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愛は宗教
産後1日目夜10時。突然涙が止まらない。
夫と私のふたりの生活が終わった。
そのことが悲しくて悲しくてただ涙が流れる。
コロナ下ではあったが妊娠期間は私にとってバラ色の日々だった。
もともと大人数での人付き合いが得意でない私にとって、大切な人と自由には会えないながらも少しずつ大切に交流する日々は幸せであった。
仕事で外出するが大好きな夫も家にいる。
二人が求める大事なものを私はお腹に抱え、私ごとそれを夫は守ってくれる。
日頃から幸せだと思っていたが、こんなに完成された幸せってあるんだろうかと過ごした。
もちろん妊娠生活での辛さはあったんだろうが、それら全てが幸せ完成へのピースであったし、たった一回だが出産の苦しみは私の場合その辛さを吹き飛ばすには充分であった。
不思議なくらい妊娠中もメンタルが変わらないなと思っていた。怒りも泣きも特にしなかった。
出産を経て我が子の顔をみてほにゃほにゃの体を抱いても母性っていつから出るんだろうかと考えていた。
そんななか夫と病院へ向かう最後の二人きりの車内を思って泣くなんて。
妊娠した時産むと決めた時腹を括ったはずなのに。
愛は宗教だ。
私の信仰する神は最近髭を生やし胡散臭いサングラスをしてよく笑う。
その姿を思い浮かべて大部屋で頬を濡らしている。
シュールで敬虔な信者は私だ。
きっとこのことも吹き飛ぶほどの日々がこれから私に訪れるだろう。
私の信仰する神は二柱になるかもしれないしならないかもしれない。
私はずっと夫を愛する。