一生に一度の逆ヒッチハイク

田舎のバス停で一時間に1,2本のバスを待っていると、つい今し方目の前を通り過ぎたのと同じ青い車が反対車線からやって来た。「同じ車種かな。こんな田舎で珍しい」と思っていると、なんとUターンして目の前に停車。

助手席の中年の女性が声を掛けてきた。
「駅まででしょう?乗っていきます?」
 ーえ!いいんですか?!
「後ろ空いてますから、どうぞ」
 ーうわ~助かります
「ここ滅多にバス来ないからね」
 ーですねー
「私が言ったのよ、乗せてやろうって」
 ーはぁ
「だからUターンしたの」
 ーあぁ道理で。あれ同じ車かな、と思ったんですよ
すると運転しながら旦那さんが言う。
「昔、息子が前にヒッチハイクでお世話になったからね」
 ーへぇ
「その恩返し」
 ーそうなんですね
「僕らはちょっと方向違うから途中のバスターミナルまででいい?」
 ーはいそりゃもう・・・

等という会話をした記憶がある。
車はボロくて狭く後部座席は色んなものが取っ散らかっていて、お世辞にも整理整頓されているとは言えなかったが、彼らの心は豊かだった。

その後何の恩返しもできないまま今では車を手放してしまった僕は、いつかまた車を持って誰かをヒッチハイクする日が来るのだろうか。これまで何度かその機会はあったような気がするが、その都度「ああっごめん今は急いでるんだよねー」等と言い訳している自分がいた気がする。
いや勿論ヒッチハイクだけが恩返しの手段ではないのだろうけども🙄

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