【短編小説】ブタメンに合う駄菓子!?

小学生のころ「自分で新聞を作ろう」という宿題が出た事があった。
内容は「自分が調べた事を書くこと」だった。
題材や情報収集方法などは自由だった。誰かへのインタビューや、本を読んで集めた情報を纏めたりとにかくなんでもあり。
僕のまわりのクラスメイトは「父親に仕事のインタビュー」や「好きな昆虫ベスト10」などを題材にしていた気がする。
とくに「昆虫ベスト10」のようにランキング形式のものは記事に纏めやすいので、僕もランキング形式を採用することにした。
期限は一週間。今思えば作文以外ろくに執筆もしていない小学生が一人で新聞を完成させるには結構短いと思うのだが、文句を言っても仕方がないので僕は必死に題材を考えた。
そして、おやつのブタメンを食べている時に、ヒラメキが舞い降りてきた。
「そうだ!このブタメンに合う駄菓子を探そう!」
ブタメンとは普通のカップラーメンの3分の1程度の量の即席麺だ。値段も安価で小学生の自分たちでも手が届く駄菓子だった。
そしてこの頃はテレビのワイドショーなどで「〇〇と〇〇を足すと美味しい!」のような裏ワザ的紹介が流行っていた。それを僕らに身近な食材で検証したらきっとみんな見てくれるのではないか?と考えたのだ。
宿題を出す時に先生も言っていた。
「どういう人に記事を届けたいかをイメージして新聞を書きましょう」と。
僕は僕と同じように駄菓子を愛する同級生達のために早速検証を開始した。
母親にお小遣いを前借りし、駄菓子屋に走る。それはそれは多種多様な駄菓子を候補に選んだと思う。
うまい棒チーズ味に、キャベツ太郎などのスナック系。蒲焼き屋さん太郎やおやつカルパス、さくら大根などの珍味系。ヤングドーナツや、グミ、キャンディなどの甘味系。そしてフエラムネやココアシガレットなどの砂糖菓子。
僕が選抜した駄菓子たちがズラっと勢ぞろいしている。駄菓子好きなら心躍る光景だが、いつまでも浮ついているわけにはいかない。「宿題だから」ということで、大量の駄菓子を食べることを母親も許してくれた。
検証中には様々なドラマがあった。新たなる美味な食べ合わせとの遭遇、そして事故とも呼べる組み合わせに出くわしたことも……
そんなこんなで僕は胃と舌を酷使してブタメンに合う駄菓子ランキングを完成させた。
そしてついに宿題をみんなの前でプレゼンする時間がやってきた。
「第一位はおやつカルパス!お肉みたいでジューシーでした!」
みんなはぽかんとしていた。
一位のおやつカルパスとの食べ合わせは本当に美味しかった。だが、当時の僕の語彙力ではこの良さはあまり伝わならなかったようだった。
このときはじめて僕は国語の大切さを思い知ったのであった。

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