蟹ッタ・デッロ・スポルト 2025J3リーグ第1節 奈良クラブ戦
個人的にはセリエAというかミランはそれなりに好きなのでイタリア風な題にしてみました。福島ユナイテッドの躍進に期待を膨らませて幕を開けたJ3リーグ2025シーズン。今年のチャレンジ企画ということでその時その時の感慨を書き残しておくことに意味はあるだろうと思ってやってみようかと。要は6点を基準に10点満点で毎節選手に寸評をつけようじゃないかみたいな企画。いつまで続くかわかりませんが。
奈良クラブ 2 - 2 福島ユナイテッド
10,清水一雅
14,樋口寛規
立ち上がり15分までに2点リードしながら25分過ぎあたりから試合終了までひたすら奈良ペースのゲーム。芝が悪かった、相手の強度の高いプレスに遅れを取った、天候の影響で練習場を固定できなかったためコンディション調整が上手くいかなかった、理由はいくらでも挙げられると思いますが、「J3を圧倒して優勝」と公言した中でこの試合運びは期待が萎む内容だったかと。もう負けなくて良かったというのをやめましょう。クラブが優勝を公言してるわけなので観てるこちら側としても目指すのはそこじゃない。
福島のゲームの中身としてはやりたいことは去年と同じなんですが去年の福島から大関を塩浜をそのまんま抜いた感じといいますか、ベースはあるんだけど上に行こうとしたら前途多難だなという初戦となりました。
1点目のしっかり繋ぎながら個人技を活かす局面を作れた場面、2点目のFKを獲得する場面も人数と手数をかけた中央からの攻撃で福島らしさがあり形そのものは良く期待感がもてます。J3を圧倒する要素の片鱗は見られたゲームだったので、こういった局面を継続的に作れなかった要因、プレスを持ち前のパスワークで剥がしきれなかった要因、そこをもう一度見直す必要があるかと。個人的には要因のほとんどが失点やピンチとリンクしてトランジションや攻守で最後まで走り切る運動量がシンプルに足りなかったと思うのですが。
まだ新加入選手たちが軒並みベンチ外だった事や、あくまで昨シーズンの内容に新戦力を当てはめただけのサッカーだったので、ここから選手の構成なり戦術はトライアンドエラーを繰り返していく事になると思うんだけど、悪いなりに勝ち切る、勝点を取りこぼさないというところは優勝するために絶対に必要。強い覚悟で次節に臨みましょう。
それでは採点へ
GK
吉丸 絢梓 6.5
ほぼノーチャンスとはいえ2失点、芝が悪い中でCKになったとはいえ角度が悪ければオウンゴールのトラップミスなど決して完璧な内容ではなかったが、この日の福島が勝点1を拾えたのは紛れもなく吉丸が最後の砦として立ちはだかったから。際どいボールにもよく飛び付き危機的場面を回収しただけでなく、完全にやられた63分と77分の決定機を防いだのは称賛されてしかるべき。厳しいプレスに晒されながらも足下でボールを保持し続け戦術上も欠かせない存在であることを示した。
DF
鈴 直樹 5.0
昨シーズンに続き右で逆足SB。簡単に突破を許す場面や空けたスペースを使われたりと守備面で後手を踏んだ。攻撃面でも縦への推進力や中盤との連係には物足りなさ。それでもゲーム終盤に中央寄りにポジションを取りボールを捌いた場面は今後への光明。精度の高い利き足の左を右サイドでは持て余し気味なので左SBの方が高い機能性を発揮するかと個人的には思うのだが……
藤谷 匠 5.5
184cmのサイズがありながら抜群のスピードでDFラインに新風。激しいプレスをものともしないビルドアップも頼もしい。とはいえ相手を止められない場面や寄せの甘い場面も見られた。今後も個での対応を強いられる場面は多いはずなのでさらなる引き締めを。これだけ足の速いCBはライン設定やカバーリングの範囲などの選択肢が増える予感のするプレーが多かったので今後に期待。
山田 将之 5.5
昨シーズン以上に果敢な縦パスが光る。ビルドアップもフィードも不安は無し。1失点目の場面はまともにやられたとはいえ身体の強さや空中戦の強さからすれば今シーズンも柱となる選手。DFリーダーとしてはもっと守備陣への統率力が欲しいところだし、特に藤谷との連係をもっと深めたい。
安在 達弥 5.0
期待の新戦力だったが慣れない左SBで実力を発揮しきれなかった。パスやボールコントロールの上手さは見せたものの、左WGや3センターと連係して崩しに絡む場面が少なく、中には入って違いを生み出すような期待された働きも見られなかった。サイドに蓋をできずクロスを入れられてしまう面も減点材料。今後右SBでの起用もあるはずなので、これから連係面や戦術への慣れで改善していきたい。
MF
針谷 岳晃 6.0
アンカーとしてはゲームメイクより守備での奮闘が目立ったが、針谷自身がここまで守備に走れるのは好材料。要所で相手に簡単にやらせない粘り強さが光る。広い視野と正確無比なパスで攻撃でも違いを作り出し、もう少し味方と合えば…というような鋭い縦パスも再現性があるので今後への期待は大。主将として劣勢をはね返すアクションがもっと出来ればなお良い。
