整体狂
姿勢が悪い。
仕事への取り組み姿勢も決して良いとは言えないが、身体的な姿勢が非常に悪い。
僕は比較的高身長であるため、猫背であるのは仕方がないと自己正当化していた。身長180㌢のTaylor Swiftの写真とか動画を目にするたびに、彼女がめちゃくちゃ猫背なのを確認しては勝手なシンパシーと安心感を得ていた。
しかし先日、"え、首っ痛っ"という日があり整体というものに初めて行ってみることにした。
もともと他人に身体を触れられるのがあまり好きでなく、床屋で髪を切った後にマッサージとかされるのも、断るほどではないけれど正直無い方がいいなと思っていた。
(なお、この苦手意識を自己分析すると、全ては自分自身が超痩せ型であることへのコンプレックスが起因しており『スリムで羨ましいですね〜』とかズケズケと言及されるのが嫌なのだと思う)
そんな中、先述の通り整体に行ってみた。
今まであまり気付いていなかったけれど、検索してみると整体やマッサージやリフレクソロジーと呼ばれる店はこの世に溢れている。
とりあえずその日の夜に予約の取れるオレンジ色がイメージカラーのチェーン店に行くことにした。
首に痛みがあることを伝えると、首の回旋や可動域そして全身の骨格の歪みを確認してくれた上で、『うわ、こんなに凝っている方なかなかいませんよ。この状態で今まで辛さが出なかったのが不思議です。』という寸評をいただく。
姿勢が悪かったり身体が硬いことには多分に自覚があるため、コメントに対する納得感と『こんな人なかなかいない』という言葉に少しの特別感を抱きながら、全てを委ねて色んなところを押されたり引っ張られたり骨をポキポキ鳴らされていると、『こんなに凝っている人、なかなかいませんよ〜。』という声が隣のベッドから聞こえてきた。
別の整体師が施術中の患者に掛けた声だった。
ふ〜ん…
そうやって誰彼構わず甘い言葉掛けてるんだ…
アタシだけが特別じゃないんだ…
痛みに呻き涙を滲ませながら、フクザツな乙女心が顔を覗かせる。
でも、そんなココロに反してカラダは正直で。
事が済むと普段より背筋が伸びて目線が高くなったり、首が回りやすくなったりしていて、短時間で自分の身体が改善していることが少し悔しい。
『凝り固まってしまった姿勢はすぐに戻ってしまうので、来週もまた来てください。』
別れ際、強引に次の予定を取り付けられてしまった。
どーせ皆に言ってるクセに…
最初の彼とは、結局2回だけで長続きはしなかった。
たまたま予定が合わず行った別店舗の店長のテクニックの方が断然上で、そっちに鞍替えしてしまったから。
乙女心と秋の空は移ろいやすいと昔から言われている。
そして遂に今日、6回分の回数券を約4万円で購入してしまった。
午後スーツを作ろうと採寸の予約していたけれど、お店に通うために節約しなきゃとキャンセルした。
本当は眼鏡も新調したいけれど、我慢しなくちゃいけないかもしれない。
今日もお風呂上がりにいそいそと店長に教えてもらったストレッチをする。
次会った時、少しでも褒めてもらいたいから…
こうやって堕ちていく、整体の沼に…
ちなみにこのチェーンは謎にPodcastを配信していて、そこも僕好みである。(パーソナリティの整体師が無駄に良い声なのが面白い)