【短編小説】見極めの試練

今朝、腹痛と気持ち悪さで目を覚ました。


「変な物でも食べたかなぁ……」


私は昨日食べた物を思い出した。該当する食べ物はすぐに見つかった。


「あ、昨日の皿うどん……」


昨日の夕飯は親からの仕送りに入っていた皿うどんを食べたのだが、その麺は何故か苦かった。


その苦さは飲み込んだ後も口の中に残るような独特の苦さであった。

いつもの皿うどんでは無いことを察して賞味期限を見るとなんと2年前。だが、普段から半年や一年くらい過ぎたものだったら食べていたので今回も無事に完食できる自信があった。だが、今朝になってこの有り様である。


「あー、まぁ確かにあの苦さヤバかったもんなぁ……」


今冷静になって思い返すと我ながら無茶をしたと思う。とりあえず私はネットで詳しい原因を探ってみた。


ネットによると、原因は油の酸化らしい。


皿うどんの麺はすでに油で揚げてあるのだが、時間が経つにつれてその油が酸化し、苦味を出すようになり、結果食中毒を引き起こすのだという。


確認せずに食べた自分も悪かったのだがこんなものを送り付けてくる親も親だ。


私はとりあえず親にクレームの電話をいれる事にした。


「あ、もしもし?お母さん?」


「ん?どうしたのよ」


「昨日さ、仕送りに入ってた皿うどん食べたんだけど食中毒になっちゃったよ!お腹ちょー痛いんだけど」


「馬鹿じゃないの?」


「ばっ、馬鹿じゃないのって、仕送りに入れたのお母さんじゃん!」


「何?仕送りに文句あんの?もう送んないよ」


「そうじゃなくてさぁ……自分の子供が食中毒になってもいいの?」


「あんたもいい歳なんだからさ、安全かどうかくらい自分で見極めたら?」


「そりゃ……そうだけどさ……でもお母さんが入れたのなら大丈夫かなーって思うじゃん」


「あんたいつもそうやって何も考えないんだから。普通にスーパーに売ってても異物混入してたとかニュースでやってたでしょ?」


「まあ……それもそうだけどさ……」


「少しはそういうの見極められるようにならないとダメよ?」


「うん……」


「とりあえず病院にいくほどじゃないんでしょ?」


「うん……今日仕事も休みだし、一日寝てることにする……」


「そうしな。まあ見極められるようになるまでの試練だと思ってさ。次からはお母さんからでもちゃんと見なよ?」


「うん……わかった……」


これで電話は終わった。確かに母の言う事は正論だった。ただ一つ許せない事もある。


「意図的にヤバい食品入れたってこと!?」

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