城定 幹大 5.5
清水を走らせ先制点のお膳立てをしたパスは見事。昨シーズンより前への意識が向上し縦に刺す場面が増え、守備強度も改善傾向。順調な成長曲線を感じさせるスタートに。ただ、もっとボックスに侵入する動きや高い位置を取る回数は増やしてゴールに迫りたい。ミドルの意識も良かったが精度を欠いたので安定感も欲しいところ。今シーズンは針谷と共にポゼッションの中心となるだけでなく、大関が抜けた中で攻撃面でも主役としての活躍が求められるので採点は厳しめにします。
狩野 海晟 5.0
正確な両足のキックとタッチ、巧さを見せるターン、相手を剥がす小刻みなドリブルなど持ち味は発揮したもののキープ力と推進力に物足りなさ。ゴール前に入る回数も増やしたい。チームの設計として昨シーズンまで大関の担っていたタスクを預けられたが、サイズとスピードが無いので激しい寄せに苦しみ攻撃で輝きを放てなかった。狩野のポジションについてはタスクの見直しが必要かと。狩野自身もボールロストの部分は早急に改善したい。
FW
森晃太 5.5
鋭いドリブルからのチャンスメイクとビルドアップへの関与は昨シーズンから変わらず脅威。ただカットインからのシュートが決まらないのも昨シーズンから変わらず。2本とも枠を大きく外れたのは残念。チームが奈良のプレスに苦しみなかなか前進できず守備に走らされたり、左サイドで組んだ狩野や安在との連係もぎこちなさが残り不完全燃焼気味。状況は味方しなかったがコンディションそのものは悪くなさそうなので次節以降の爆発が待たれる。
樋口 寛規 6.0
芸術的なFKを突き刺し追加点。巧みなポストと泥臭い繋ぎで先制点の起点になった場面も素晴らしい。プレッシングの最先鋒として精力的に走ってくれた。単騎でのプレスとなってしまったので後ろと連係して追い込めればなお良かったが。流れの中からのフィニッシュも欲しいところではある。CFとしての仕事量と組立への貢献度からすれば今後も簡単にはポジションを譲らないでしょう。
清水 一雅 6.5
今季チームのファーストゴールと今後への期待で0.5加点。スピードとフィジカルを活かした迫力十分の抜け出しでゴールを記録。強靭な体幹にモノを言わせた強烈なフェイントから対面のDFを剥がして振り抜いた一撃はGKノーチャンス。クロスに飛び込む惜しい場面も作り、新9番としては期待の持てる順調な船出となった。エースとしてはもう少しシュートシーンを増やしたい。継続性と前プレと組立への関与はまだまだやれてほしいので今後の伸びしろ。
サブスタート組
石井稜真 5.5
CFで早速のプロデビュー。ゴール前では新鋭として思い切りは欲しかったがサイズの割に動けるCFであるところは示せたし最初の交代選手に選ばれるなど監督からも信頼されている模様。押し込まれなかなかチームが前進できずボールを受ける機会が少なかったがまずはリーグに慣れていきたい。
上畑佑平士 6.0
シュートシーンや決定的なパスは無かったとはいえインサイドハーフとしては強度、技術、機動力とターンは申し分なし。縦へ着ける意識も昨シーズンより高いように感じた。もっと長い時間見てみたい選手。
粟野健翔 出場時間が短い為採点なし
右WGが今シーズンの主戦場となるか。単独で仕掛けられるわけではないが幅を取ったりそこから斜めに侵入したりゲームに変化をつけられるのは示した。ビルドアップでは連係、精度の向上が不可欠。
松長根悠人 出場時間が短い為採点なし
技術、強度共に今節のスタメンに全く引けは取らない。SBとして鈴、安在のパフォーマンスが向上しなければスタメン奪取はそう遠くなさそう。
矢島輝一 出場時間が短い為採点なし
アディショナルタイムの出場なので見せ場はほぼ無し。石井にCFの交代の先を越されたという部分に燃えて奮起してもらいたい。
監督 寺田周平 5.5
鉄板だった森の左WGではなく清水の左WG起用という奇策で結果を出したあたりはお見事。昨シーズンから継続性のあるチームでシーズンに入り、チームの色を出して2点先行したところまでは良かったものの奈良の高強度のプレスに押し込まれると最後まで盛り返せなかった。選手たちを信頼しすぎたのか、この構成でどこまでやれるか試しているのか、本当に未だ手探りな中で手堅いものを選んだのか、それは今後見えてくることではあるものの今のままでは優勝には足りない。その中でどういう手を打ってくるのか、2年目で真価が問われる中でその手腕に期待します。
開幕にピークを持ってくる必要はないし手の内を全て見せる必要はありませんが、優勝するなら悪いなりに勝ち切ることは絶対に必要です。昨シーズンからの積み上げがあるからこそさらに高いレベルのサッカーを出来るはずですが、昨シーズンの延長のサッカーをやっているからこそ対策されやすいもの。優勝のためにそこを越えて行くことを期待します。まずは次節宮崎戦に集中し、まずシーズン初勝利を挙げましょう。