【小説】エロ本ワールド
キミはエロ本を読んだか。大真面目に担任教師は尋問する。生徒ひとりずつ、そうしているのだろう。
なんでも校内でエロ本が見つかったらしい。
所有者を探しているらしい。
罰するつもりらしい。
(いや真顔で聞かれてウケるし、そっちのがセクハラしてきてんすけど先生)
しかもこれ、男子生徒だけにやっている。とんだ偏見だ今は令和だぞ女子だってハードSM緊縛エロ漫画を読むかもじゃないか。
いや、中身を知っているので、落としたのはボクなんだが。
落としたんだわな。
学校が、教師たちが。みんなが。どんな顔をするか、対応するか、見てみたかったから。それだけ。
結果、みんな、はしたないのがわかった。生徒たちは笑うし教師たちは男だけを尋問する。ろくでもないな。やっぱり。エロ本の世界のほうが、エッチで背徳的で欲望をすなおに認めている風俗のほうが、男女ともに欲に溺れるあっちのが、ボクには健全に見えてしまった。
なぜ笑うのか。いや笑うのはわかるけど。
なぜ男だけに犯人を絞るのか。いや男で当たっているんだけど。
ボクは少し安心して、だいぶ、がっかりした。
みんなと、ボク、どちらが、はしたないのか。
それが分かった。
確かにボクは変態趣向の持ち主。でもだからと他人をバカにしたり誹謗中傷の的にしたり吊るし上げたりしない。
はしたない世界は、そっちだ。
安心だ。そこだけは。ボクは自信をもって言える。なんせ住む世界がちがうと分かった。
「エロ本の持ち主はいないんじゃないですか、先生」
その持ち主は、この世界じゃ生きていけないから、この世界とはちがうから。見切りをつけたから。
もう、いないよ。
END.