
ジョージア料理「ムツヴァディ」の地域性
先日カヘティ地方に滞在した際、現地の方のマラニでスプラを開いて頂いて久しぶりにカヘティ地方の料理やワインを堪能させてもらったのですが、ジョージアの宴会の代表料理「ムツヴァディ」の作り方に注目していました。
「ムツヴァディ」は豚肉を串に刺して直火で焼き上げたバーベキューで、文字通りとてもシンプルな料理です。ジョージアではブドウの枝を燃やした炎で焼き上げられることが多いです。理由としては、ワインの国だからというのと、ブドウの枝を燃やした煙には有害物質が含まれていないからと聞きました。

焼き上げられた豚肉は玉ねぎと合わせて提供されます。玉ねぎは豚肉の肉汁を吸ってとても美味しくなります。ワインと相性バッチリの豚肉ということで、シンプルながらも宴会のご馳走です。また、火起こしや焼き加減の見極めには一定の経験が必要だということで、ジョージア人の男性が腕を奮う男の仕事でもあります。
「ムツヴァディ」の作り方に注目していたのは、ジョージア西部と東部カヘティ地方で作り方に違いがあるからです。シンプルな料理ながらも地域性があるのが面白いと思うので書いていこうと思います。今のところ西部と東部のざっくりした違いしか分かっておらず、実際はもっと細かい地域性があるかもしれませんが、分かり次第追記していきたいと思います。勉強不足で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
漬け込むか漬け込まないかの違い
東部カヘティ地方では、調味液に豚肉を漬け込むことはせず、焼く直前に塩だけする調理法が多いです。

これに対して西部では、塩とワインビネガーなどに漬け込んでから焼かれることが多いです。僕が住んでいるアチャラ地方のKhimshiashvili Cellar はお客さんをもてなすときにムツヴァディを作っているのですが、同じく漬け込み手法です。
こうした違いが生まれる理由を考えてみたら色々思い浮かんだので書いていこうと思います。
カヘティ地方の方が豚肉の脂がのっている
よく言われるのが、ジョージア西部よりも東部、特にカヘティ地方の豚肉の方が脂がのっていて美味しいということです。はっきりした理由はよく分からないのですが、豚の運動量がカヘティ地方では多いからなのではないかと思います。カヘティ地方は峠や山道が多いです。ジョージアでは家畜が放し飼いされていることが多いのですが、カヘティ地方では坂道の上り下りが多いためにより筋肉が発達して美味しくなる、ということはあるのではないかと思います。
つまり、カヘティ地方では豚肉そのものの味が良いために、漬け込んだりして味付けする必要がなく、塩だけで十分ということなのかなと思いました。
気候によるもの?
カヘティ地方は比較的乾燥した大陸性気候、それに対してジョージア西部は湿潤な亜熱帯気候が多いです。湿潤ということは、肉の腐敗のリスクが高いということです。それに対処するために、ワインビネガーなどに漬け込むことで味付けをしつつ、保存性を高めているのではないかと思いました。
対して東部は乾燥しているために、肉の腐敗のリスクはあまり考えなくてよかった、ということかなと思います。
ワインとの相性
ワインビネガーなどに肉を漬け込むと、酢の作用で脂がすっきりすることがあるみたいです。また、肉に酸味が加わってさっぱりすることもあると思います。
ジョージア西部では比較的すっきりして酸味の効いたワインがよく造られているのですが、図らずも漬け込み型のムツヴァディとの相性が良くなっていると思いました。
また、カヘティ地方ではより濃くて力強いワインが生産されています。つまり、脂ののったカヘティの豚肉によく合います。ジョージアワインとムツヴァディの両方が、スプラで供される定番のものなので、ワインと料理の相性が良いということは重要だと思います。
自分なりにムツヴァディについて考えてみました。シンプルな料理でも地域性や歴史など考えてみるととても面白かったです。また気がついたことあれば追記します。
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