イギリスの支援団体SMiRAの講習会から(その1:園児や小学校低学年の保護者向け)
先月は場面緘黙(メンタルヘルス全般)の啓発月間でした。SMiRAでも4度のオンライン講習会を開催。形式は、まず録音された講習ビデオを視聴してからライブで質疑応答という形でした。
1回目はSLT(言語聴覚士)のスザンナ・トンプソンさんによる『場面緘黙の案内(An Introduction to Selective Mutism)』。緘黙歴が短い園児や小学校低学年児の親を対象とした講習会でしたが、その中で興味深かった点をご紹介します。
1) 園や学校で場面緘黙の教育を徹底する
まずは園や学校スタッフ全員に場面緘黙を知ってもらい、子どもに対して誰もが一貫した対応をすることが重要。緘黙児は緊張すると、固まったり、無表情になったり、下を向いたり、視線を避けたり。中には、ニヤニヤしているように見えたりする子もいる。緊張と不安に対する反応は子どもによってそれぞれ違うことを理解し、まず緊張をやわらげることを考える。
場面緘黙をいち早く見つけて、すぐに保護者に知らせて支援を始めることが大切。発見が早ければ早いほど、回復も早い。
2) 専門家との関わり
SLTや小児心理士など、専門家が子どもと1対1でセッションを行う必要はない。これは緘黙状態がまだ固定化していないため。専門家は主に保護者や学校にアドバイスし、場面緘黙を理解させ支援の指示をする。まずは子どもを取り囲む環境を変え、「話す」プレッシャーを取り除けば改善は早い。
専門家がいなくても、園や学校の理解と協力があればマギー・ジョンソンさんとアリソン・ウィンジェンズさん共著の『場面緘黙リソーズマニュアル(Selective Mutism Resource Manual)』で充分対応できるとのこと。(別室で週3回、子どもと保護者(あるいは子どもがすでに話せる学校スタッフ)が遊びながら会話練習をし、そこにまだ話せない先生や友達を一人ずついれていく『スライディング・イン』法セッションを行うことを奨励)。
3) 子どもに自信をつけさせ、自己評価をあげる
どうせ答えないからと、とばしたりせず常に参加させること。できるだけ時間をあたえて、うなずきなどでも応えられたら、言葉がけを忘れずに(ほめられるのを嫌がる子も多いので、さりげなく)。
子どもは目立つことや他の子と違うことを嫌がる。保護者と子どもと取り決めをし、子どもが一番やりやすい方法(カードの提示、秘密のサインなど、性格や年齢によって異なる)でコミュニケーションをとれるようにする。常にスモールステップで進むことが大切。
また、保護者や友達が場面緘黙児のために代弁するのは良くない(話さなくてもいい状態に慣れてしまうため、緘黙を強化する原因になる)。常に話す/ コミュニケーションをとれる機会を与え続けること。
4)トイレの問題
園や学校でトイレに行けない場面緘黙児は多い。カードや秘密の合図で先生に知らせることができる子どももいるが、全員ができる訳ではない。まず覚えておきたいのは、場面緘黙児は自分から行動を起こすのが難しいということ。
一番いいのは、先生がクラス全員にトイレタイムを促したり、二人一組でトイレに行かせたりする方法。みんなが動けば不安は下がり、誰かと一緒だったら行きやすいかもしれない。
それぞれ子どもによって違うので、まず何が不安なのか子どもに確認する必要がある(大人が思ってもみないことを不安に感じている子もいる)。どうしたら一番楽か子どもと話し合って対策を決めると良い。
まとめ
スザンナさんは園児から大人まで場面緘黙に苦しむ多くの人たちの治療にあたっていますが、やはり早期発見・介入することが最重要と強調していました。現場に緘黙の知識があれば、専門家が関わらなくても改善は早いことは明らかだと。学校側の支援体制も問題ですが、保護者も気づいた時点でいち早くアクションを起こすことが大切になってきます。
かんもくネット事務局 みく(ロンドン在住)
注:翻訳には最善をつくしましたが誤訳があるかもしれません。どうぞご了承ください。