スモールステップを進めるときに使えるカード類
かんもくネットHPに、「場面緘黙に関する資料」として「カード類」を作成し、公立小学校教諭の吉本悠汰先生が作成した「おはなしチャレンジカード」「九九がんばりカード」「質問カード」を新しく追加しました。
吉本悠汰先生は、2021年度秋開催の日本特殊教育学会(オンライン)で事例発表をされ、その中でカードの一部を紹介されていたのですが、かんもくネットHPでの掲載をお願いしたところ快く了承くだいました。
◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇
場面緘黙をもつ子どもへの有効な介入として、エクスポージャー法とトークンエコノミー法がよく使用されます。
「トークンエコノミー法」というのは、ごほうびシールをはったり、台紙にスタンプを押したりして、望ましい行動をしやすくする方法です。
「トークンエコノミー法」は、幼い子どもだけでなく、思春期以降や成人にも効果的。私は親子で取り組むときも、高校生以上が取り組むときも、子どもに「大人も、自分で自分にごほうびをあげて自分を励ましたりするんだよ。例えば、1週間お仕事したら、金曜日の夜は缶酎ハイのごほうびとか。毎週末、缶酎ハイ飲んでる場合でも、自分に『よくやったね」『がんばったね』って意識的に励ます工夫なんだよ」と説明します。
場面緘黙の子どもへの治療介入は、まず子どもにとって安心できる環境を整え、情動をコントロールする力・話す力や社交スキルをつけることが土台となります。そして、エクスポージャー法で発話チャレンジを促していきます。本人の不安レベルを確認し、本人がGOサインならチャレンジGO!
そして、記録をとったり、シールやスタンプなどの「トークンエコノミー法」によって、子どもが自分の行動を目で見て確認し、チャレンジを続ける意欲を保ちます。
場面緘黙は、話すことを求められた時に、緊張のために「話さない」「黙っている」ことが続く状態。話せないでいると周囲が助けてくれたり、何事もなくスルーした時、一時的に不安が下がりホッとします。この「不安からの回避行動」がクセのように定着してしまうのが場面緘黙のメカニズムです。黙ってやり過ごすと、本人としては一時的にホッとできるのですが、あとから「自分はダメだ」と自分を責めたり、「次もまた出来ないにちがいない」と決めつけたりして、発話についての思考反芻が生じて、この不安の悪循環の渦がより深まり、抜け出すことにいっそう苦労します。
エクスポージャー法でのチャレンジ意欲を保つためには、「チャレンジしたことの誇らしさ」がこの「回避行動後のほっと安心」を上回ることが必要です。これがなかなか難しい。
吉本悠汰先生が作られたカードは、子ども自身が「チャレンジしたことの誇らしさ」「チャレンジすることの楽しさ」を実感できるように工夫されています。
ぜひご活用ください。
かんもくネット 角田圭子(臨床心理士・公認心理師)