西と東が覚束ない

 地図を見たとき「上は北、下は南」と瞬間的に判別がつくのだが、東と西が時々分からなくなる。北西と聞いても「右上だっけ、左上だっけ🙄」と心許ない。なのでRPGで王様に「北西にある洞窟に姫が幽閉されておるのぢゃ」と言われても、それが画面の左上の方角だと脳内翻訳するまではモヤモヤするし、当然、曖昧なまま出発すれば五分五分で迷子になる。勿論リアル生活ではしっかり確認するので、方向音痴になることは滅多にない。

 そもそも南北には極があり地球上どこにいても北は北で変わらないのに、東西については基準次第で変わるのが混乱の元だ。例えばサウジやイランなどがある 中東(Middle-East)地域は、アジアから見れば西にある。昔のヨーロッパ人が如何に自己中心的な世界観を持っていたかが良く分かるネーミングだが、もし「中東はサハラ砂漠の西にある。YESかNOか?」という問いが出たら、インド以東に住む人々の正解率は欧米やアフリカの人々に比べ下がるに違いない。
 
 最近、東西がややこしい根本的な理由にハタと気付いた。東(ひがしhigashi)と左(ひだりhidari)、西(にしnishi)と右(みぎmigi)がそれぞれ韻を踏んでいるからではないか、と。西が右なら直感的に分かりやすいが、実際は東が右なのだ。故に、日本語話者は他言語話者よりも瞬間的な東西判別が苦手に違いない。そういうデータがあるかは知らんけど🙄
 「左ヒラメに右カレイ」のようにシンプルに語呂合わせができれば手っ取り早いのだが、この記憶法は文頭の”ひだ”と”ヒラ”が韻を踏んでいるからこそ成り立つ。以前「左が西で右東」と覚えようとしたが、いざとなると無意識に韻を踏んで「左が右で西東」等となってしまい当てにならない。酷い時は「左東に右カレイ」と考えた後、そのナンセンスさを得心するのに10秒くらい🙄の状態でフリーズしたこともある。人生で全く役に立たない「左ヒラメ」がここまで邪魔をするとは。まさに順向干渉。覚える順番は大事である。
 「朝日が昇るのが東で右」と覚えればいいのだろうが、どうもしっくり来ない。これも恐らく既に「朝日は左(翼)」が刷り込まれているせいだ。もっと言えば「東西」という字の並びにも違和感がある。東の右に西があるからだ。縦書きの「南北」にはここまで違和感は感じないのに。 

 実は子供の頃に独自に編み出した鬱陶しい「東西確認法」があり、それが一種の儀式のように習慣付いてしまっていてその思考癖(強迫観念)が直らない。”確認したい”と意識した瞬間から、とあるメロディが自動的に脳内で始まる。一定の年代以上の人しか知らない人形劇の主題歌なのだが、

 東はどっちだっけ🙄(からスタート)
 ♫ニンニキニキニキ、ニンニキニキニキ、ニニンが三蔵(4秒経過)
 ♫ニンニキニキニキ、ニンニキニキニキ、ニシーが悟空(8秒経過)
 ♫西へ向かうぞ、ニンニキニキニキニン(12秒経過)
 ♫西にはあるんだ夢の国ンニキニン(16秒経過)
 ♫Go Go West(ここでメロディ終了。18秒経過)
 三蔵法師は中国からインドへ向かった(20秒経過)
 地図上でインドは中国の左にある(23秒経過)
 なので左が西でWest(24秒経過)
 東Eastはその反対なので、右(25秒経過)

 2行目までは明らかに不必要な情報なのだが、厄介なことにそこを経ないと3行目が出てこない。2行目で「ニシーが」とモロに言っているが、あくまで九九の二の段の「2×4=」なので方角のイメージは湧かない。「インドは中国の左」のところでは脳内でイチイチ大きな矢印がグイっと左へ伸びる。歌の最中は、人形劇のキャラが全員集合してニンニキ言いながら行進しているシーンがずっと頭から離れない。
 勿論、全体で20数秒も掛かっていたのは最初だけで、繰り返しているうちに次第にこなれて超スピードで早送りできるようになり、今では数秒程度で結果に至る。毎回同じような画面を脳内再生するのは煩わしいが、東西を明確にするにはこうするしかない。

 結局は、東日本と西日本だとか西欧と東欧の位置関係が自然と脳裏に浮かぶようになるまでトコトン特訓するしかないのだろう。はー、メンド(´Д`)クサ

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