「生きる☆サブカル青年」番外編
やっぱり今日もビニール傘ばっかりだ。コンビニで売ってるペタペタした感触の白いスケスケのやつ。
フラジャイルのスケロ氏が、剛力彩芽が好きだと言っていたのをとあるミニコミ誌を見て思い出した。
僕も剛力彩芽は好きなのであるが、なんの関係もなくビニール傘を見ると剛力彩芽を思い出すという奇病に侵されているため、純粋なファンからは白眼視されても仕方がない。
夜の町を腹ばいになって捜し回るのは、剛力彩芽の顔なのか、それとも白いビニール傘以上のものではあり得ないのか?
実家へ戻ると、大切にしていた雑誌「遊」や「HEAVEN」や「電子雑音」がすべてぐちゃぐちゃな状態で段ボール箱へ無造作に突っ込まれていた。
血の通った人間のやることじゃないな、とは思ったが、僕は母に何も言わなかった。
あらゆる家庭は呪われている。 だから、家庭では笑顔を絶やさぬ事くらいしか出来ない。
白いビニール傘みたく出来たらどんなに楽だろうか。
切り刻まれた筈の記憶がふいに復元されることがある。 今日たまたま下北の商店街で中学時代の同級生に声をかけられた。 お互いすっかり容姿は変わっているものの、なんだかあの頃の気分に戻った。
僕は当時彼にブラックサバスの良さを延々と説明し、カセットにサバスをびっちり入れてプレゼントしたりしていた。
もうお互いブラックサバスは聴いていないけれど、そんな風にしてた事くらい忘れないようにしよう、となんとなく思った。
部屋で静かにギターを弾く。何を弾いているのかよく分からなくなってきて、自分が誰なのかもよく分からなくなるので、ギターを弾くのは私にとって命がけだったりする。
やっぱり白いビニール傘ばっかりだ。
剛力彩芽には笑顔がよく似合う。
僕の財布には小銭くらいしかない。
こんな事にもしなんらかの脈絡や繋がりがあるのだとしても、そんな事くらい断片的なままにしておきたい。
コレはこうで、アレとこう繋がっていて、だからこうなんだ、とか。
いちいち意味や筋が通らなくてもいい小部屋、断片が無造作に転がっている乱雑な居場所にいつも心惹かれている。
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原題:「傘」 原作:○○さん 脚本:私