「十一人示」第二帖

今の世、神懸かり名乗って道示す商いする、がい国の人多いなれど、にほんの人、道教えて金取る道理ないぞ。
〈ひとつのもの〉の道、みんなの物ぞ。人に道教えたら、自分も〈みち〉知れるのぞ。
教える人〈未知〉足りんから、道知る部(みちしるべ)のお役目するのぞ。
道聞く人〈満ち〉足りんから、道知る部に尋ねるのぞ。そこに偉い人居らんぞ。有り難いのお互い様のどっこいどっこいぞ。

二本の道、お互い様が〈みち〉足るように作ってあろがな。有り難いのお互い様なから上も下も在りはせんのぞ。にほんの人、その道理とうに身に付けてあった筈であろがな。

我良国(がいこく)の人、我良しの心持ちで、道の端に出た作物みな独り占めしたがるから、いつになっても喧嘩ばかり。お互い様が我善しと一本道を通る気で居るから行くのも退くのも儘ならん。
〈ひとつのもの〉の道の端のお土、いくらでも作物生やすのに、その事分からんから、喧嘩ばかりで余計に腹空くから、気付くまでずっと腹空かして気の毒ばかり。

作物いくらでも取れるところに、にほんの道敷いてあるのなから、我善し彼善しで喧嘩にならんぞ。日本人でも我良人(がいじん)になったら、そんな事よう分からんことなるぞ。

〈ひとつのもの〉のお土から出た作物が〈みち〉なから、この道歩んだらいくらでも〈未知〉いただけるのぞ。〈未知〉いただいたら道開けるぞ。
道辿ったら〈未知〉また出るから、続き知りとうて人〈満ち〉足るのは道理ぞ。道徳を申しているのと違うのぞ。
満ち足りた人、この道で商いして金取る事も要らんこと、もう分かりたであろがな。

お互い様が有難いとは、そういう事を言っているのぞ。この事よく腹に入れておいてくれよ。腹が満ちたらまた〈みち〉用意するぞ。

今の日本人、そんな事も忘れて呆けてしまったから、外国人の真似ばかり。
我異国人のようになって、我良し我善しと申しても気の毒出すばかり。
与し道・亜し未知、両方無くては〈にほんのみち〉にならんであろがな。

今の日本人、その事忘れて気の毒多く出ているようなから、にほんのみち、お互い様が有難いと申す所以、ここによく気付けておくぞ。


十一月十二日 彼に歩き付く(かにあるきつく)

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