「わいせつ教員対策新法」施行から1年
教育職員が、わいせつ行為等によって懲戒処分されることが増えている。
日本でも「勇気ある告発者」そして告発をサポートする人々が出てきたということではないだろうか。
2021年度の調査では、公立小中高校等の教員で「性犯罪・性暴力等」によって懲戒処分等を受けた者は216人(0.02%)。そして、そのうち児童生徒等に対する性犯罪・性暴力により懲戒処分を受けた者は94人(懲戒免職が91人)とのこと。
国公立大学に対して読売新聞が行った調査では、2021年度までの5年間でセクハラやわいせつ行為で懲戒処分を受けた教授らが少なくとも78人。被害者の8割は学生で、40~50歳代の教授、准教授が多かったという。処分は停職が36人で、懲戒解雇は4人だ。
これらは氷山の一角だ。
2022年4月、「わいせつ教員対策新法」が施行された。
教職員などからの性暴力から、子どもたちを守る法律だ。児童生徒に対して、性的な言葉や行為を繰り返し行ったり、性的な画像や動画を見せたり送ったり、性的な関係を持つことを強要したり誘惑したりすることが含まれる。
この法律で、わいせつ行為で教員免許を失った教職員が把握できるデータベースが整備されるという。これまでのように、わいせつ教員が再び学校で教員になり、わいせつ行為を繰り返すことはいくらか防げるということか。ただし、学校事務職や保育士、塾講師、医師や心理士などの職種までカバーできるわけではない。誰にも気づかれず、子ども相手の職種につくことが可能だ。
性暴力やセクハラをした教員が学校を辞めれば終わり、懲戒処分したから終わりというのではない。被害に遭った子どもたち/人々の心の傷は大きい。
性暴力やハラスメントは「権限を持つ人」と「権限を持たない人」の権力関係の中で生じる。奈良大学社会学部心理学科の今井由樹子准教授によると、加害者は、グルーミングとも呼ばれる「手なずけ」から入り、支配関係の中相手の信頼を乱用し「これくらいいいだろう」と性暴力に及ぶ。加害者側の治療は未開拓の分野だ。
せめて「勇気ある告発者」が二次的なハラスメントを周囲からうけることがないことを願う。
「権限を持たない人」の声が届く社会、受け取れる社会になってほしい。
かんもくネット 角田圭子(臨床心理士・公認心理師)