仕上げられているもの。これをmsToonに割り当てるとどうなるか試してみた。
■かにひら式フラヴィさん
テクスチャも細かく、シワや影の書き込みもあるモデル。Tda式と同じく髪や服、特にスカートやストッキングのディティールがどこまで変化するか見極める為に導入。
そして、適用後がこちら。
msToon側では特に調整せず、本体付属の調整パラメータ(default.vmd)を使用しています。
質感は好みにもよるでしょうが、かなりしっくりくるような感じになっています。
各モデルでの差異
一番分かりやすいのはやはりTda式でしょうか。ややディティールが潰れてしまってるとはいえ、許容範囲内かと思います。
エッジに関しては標準状態よりもやや太めになりますので、セルルックとはいえ筆圧が強いエッジのようにならないよう、モデル側で細くするなどの必要が場合によってはあるかもしれませんね。
また、サブライトで調整するなりして、影とハイライトのコントラストを逆に強めてみるのも面白いかもしれません。
ただ、白目部分にも影が出てしまうので、ここは材質毎設定でエフェクト適用を外してしまった方が良さそうです。
次にVRoid製モデルの場合です。材質設定の問題もあるのか、かなり色味が濃く出てしまうようです。この辺りはエフェクト側で調整するより、モデルの元々の材質側(もしくはテクスチャ)で色味を薄くしておいた方がいいかもしれませんね。また、やはりリムライトが前提となっている事もあり、追加でリムライトを足したほうが立体感が出やすくなりそうです。
照明方向次第ではあるでしょうが、顎のラインが消えやすいモデルだったので、顔の輪郭がくっきり魅せれるようになっています。
まめぷ式マックイーンですが、導入前ではさほど変化は無いかなと予想していましたが、案外大きな変化がありました。
全体的にやや色調がビビットになった感はありますが、これは好みが分かれるところでしょうね。
材質の描写順か設定かの問題かわかりませんが、左目の白目が抜けてしまっています。これはエディタで修正しなければなりませんね。
最後にフラヴィさんです。こちらもエッジの太さや白目のシャドウは調整した方が良さそうです。材質・テクスチャ側で色味が抑えられているので、この辺りはエフェクト側のハイライト・シャドウの調整でもう少し明確にすると良いかもしれませんね。
このエフェクトでの色調整は元の色からの差異での調整となるので、他モデルとの兼ね合いで丁度よいところを探る必要がありそうです。
統括
使ってみた感じでは、標準状態でも面白い質感で仕上がりますが、やはり細かく調整した方が良さそうです。また、他エフェクトとの組み合わせや場面によってコントローラーで色味を変えたりもできるので、かなり汎用性が高いエフェクトだと感じました。
以下に使用するにあたり、気をつけたい点などを挙げておきます。
★エッジはモデル毎に調整した方が良さそう
★白目部分など影を出したくない部分は、材質毎のエフェクト適用変更が必要(恐らくExcellentShadow側のRT設定)
★複数モデルで、どうしても一人だけ色が濃く出てしまう場合は、モデル側の材質設定で質感(色味)を薄くすると良さそう
★セルフシャドウの影範囲、ExcellentShadowのマップ範囲とボケ足設定は結構大事
★アンチエイリアスはかならず切る。元の記事でもある通り、ジャギーを回避したい場合は、倍サイズで出力後にサイズ縮小で疑似アンチエイリアスを行う(もしくは、編集ソフトなどでアンチエイリアスを掛ける)
おまけ
msToonの各パラメータを調整し、エフェクトを追加したもの。
・AutoLuminous
・ikCult
・ikDiffusion_1改
・PostRimLightToon
追込みはまだまだ足りないものの、なかなか良さげな感じ?
良し悪しはともかく、かなりビビットにして「ペルソナ」っぽく陰影をつけてみた感じ。もっと色収差をしてから彩度を弱めるのが必要な感じでしょうか……まぁこういう遊び方もできるという事で。