「十一人示」第五帖

十(と)の奥に居わす一(ひと)親様のように九(こ)の事思うから
人の子らに必要な事、何でも示しておられるぞ。

今の〈ひと〉その事分からんようになってしまっているから
そんな〈人〉もう〈ひと〉とは呼べん程、落ちぶれて見る影ないぞ。

落ちぶれて身も着物も汚いからすぐにシラミ湧いて、シラミ潰すのに朝から晩まで明け暮れたら〈ひと〉も空も白んでしまうのぞ。

十の奥に居わす一、必要な事いっさい示していても、〈ひと〉シラミ潰しに明け暮れて、示し目に入らんのなら親心でも白んでしまうぞ。

示した事知らんまま白み潰しばかりしている人、親心温いこと知らんのなから、そんな人どうしても心白むばかりで気の毒ばかり。

知らんで居る〈ひと〉気の毒なから、十(と)の奥に一(ひと)居られるように掃除して開けておく大事、ここに人示(しめ)して気つけておくぞ。

この事よく腹に入れたら白み潰す手、少し止めて十の奥さっぱりと開けておいてくれよ。

そこに〈ひと〉居わすと心温くくなって白む事無いぞ。


二月二十六日 家に歩き着く

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