かんき出版新入社員が読書の秋に乗じておすすめしたい本7選
長引いた暑さがようやくおさまり、いよいよ秋本番がやってきました。ここ数日はもはや冬では?という寒さに見舞われていますが、出版社とは切っても切れない”読書の秋”のビックウェーブを乗りこなすべく、新入りの広報Nが自己紹介もかねておすすめ本7冊をご紹介します。
広報Nは今年の9月にデジタル・プロモーション部の一員としてかんき出版に入社した社会人3年目です。周りの皆さまに大変お世話になりながら、SNSを中心にWEB周りの販促業務を担当しています。
大学時代は4年間書店でアルバイトをしていて、新卒で出版社入社を目指したものの撃沈......。大学卒業後は本とは全然関係のないクレジットカードの会社に入社し、たまたま宣伝部門に配属されてそこで丸2年宣伝業務に携わりました。人間関係にも恵まれた働きやすいすてきな職場だったのですが、やはり本に関わる仕事がやりたくて転職活動を開始。かんき出版には宣伝の経験を買っていただき入社が決まりました。諦めが悪く運の良い人間ですね。
はじめてのnoteということもあり(良い感じのテーマも思い浮かばず)、シンプルに「人におすすめしたい」という基準だけで7冊を選びました。この記事を読んでくださった方の秋に少しでも彩りを添えられたら嬉しいです。
①『死してなお踊れ 一遍上人伝』(栗原 康/著)河出書房新社
強烈なタイトルと、「いくぜ極楽、なんどでも」という帯コピーに一目惚れして手に取った1冊。「日本史の授業で出てきた、名前だけ知ってるけどよくわからない変な人」の印象が強い、踊り念仏で有名な一遍の評伝です。
学校の授業では”鎌倉時代、一遍、踊り念仏”の先を深堀りせずに終わってしまった方、多いのではないでしょうか。私もそうです(一応大学受験は日本史選択だったのですが......)。
一遍がこんなに興味深い人物だったなんて!もっと早く知りたかったです。著者の鮮烈な筆致と一遍のまぶしい生涯がとびきりの化学反応を起こした、帯にもある通り「奇跡の評伝」だと思います。
②『神の子どもたちはみな踊る』(村上 春樹/著)新潮社
物心ついた頃から本好きでしたが、私を「読書沼」に突き落としたのは間違いなく村上春樹本との出会い。お世話になっている親の友人宅に大学の合格祝いで招かれた際、『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』を薦められ、借りて帰宅。その日のうちに村上春樹本との初対面を果たし、世界が変わってしまいました。勉強は「世界の解像度を上げる行為」というのをよく耳にしますが、村上春樹本との出会いも私にとって「世界の解像度爆上がり」案件でした(YouTubeの画質を240pから1080pに上げたときみたいな......)。受験勉強もあり高校時代は読書から遠のいていたのですが、読書の面白さ・言葉が持つ力の奥深さも再確認でき、それからは再び片時も本と離れず過ごす生活が始まりました。
村上春樹本をはじめて読む、という方には短編集をおすすめしたいです。『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』など、長編のイメージが強い作家ですが、短編も精力的に発表していて、どれも非常に読み応えがあります。私の一押しは『神の子どもたちはみな踊る』。著者が阪神・淡路大震災後に書いた6編が収録されていて、特に2作目の「アイロンのある風景」に心を掴まれました。
(ちなみに長編なら私は『海辺のカフカ』が1番好きです。私もいつか地下に潜って『ねじまき鳥クロニクル』を読みながらドーナツを穴だけ残して食べて、村上主義者を名乗りたいです。)
③『花を見るように君を見る』(ナ・テジュ/著 黒河 星子/訳)かんき出版
韓国の国民的作家、ナ・テジュ氏の詩集で、日韓累計67万部を突破(2021年10月時点)したベストセラー。韓国語の原著はBTS(防弾少年団)のRMやBLACKPINKのジスが推薦したり、パク・ボゴム主演「ボーイフレンド」の劇中で使用されたりしています。どうしてこんなにきれいな言葉で詩を綴れるんだろう、と感動する一方で、その言葉たちが描く風景や心情はすごく身近で、まるで自分に寄り添ってくれているような気がします。私が心を奪われたのは「この秋に」という一編。
11/4にはナ・テジュ氏の詩集第2弾『愛だけが残る』が発売になります。
④『わたしたちが光の速さで進めないなら』(キム・チョヨプ/著 カン・バンファ/訳 ユン・ジヨン/訳)早川書房
2021年に読んだ本のうち、今のところ1番心に響いた作品です。悲しげなタイトルと神秘的な装丁に惹かれて購入しました(タイトル買いの成功率に自信があります)。
ジャンルはSF小説で宇宙を舞台にした作品ですが、全編にわたっていわゆる"エモい"雰囲気に満ちており、SFにはあまり縁がない......という方も肩の力を抜いて読めるのではないのかなと思います。
私が印象に残ったのは、156ページの"「わたしたちがいくら宇宙を開拓して、人類の外延を押し広げていったとしても、そこにいつも、こうして取り残される人々が新たに生まれるのだとしたら......」(中略)「わたしたちは宇宙に存在する孤独の総量をどんどん増やしていくだけなんじゃないか」"という言葉。発展を続けていく社会は、果たしてすべての人々にとって本当に良いものなのか問いかける1冊でもあります。
⑤『眠れなくなる宇宙のはなし』(佐藤 勝彦/著)宝島社
宇宙つながりでおすすめしたいのがこの本。著名な物理学者の佐藤勝彦先生が、易しくわかりやすい文章で宇宙の面白さを教えてくださる1冊です。宇宙のはじまりに関するお話、宇宙の95%は正体不明、ブレーン宇宙論など、最初から最後まで好奇心が刺激されるテーマでいっぱいです。もし私が小学生の頃にこの本に出会っていたら、本気で宇宙学者を目指したかも(!?)。小さいお子さんのいるご家庭でも、親子一緒に楽しめる本だと思います(絵本版もあります)。
⑥『センスは知識からはじまる』(水野 学/著)朝日新聞出版
学生時代、就活を本格的に始める前に、センスのある人間になりたい!と思いこの本を手に取ったのですが、読了後、そもそも本を読んだだけでセンスをどうにかしようというその願望がいかに浅はかで安直なものだったかを痛感しました。
「センス」というとどこか生まれ持ったもののような印象がありますが、タイトル通り、この本はセンスは知識を土台にして成立するものと説きます。だからこそ、「センスがない」というのは言い訳で、努力次第で自分のセンスはどこまでも磨き抜けるのです。
また、どうしても新しいもの・成功したものに目を向けてしまいがちですが、この本を通じて、古いものや失敗したものにも自分の成長につなげられる学びはたくさんあるのだとあらためて気付くことができました。
⑦『北北西に雲と往け』(入江 亜季/著)KADOKAWA
舞台はアイスランド。車と会話ができる17歳の少年が主人公。その職業は探偵!もうこの設定だけでめちゃめちゃワクワクしませんか?入江先生の躍動感に満ちたダイナミックな絵で描かれる物語の没入感は格別です。読み終わったあとはお腹が空いてアイスランドに行きたくなります。
『青騎士』で絶賛連載中で、先日ワイド版も出版されました。
次回はかんき出版社員のおすすめ本を紹介予定です。もっともっと幅広く、様々なジャンルの名著や隠れた名作をご紹介できると思います。お楽しみにお待ちください。