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受験生&保護者必読!河合塾ベテラン講師が大学入学共通テスト[現代文]を徹底分析!
いよいよスタートする「大学入学共通テスト」。
2020年1月に急遽方向転換され、国語の記述問題が出題されなくなるなどの変更が発表されました。
2021年の共通テスト[現代文]ではどのような問題が出題されるの?そして、どのような対策をすればいいの?
『大学入学共通テスト 国語[現代文]が1冊でしっかりわかる本』の著者である河合塾の超ベテラン現代文科講師・兵頭宗俊先生に、最新データをもとに、2021年の大学入学共通テストの出題を予想していただきました。
大学入学共通テスト[現代文]の対策が知りたい受験生&保護者必読の内容です。ぜひお読みくださいませ。
【1】令和3年度「大学入学共通テスト」現代文は、結局どうなるの?
――2020年1月29日に、共通テストの出題方法等の変更が発表されました。これによって、令和3年度の共通テスト国語[現代文]の試験は、どのようになりますか?
「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等 令和2年1月29日 一部変更」により、国語の試験は以下のように変わりました。
試験時間 旧:100分
新:80分
解答方式 旧:マーク式及び記述式
新:マーク式
制限時間・解答方式ともに、従来のセンター試験と同様です。
ただし、センター試験とまったく同じ形式の問題ではないと予想されるので、注意が必要です。ここでは、出題形式を予想したうえで、身につけるべき力と今後の対策についてお伝えしたいと思います。
まだ実際のテストは行われていませんが、これまでに2回行われた試行調査(プレテスト)と2020年1月29日に示された「大学入学共通テスト問題作成方針」をもとに、令和3年度の共通テスト国語[現代文]の出題について考えてみましょう。
まずは、いわゆる「入試の現代文」でイメージされるようなふつうの読解問題(選択肢の問題)を思い浮かべてみてください。
従来のセンター試験もこの形式の出題でした。共通テストも、この「ふつうの読解問題」がベースにはなっています。
しかし、ここからが従来とちがうところで、そこに何かしらの資料がひっつくカタチになるだろうと考えられます。それを世間では「複数テクスト」という言葉で表現しています。
ですから、共通テストでは「ふつうの読解問題」+「資料」のカタチの「複数テクスト」問題が出題される可能性が濃厚です。
なぜこのように言えるのかというと、2020年1月29日に示された「大学入学共通テスト問題作成方針」に、次のように記載されているからです。
《国語》
言語を手掛かりとしながら、文章から得られた情報を多面的・多角的な視点から解釈したり、目的や場面等に応じて文章を書いたりする力などを求める。近代以降の文章(論理的な文章、文学的な文章、実用的な文章)、古典(古文、漢文)といった題材を対象とし、言語活動の過程を重視する。問題の作成に当たっては、大問ごとに⼀つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の文章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する。
現代文で注目すべきは以下の2点です。
・「論理的な文章」「文学的な文章」「実用的な文章」が題材になる
・「複数の題材」による問題が検討されている
現代文の大問は2問です。その中で「論理的な文章」「文学的な文章」「実用的な文章」を出題するならば「複数テクストの問題」になるでしょうし、事実、そのような複数の題材による問題の出題が検討されているとのことですので、やはり「複数テクスト問題」の出題があると考えるのが妥当でしょう。
長くなりましたが、ここからは「複数テクスト問題」の出題を前提に分析を進めたいと思います。
【2】共通テストでは、どんな問題が出題されるの?
――令和3年度の共通テストでは、どのような問題が出題されるのでしょうか?
この、ふつうの読解問題にいろいろとひっついている「複数テクスト」はパッと見たときに目新しい問題なので少し戸惑うかもしれませんが、それをうまく攻略することが得点に直結するので、どんな問題が出題されるのかについては可能な限りイメージをしておきたいところです。
――具体的には、どのよう資料が出題されると考えられますか?
ふつうの現代文にひっつく資料としては、「グラフ」「表」「写真」「新聞記事」「法律の一部」など、さまざまなものが考えられますし、もちろん、ふつうの現代文に「ふつうの現代文」がひっつくという可能性もあります。
また、文学的文章については、こちらのほうが無限にパターンがありそうでやっかいですが、いわゆる小説や随筆などのふつうの現代文にひっつく資料としては、「詩」「俳句」「書評」などが考えられます。
【3】共通テストでハイスコアを取るためには、どんな力が必要?
――複数テクストの読解が求められる共通テストでハイスコアを取るには、どんなことが大切ですか?
「制限時間内で、いかに持っている力を出すか」にかかっています。
共通テストの場合、じっくり考えれば満点近く取れるということもあるかもしれませんが、現実のテストでは制限時間がありますので、限られた時間の中でちょっとでも点数を取るという姿勢が絶対に必要になります。そのために欠かせないものは、やはり「要領」です。
かつてのセンター試験では、ほとんどの受験生が「時間が足りない」と言っていました。従来のセンター試験でも膨大な量の文章を読んで設問に答えるのは大変だったのですが、共通テストでは、さらに「複数テクスト」の読解が求められます。
長い文章をすみからすみまで丁寧に読んで、さらに、それにひっついている資料もすみずみまで丁寧に確認して……という具合にやっていると、制限時間内に解き終えることは難しいでしょう。
だからこそ、文章や資料から「必要な情報を素早くゲットする」ことが大切です。
得点するのに大事な部分とそうではない部分を見分けて、必要なところだけに集中するという、いわゆる取捨選択能力がカギになります。
――どのようなところに注目すれば、必要な部分を見抜くことができますか?
