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2022 年 3 月 22 日の電力逼迫報道から 現状の電力需給予測制度の適正運用・再エネ促進の方向で良いことを確認する

 2022年3月22日に関東などでの電力供給量が危ぶまれ、「なりゆき停電」もありうると報道されるなど、大きな問題となりました。結果的に「なりゆき停電」という最悪事態はさけられました。すでにあるルールを活用すれば、電力逼迫は十分に回避可能性があり、今後とも少なくとも「なりゆき停電」は回避できると考えられます。 
 ところが、最近、電力需給等について、科学的根拠に基づかずに再エネ普及や原発停止などが原因だとの風説が飛び交っています。今後のため、風説は間違っているということを少し明確にしておきたいと考えています。

1. 2022年3月22日の検証(東京電力・東北電力管内)

(1)需要予測

 突然の寒波によって1週間前の電力需要予測と比較して前日予測が大幅に増加しました。(実際のその日の東京は、平均気温3.7℃最高気温9.9℃最低気温約1.2℃だったとのことで、前日の平均気温9.6℃から大幅に下がりました。)
 そして、22日16-17時には電力需要が4730万kWと予測されました。
前日18時頃に行うことが制度的に決められた「電力需給逼迫警報」は出したと報道されていますが、実際には前日20時頃に記者に質問されて「警報のようなモノ」だと言った状況でした。
 3月22日当日は経産大臣からテレビなどで節電要請があり、停電の可能性も言われましたが、前日のこの2時間の遅れは、翌日の需要調整に大きく影響しうるものだと考えます。

(2)現実の需要

 3月22日の11時-12時、13時-14時に最大4500万kWの需要があったとのことです。今冬の最大需要であった1月6日の供給可能量は5570万kWでありましたし(HJKS稼働発電所での4840万kWと連系線による供給約800万kW)、その日の需要実績は5370万kWでしたので、その日の供給可能量よりも、3月22日の現実の電力需要の方が下回りました。(たぶん、東電パワーグリッド等が大口需要家にお願いして需要をおさえた成果も大きかったと推測されます。)

(3)3月22日の供給可能量が通常より低下していた要因(地震、定期点検、故障など)

(ア) 3月16日の地震による供給量の減少 
地震により3月22日の電力供給量が減少しました。(約250万kW(火力発電所の停止・出力低下)・230万kW(連系線運用容量低下)など。)
(イ) 3月16日の地震後の定期点検による供給量の減少 
・富津発電所2号系列7軸(認可出力162,000kW)は3月20日に中間点検開始。
・川崎発電所3号機(認可出力198,400kW)は3月21日に定期検査開始。
・電源開発沼原発電所2号機(認可出力225,000kW)は3月22日8:30に停止。
(ウ) 地震以外の不定期なトラブル・設備故障による供給量減少
・電源開発磯子火力発電所新1号機認可出力600,000kWで3月19日に設備故障による停止など。

(4)域外からの電力融通 

 電力広域的運営推進機関によって、東電管内への供給をするようにとの指示が3月22日の午前5時59分に出され,その変更が午前9時21分,午前11時20分にされ、さらに、追加指示が午後3時8分になされました。
・東北電力ネットワークから東京電力パワーグリッドに最大81.78万kWを供給する旨指示。
・中部以西から最大112.43万kWの供給を指示など。

2. 本来のあり方の概略

(1)「電力需給逼迫警報制度」

 東日本大震災後の計画停電を経験した後、なるべく計画停電を避けるための事前措置として、2012年に「電力需給逼迫警報制度」が作られました。電力需要に対する供給余力が3%を下回る(103%未満)見通しになった際に、電力需給逼迫警報を出すこととされました。

 つまり、東京電力パワーグリッド等が需要供給予測を前日に把握し(気象予測、太陽光・風力などによる)、必要な場合、監督官庁が警報を出すことができるルールになっています。

改正電気事業法34条により経産大臣が情報提供を一般送配電事業者に求めることができます。

(*改正電気事業法(昭和39年法律第170号)第34条1項1号;「経済産業大臣は、電気の安定供給の確保に支障が生ずることにより、国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがある緊急の事態への対処又は当該事態の発生の防止のため必要があると認める場合には、一般送配電事業者又は配電事業者に対し、関係行政機関又は地方公共団体の長に対して必要な情報を提供することを求めることができる」。エネルギー供給強靱化法の一部施行(令和2年6月12日)に伴う改正によるものです。)

(2)需給調整契約の状況の情報開示

 現在、需給調整契約の状況の情報開示がされていませんが、2016年までは毎年、夏冬の需給検証で契約の量(約150万kW)が公開されていました(2016年小売電力自由化以降公開されなくなりましたが。)。

(3)需要家への要請

 警報の後、需要家に需要をさげる要請をし、公開の市場で募集することができる(送電会社の持つ需給調整手段の一つと言えます)。

(4)事前通知後の計画停電

 上記(1)~(3)を行っても電力逼迫する場合、事前通知をした上で計画停電をすることとされています。

(5)なりゆき停電はなるべく避ける

 このようにして、なりゆき停電はなるべく避けるべきとされています。なお、3月16日の地震の際は(1)~(4)が機能せず、なりゆき停電も仕方なかったと言えます。

3、今回の報道等の混乱の原因と誤解

 今回の混乱の原因は、①突然の寒波と、②3月16日の地震で火力発電停止等が重なった極めてまれな例(稀頻度事象)でした。ルールに基づいて「電力需給逼迫警報」がしっかりと発令されていれば、ここまでの騒ぎにならなかったと推察されます。これに対して、3月22日の電力逼迫が①再エネ普及や②原発停止などが原因だとする報道等がありましたが、誤解と考えます。

 今後も再エネを一層促進させ同時に地域合意も大切にすることが、今後の日本の進むべき道であり、世界の潮流にも合うと思います。ご賛同FAX、メール、記事へのコメントなど頂ければありがたく存じます。安田陽京大大学院経済学研究科再生可能エネルギー経済学講座特任教授の知見等を参考にさせて頂きました。 

2022年4月30日
環境ウォッチTOKYO 代表 牛島聡美
電力問題プロジェクト座長 後藤敏彦
FAX  03-3834-2406


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