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声圧

「制圧」「征圧」でもなく【声圧】
声でもって場を制すること。造語。

高校時代は応援団に所属していた。
野球の強豪校だったので実は甲子園応援の経験もある。アルプススタンド6,000人の前で声をあげるのはなかなかの緊張感。皆んながグラウンドを見つめる中ひとり背を向け声を張らなければならない。冷静に指示を出し統率する係だ。

応援団に入部してすぐにやらされるのが発声練習。普通に大声を出そうとするが出ない。すぐに喉が枯れてしまう。すると突然先輩が腹を殴ってくる。
「……うぇっ」ビックリと驚き。何するねん💢
先輩は涼しい顔でひと言。
「それ。その声をだせ!」
今では考えられない荒っぽい教え方だが、その分覚えも早かった。毎日屋上で叫び続けるだけ。ひたすら腹から声を出す練習を繰り返す。よく考えたらヘンな部活動だ。
当時は分からなかったがつまり【腹式呼吸】をやらされていた。お腹から出す声でないと大観衆の前では通らない。声の大きさだけでなく腹から響き渡る【太さ】が必要なのだ。

テレビの現場ではこの発声が役にたった。スタジオに大人数の出演者が集い、さらに観客もいる収録だとなかなか声を張り上げても伝わらない。番組の説明をするのだがそもそもタレントは聞いてないし笑。久しぶりの方と談笑したりMCに挨拶したり。ここでベテランフロアDのワザが光る。
わざと声を落としゆっくり喋るのだ。人は怒鳴り声には拒否反応を示すが小さくてゆっくりしたトーンだと聞く耳を持ってくれる。本能的に(何か大事な話をしてるな)と反応する。この時大切なのが【小さいけど太い声】を出すこと。腹式呼吸の出番だ。そして少しずつ大きくしていき、ラストは気持ちも盛り上げて
「それでは本番参ります!」
と張り上げる。出演者や観客のボルテージを上げて盛り上げていこうという空気にしなければならない。これがうまくいけば後はプロのタレントが面白く盛り上げ、観客が笑ってくれ→収録大成功となる。

何よりこの儀式で伝えているのは
「スタジオの支配者はあのおっさんだ」
と分からせること。声でもって場を制圧する。
支配者というと偉そうだが、ここからの2時間スタジオのコントロールは私がやりますよーという宣言なのだ。逆にいえばその空間で起こった全ての責任は取りますからご安心をと。大げさだが毎回そんな心構えで臨んでいる。
アルプススタンドで応援を仕切っていた経験がこんな形でいかせるとは…。青春時代に屋上で叫んでいたのがムダにならず良かった(^^)

昨年コロナに感染したのだが療養明けの収録が大変だった💦
声が出ないのだ。
大きく息を吸い込むと咳込んでしまう。この時は焦りました。さいわい後遺症もなくすぐに戻りましたが“引退”の二文字もよぎりましたね。声が出なければ仕切りようもない。
(そうか、俺の存在価値は声なんだ)
と再確認した次第。
まさか60歳近くまで声を張り上げる仕事をするとは思ってもみませんでした。ここまで来たので、声が出て睨みが効いているうちはもう少しフロアに居させていただきます。ただ最近は手の脂がなくてカンペが捲りにくい…

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