「生きる☆サブカル青年」 ②
僕には友人一人も居ない。僕が誰かにそう言ったら、スカしたニヒリズムと誤解されかねないけど、僕の生命力の無さが醸し出してる雰囲気だかオーラだかのせいでそう見えるのは分る。
それとバンドやってる関係で、取り巻きみたなのがいつも回りに居たりするんで、それ知ってるヤツが聞いたら、ニヒリズムとナルシシズムという二大巨頭の痛々しいのコラボ状態になってるはずなんである。
でも僕の財布にはいつも小銭くらいしか無いので、彼らにガストとかでメシを奢ってもらわないと結構マジで栄養失調気味になって行き倒れたりする。これは本気でに死活問題なので、こんな僕に良くしてくれる彼らを取り巻き連中なんて呼べた義理じゃない。でも友人とは呼べないし、他に言葉が見当たらないのでとりあえずそう呼んでおく事にする。
彼らは下北あたりでよく見かける、和装でハンチング帽被ってるような感じの種族なんで、僕の生命力の無いオーラを勝手にロマンチックに脳内変換してカッコイイと勘違いしてる節は否めない。
超人印刷工、村元さんの活力に憧れる僕からしたら、そんなもんのどこにカッコ良さがあるのか知れたもんじゃない。
ただ僕は人にどう思われても無頓着だったりするんで、そんな彼らに誘われれば特に何の感慨もなく食事に付いて行ったりする。でも本音を言うと連中が「○○君達のドロドロした音、ホントカッケーわ、今度JAMる時呼んで」とか何とか言って盛り上がってる、あのノリには到底馴染めそうにない。
僕も連中も世間と何かがズレてるはぐれ者同士なんだろうけど、僕はそんな連中にすら馴染めないくらいにズレっぷりが重症なんである。
あまりに重症過ぎて友人というものが都市伝説にしか思えないんだから、夜中のサイゼで連中とお喋りしてても、僕には友人は一人も居ないとしか言えないのだ。
などと、サイゼのドリンクバーの前でボーっと思ってたら、取り巻き連中の中でも、わりといつも一緒に居るS君に「森くん大丈夫?宇宙と交信中だった?邪魔してゴメンな」とか言われた。
思えば小学校3年生ぐらいの時には、漠然とだけど自分だけみんなと違う世界にいるような感覚があった。でも何故か周りに調子合わせるスキルも持ち合わせてたんで、大体いつも財布に小銭くらいしかない僕でも、今こうしてなんとかやっていけてる。
そんな訳で、この先の自分の人生の行く末にも「この先も今までみたくなんとかなんだろう」くらいの感慨しかないし、実際そんなもんだという謎の確信すらある。
と、そんな調子の僕だからこそ自分と何かを共有できる友人という都市伝説じみた存在に、ロマンとか憧れがあったりするんである。