「生きる☆サブカル青年」③
最近僕が立ち上げたバンド「窓女の後光」のCDのプレス代に有り金を全部突っ込んでしまって、めずらしく紙のお札が入っていた僕の財布に今はやっぱり小銭くらいしかない。
小銭くらいしかないので家でCDのジャケを入れる作業を自分一人黙々とこなす。それで気が付いたら3日くらい食事らしきものを口にしていない。
今回は僕が好き放題やっていいバンドがコンセプトなので、なにをしてやろうかと考えていると、いつもの僕では有り得ないくらいの生命力が湧き出すので食べなくていいような気がしてしまうんである。
他の人から見たらクソダサいだけのバンド名は、僕が自室で栄養失調で倒れて死にかけた時に何故かすぐに異変を察知して駆けつけてくれた、つーちゃんが、流しの上の窓から部屋を覗いていた姿が逆光になって後光が差したように神々しかったんで、そのイメージで付けた。
こればっかりは誰が何と言おうと僕にとっては生命力を想起させる神聖な名前なのでそれ以外のバンド名は絶対に有り得ないと思ってそう名付けた。
その日の僕は滅多にないほど快活だったのだが、それはたぶん断食で極限状態になった仏僧の如くベータエンドルフィンか何かが出ているせいであって、つまりそれは死にかけの僕の最後っ屁のようなものでしかなかった。
それで食べないとぼちぼちヤバいと思い、立ち上がったらまたもやぶっ倒れた・・・・実に今年3回目の気絶である。
それでまたまたつーちゃんが来てくれたようで、今は病院で点滴を受けながら、窓辺の椅子で本を読んでるつーちゃんを薄めを開けて眺めていた。
「これで逆光になったら前の時より絵になるなぁ」
なんて思いつつ暫く待っていたら、少し落ちてきた西日が差し込んできた。丁度いい塩梅に逆光になって、髪の毛の輪郭だけ金色に光る黒い影のようなつーちゃんは期待以上に荘厳過ぎて、からっぽの僕の腹は「きゅるるるー」と生物的な反応をしたのでニヤニヤしていると、つーちゃんは「アホ臭っ」と至極真っ当にボヤいた。
僕の生命力はいつもそんな調子だし、僕がやりたい事をやるバンドの名前は誰が何と言おうが「窓女の後光」以外には有り得ない。