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ドキュメンタリー映画「サツナヘリ」が興味深い

ジョージアの昔ながらのワイン造り及び収穫の様子を知るのに良いと思われる動画を見つけたので紹介させて頂きます。

ドキュメンタリー映画となっていて、20分弱と気楽に見られます。
会話もほとんどなく、ジョージア語が分からなくても楽しめると思います。

「サツナヘリ」とは


タイトルはジョージア語で"საწნახელი" (サツナヘリ)。サツナヘリは木製の細長い大きな桶で、ワインの仕込みに伝統的に使われていた道具です。

どの工程で使われていたかというと、ブドウの足踏みに使われていました。
収穫されたブドウはそのままサツナヘリの中へ入れられます。ある程度中にたまったら、人が上に乗って、足踏みでブドウをクラッシュするわけです。

前回の記事でも書きましたが、ジョージア人にとってブドウの収穫はお祝い・お祭り事です。サツナヘリでブドウを潰している間も、周りでは人々が歌を唄ったりして、この工程を祝い盛り上げていました。

ブドウがクラッシュできたら、流れ出た果汁をクヴェヴリへ入れ、ある程度の量の固形分(固形分を使うか否か、その比率は地方によって異なります)も加え、発酵が始まるのを待つ、という流れです。

さて、この足踏みという工程、自分はものすごく興味があるし是非自分でもやってみたいと思っているのですが、人力でぶどうを潰すにはかなりの時間と労力がかかります。現代では除梗破砕機やブドウをプレスする機械がジョージアでも広く流通しており、サツナヘリを使うマラニは殆ど見られなくなってしまいました。

とあるマラニのサツナヘリ。このように置かれてはいるが使われていないケースがほとんど。

「ジョージアのワイン造り」が再確認できる

さて、技術の発展により効率化に転換し伝統が失われようとしているのはどこの国でも同じかと思いますが、この映画はジョージアの古きワイン造りの伝統を学び再確認するのにとても良いかと思います。

映画はまずサツナヘリ自体を作るところから始まります。大木を切り倒し、樹皮を剥ぎ、中をくりぬいてオリジナルのサツナヘリが作られています。
それを牛さんと男たち数人がかりでブドウ畑があるところまで引っ張っていく。

この他にも収穫したブドウを入れておくカゴ(ギデリといいます)やクヴェヴリを掃除するブラシも手作りされている様子が見えます。
クヴェヴリはワインの発酵が起こる非常に重要な道具で、クヴェヴリ職人が存在するくらい品質が重要視されるので流石に手作りは難しいと思うのですが、可能なものはなるべく手作りするという、「自家製ワイン」の伝統が背景にあるジョージアワイン文化が感じられるかと思います。

大勢の人たちが協力して収穫とワインの仕込みを行っている様子からも、ジョージア人にとってワイン造りが大きな意味合いを持っていることが伺えます。

映画にも地域性が表れている

ちなみに、ブドウの樹の様子やクヴェヴリが埋められている場所から、ある程度地方を推測することが可能です。
まず、ブドウは樹上高くに実っており、男たちは木に登って収穫していました。これはジョージア西部グリア地方などで見られる栽培方法です。湿度が高いのでなるべく高さをつけて風通しをよくする方法が採られてきました。日本の垣根栽培と考え方は似ていると思います。

次にクヴェヴリですが、屋内でなく、屋外に設置されていました。これも西ジョージアで見られるもので、同じく高い湿度のため、なるべく風通しを良くする目的があります。

こうした地域性が映画からもわかるのが面白いな〜と思いながら見ていました。その後尋ねてみると、やはり西ジョージアグリア地方で撮影された映画でした。

ジョージア人にとって単なる作業でないワイン造り、手作りの文化と伝統を「サツナヘリ」を通して感じて頂けると思うので、ご視聴をオススメします!

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酒見莞爾 Kanji Sakemi
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