いわゆる普通の読解問題に「資料」をひっつけているのは、問題の「出題者」です。「出題者の意図によって資料がひっつけられて、問題がつくられている」といわれると、何だか難しそうな気がしますが、実はこれが最大のヒントになるのです。
何のつながりもないものを「複数テクスト」としてひっつけることはできません。強引にひっつけることも不可能ではないかもしれませんが、それは、全国の受験生が参加する大学入学共通テストの問題としてはふさわしくないでしょう。
ということは、「複数テクスト」としてひっつくとき、そこには誰が見ても納得できる理由があるはずです。そして、出題者はそれをよりどころにして複数の資料としてひっつけ、問題を作ります。
言わんとするところがわかってきたでしょうか?
「出題者がどのような意図で複数の資料をひっつけたのか」
これをつかむことで、ハイスコアを取るためにどこを読むべきなのかが見えてきます。
――出題者の意図をつかむには、どのようなことに気をつければいいですか?
本書の中でも触れていますが、ふつうの読解問題とはちがう「グラフ」や「表」などの「資料」は目新しく感じられるものなので、多くの受験生はここが気になってしまうかもしれません。
しかし、まずはメインのテクスト(文章)に目を向けましょう。先ほどお伝えしたように、出題者は、誰が見ても納得できるように複数の資料をひっつけます。
誰が見ても納得できるものは、ほとんどの場合、メインのテクスト(文章)の「主旨」です。
ちょっと補足しますね。ここでいう「主旨」とは、その文章の「メインメッセージ」のことです。論理的な文章でしたら筆者の「主張」にあたるもの、文学的な文章でしたら作者が作品の中で伝えようとしている「テーマ」にあたるものです。
これらの「メインメッセージ」は、「メインテクスト」の中にしっかりと示されています。
ですから、まずは、「メインテクスト」で「メインメッセージ」をつかむことを優先してください。メインにひっついている「サブテクスト」に目を向けるのは、その後です。
また、「サブテクスト」はすべての部分が重要なわけではありません。重要なのは、「メインテクスト」で「メインメッセージ」として示されていたことに関係する部分なのです。逆に言うと、それ以外はさして重要ではないので、簡単に流してしまってかまいません。
まとめると、次のようになります。
①まずは「メインテクスト」で「メインメッセージ」をつかむ
②「サブテクスト」の中で「メインメッセージ」に関係する部分だけを丁寧に読む
③それ以外の部分は簡単に流す
これらは、受験生が意外に知らないポイントです。
みなさんはいい意味で真面目なので、1行目から一生懸命読んでくれます。時間無制限でしたらそれでいいのですが、通常の試験よりも制限時間がタイトになるであろう共通テストに臨むにあたっては、少し要領よく立ち回ってみてください。
これを知った多くの受験生は劇的に解くのが速くなるので、非常におすすめです。
【4】今からやるべき対策は?
――共通テストに向けて、今からどのようなことをすればいいですか?
最初にやるべきは、共通テストに対応できる「目の動かし方」を知ることです。
「目の動かし方」とは、複数テクストを“どこから”“どのように”見るかということで、「メインテクスト」から「メインメッセージ」をつかんで「サブテクスト」に進むというのがこれにあたります。
この「目の動かし方」をまずは、頭にインストールしてください。本書では、その具体的な「目の動かし方」を説明しているので、必ずやお役に立てるでしょう。
あとはそれを、問題を解く中で使えるようにしていくことが必要です。共通テスト型の予想問題をこなしてく時に、インストールした「目の動かし方」をぜひ使ってください。身につけたことを実践していくという過程ですね。
ここを逆にしないように気をつけましょう。
繰り返しになりますが、共通テスト型のいわゆる「複数テクスト」問題は、目新しい問題形式なので、どうしても本文のいろいろな部分が気になってしまいがちです。
全部にまんべんなく対応しようとすると、結局はうまく立ち回ることができずに苦手意識が生まれてしまいます。
だからこそ、まずは正しい「目の動かし方」を知ることを大事にしてください。戦術を身につけるのが最も重要だということです。
戦術を身につけたあとは、実戦練習あるのみです。
明確な戦術をもって臨めば、多くの受験生にとって非常にタイトな制限時間の中でも、ハイスコアを取ることが可能なのです。
【5】最後に
記述問題の出題がなくなって試験時間も変更になるなど、今年の受験生はほんとうに戸惑うことが多かったと思います。授業で生徒と接している中でも、そのような戸惑いが伝わってきました。
誰もが等しく不安を抱えています。でも、最後までやれることはたくさんあります。
どのような出題になるのか確たる予測がつきづらい共通テストですが、ひとつ断言できることは、メインテクストの主旨は必ず存在するということです。
焦らずに主旨をつかむこと。これは、従来型の現代文の読解問題でみなさんが身につけてきたことですね。
だから不安になることは何もないのです。しっかりとメインの主旨をつかんだ後は、少し要領よく立ち回ってみましょう。そのための方法は、本書にすべて書きました。
不安を自信に変えて、輝かしい未来に進んでいきましょう。本書がその一助になることを、願っています。
河合塾の超ベテラン現代文科講師・兵頭宗俊先生による『大学入学共通テスト 国語[現代文]が1冊でしっかりわかる本』の情報は、こちらです。
また、兵頭先生の最新刊『現代文のコア 読解のための最重要テーマとキーワード』もぜひどうぞ!
お読みいただき、ありがとうございました!かんき出版の学習参考書が受験生の皆さまのお役に立てれば幸いです。
(編集部N)