「十一人示」第十帖
ふで取ってみなに知らす係り、いつでも係る御用意してあるが、この係りさしてある方も人の子ざ。お役目取り違える事間々あるぞ。
十の戸(とのと)開けて知りたコト、皆には難しいなどと申して誰にも知らさず墓まで持っていく積もりの者ぽつぽつ出ておるようざが、そんな事でこの係りサボらす訳にいかんぞ。
十一(とおとひと)のコト、みなに知らせとうて預けた言ざから、我一人の胎に納めてならんコトくらい分かろうがな。
戸開けてられん一一(ひとびと)を馬鹿にしてならんのぞ。この一(ひと)言分けられんと申しても、御名(みな)十一人(とおとひと)でもあるのざから、この方どんなコトでも分けられん道理ないぞ。
預けてあるコト、我が言じゃと申す鼻高天狗も出てきておるようざが、そんな我善しの我善国天狗では、みな戸ピチリ閉じて嫌気するから、鼻折り損の嫌われ儲けぞ。
係りと言うても人の子ざから、要らん我出てお役目取違ごうてもスッカリ改心できたら、また係りさすぞ。
この係り自分の三(み)も晴らす結構なお役目ざから、しっかと精出して勤めておくれよ。
ますぐな心で身張らしてから、勤めるのぞ。見晴らしたらスキリと係れるから取り違いないぞ。
よく係り勤めた者から、だんだんと二二(ふじ)のお山開けてくるぞ。
お山開けて参った者、すぐに次のお役目に係らすぞ。
次のお役目益々結構なものざから、用意済んだ方から奮って参られよ。
遠江津(とうとうみつ)の五月晴れ、富士も晴れたり日本晴れ、御晴(みはる)かしませ山びらけ。
三月十三日:下に晴れき月