【短編小説】キャラ弁はつらいよ

今日は娘の運動会!
母親である私ができることは精一杯の応援、そしてとびきり美味しいお弁当を作ってあげること。
今日も早起きをしてお弁当の準備を進める。去年の運動会の時の中身は娘は覚えていないかも知れないけど、万が一ガッカリさせないように、メニューを変えるつもりだった。そのために前日までに買い物は済ませたし、あとは調理して盛り付けるだけ。
だと思っていたが、私はある娘のひとことを思い出してしまった。
それは去年の運動会でのこと、お昼休みになったというのに娘は浮かない顔。私が「どうしたの?」と聞くと娘はこう言うのだ。
「お友達のお弁当はプリキュアのお弁当だったよ!なんでウチは普通のお弁当なの!」
あとでママ友に写真を見せてもらったが、確かにそのお弁当は、いわゆるキャラ弁というやつで、非常にクオリティの高いプリキュアの顔が多種多様な食材で再現されていた。
そんなクオリティの高いお弁当を前に、テンションガタ落ちの娘に対して私はつい「それじゃ、来年はキャラ弁にしよっか!」と約束をしてしまっていたのだ。
そんな大事な約束を当日の朝に思い出してしまったからサァ大変。
とりあえず、その辺に娘が出しっぱなしにしていた雑誌を見ながら今ある食材でなんとかキャラ弁を目指す。

「う〜ん、だめだ!」

初めてキャラ弁を作ろうとしてわかったのだが、私には圧倒的にセンスがなかった。ご飯の上に現れた小学校低学年の娘の絵以下のプリキュアらしき何かを急いで片付ける。

「こんなの見せたら逆に泣いちゃう!」

私は娘の雑誌片手に記憶を頼りに娘が好きそうでかつシンプルなキャラクターを探した。そして私はついに救世主をみつけた。

「あっ!モルカーだ!」

PUIPUIモルカーというストップモーションアニメのキャラクターを作ることにした。モルカーはモルモットと車が融合(?)した丸っこいキャラクターなのだが、一口にモルモットといっても色々な種類がいるのが特徴だ(私の世代だとハム太郎を彷彿とする?)その中でも「いなり」というキャラがいて、こいつはいなり寿司のような身体をしているのだ。私は残りの気力を振り絞り、いなりを量産した。

そして、数時間後。運命のランチタイム。
娘が蓋を開ける瞬間、私もドキドキしたが、いなり達は顔が崩れることもなく、綺麗にお弁当箱に収まってくれていた。

「わぁ〜!モルカーだ!かわいー!」

シンプルな見た目のモルカーは私でも再現することができて、ホッと一安心。

「ママー!ありがとうー!」

娘もとても喜んでいるようでよかった。
と、思ったのもつかの間。

「じゃあ来年はプリキュアねー」

「え」

思わず私は固まってしまった。
こりゃ一年、修行しなきゃな……
トホホ……

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