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「日本が滅びる」が正しいかは置いておいて、たぶん必要

少し前に、ユニクロの柳井さんに元ZOZOの前澤さんが噛みついた形で、そこそこ炎上しておりました。

柳井さんがテレビの取材のインタビューで、
「知的労働者をもっと入れて、知的労働の生産性を上げるための勉強を日本でも海外でも一緒にやらないと」
「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか
という日本の危機を強調した形での発言に前澤さんが反論した形です。


どちらの意見も正しいと思うし、どっちがいいとかの話ではないような気がします。

現在も進行形で世界と戦っている柳井さんだからこそ、感じる危機感みたいなものがあるのだろうと思います。

一方で前澤さんの主張も理解できます。
主張としては、危機感を煽るだけではよくない。
日本に足りないのは自信であり、次の世代に日本人としての誇りを持って欲しい。そうすれば挑戦できると。

柳井さんは、
「このままでは日本の危機だぞ!だから立ち上がれ!」
という警鐘に近いかたちでの発言に対して、

前澤さんは、
「まだまだ日本も捨てたもんじゃない!だから立ち上がれ!」
という応援という励ます形での発言に聞こえました。

細かい方法論は違えど、もっと日本人頑張ろうっていうコアの部分の主張は同じなのかなぁと僕には聞こえました。

片方はネガティブを強調した言い方。
片方はポジティブを強調した言い方。

両者の大きな違いは、その言い方のアプローチの違いかなぁと。

経済規模で見ると、ZOZOの時価総額1兆円に対して、時価総額10兆円規模のユニクロの柳井さんの方が明らかに説得力がでてしまいます。


どっちが正しいかは、ちょっと置いておいて。
これは状況によって効果的な言い回しがあるなぁと感じました。

安全かリスクか

人に行動を変えてもらう時、「変えることの利点を強調する」か「変えないことの代償を強調する」かって問題があります。

ある研究によると、人は利益を強調されるとリスクを取らなくなります

リスクをとる選択肢よりも、少ない利益でも守って安全に行動してしまうらしい。

逆に、確実に失うものは何かを強調されると、その損失を回避するためにリスクをとってでも行動しようとします。たとえそれが多少思い切った行動であってもリスクをとるらしい。

例えば、ある工場で3つの工場を閉鎖、6000人を解雇しないと行けない状況で判断を迫られたとします。

A:3つのうち1つの工場と2000人の職を救うことができる

B:3つのすべての工場と6000人の職を救える可能性が3分の1ある。だがすべての工場も全員も救えない可能性が3分の2ある。

って場合は、だいたいAを選びます。確実にある利益があり、安全なので。

これが、

A:3つのうち2つの工場と4000人が職を失われる。

B:3つのすべての工場と6000人の職が失われる可能性が3分の2ある。だがすべての工場と全員の職を救える可能性が3分の1ある。

ってなるとBを選ぶ人が増えます。

同じことを言っているんですが、印象が全然違います。
利益を視点にするとリスクを回避しがちで、失われるものを視点にすると思い切った行動、リスクを取る可能性が上がります。

なので、現状に満足している場合や、行動にリスクを感じている場合は、行動が変わったら得しますよっていくら言われても対して魅力を感じない。
その利益に魅力を感じないんですね。
安全なリスクのない行動を選ぶ、つまり行動は変わらないってことです。

逆に、行動しなければ確実に損失がある場合は、人はリスクを冒すことが魅力的に感じるようになります。


話は戻って、前澤さんと柳井さん。

どちらも何か変えなければいけないと思っているなは共通しています。

その上で、2人の主張のどっちが聞いてて心地いいかって言ったら、もちろん前澤さんの方だと思います。

がしかし、現在の日本のジリ貧を変えたい、何か変わらなければいけない、という意味では危機感を煽る柳井さんの方が、行動を変えてもらう為に効果的なのかもしれません。

このままでは近い将来、確実に失われるものがあって、リスクをとってでも変わっていかなければならないという選択肢の提示だという風に聞こえました。

無関心にテコ入れする為にビジョンを示すことは大事なのですが、最初からビジョンだけでは人はなかなかリスクをとってまでも行動を変えません。
大きな行動をとってもらうには、現状の問題を目の前に叩きつけないといけないことがあり、それの方が効果的な場合があります。

そういう意味では柳井さんの「日本が滅びる」という言葉は、キツく強烈ですが、日本人を行動させるのに必要な言葉なのかもしれません。

ということで

日本人として諦めたくない、まだまだできるっていう前澤さんの主張は好きですが、もっと海外で戦えるように門戸を開くべきだという柳井さんの主張も理解できます。

でもあえて、僕がポジションをとるなら、どちらかというと柳井さん側です。

カナダもアメリカに優秀な人材をどんどんとられて、常に人材不足ですが、ずっと移民を受け入れ続けています。
ただ誰でも良いわけではなく、それなりに優秀な移民だけをとるように選択的に受け入れをしています。
まぁゆるい職種もありますが、それでも基本は学歴や職歴や英語能力が無いと移民にもなれません。
そうやってなんとか国を維持しています。

日本もどこかで選択的に優秀な移民を受け入れて、日本人も海外で戦える競争力のある人材を育てないといけないかもしれません。

もっというと、日本人ももっと海外という選択肢があるべきだと思うし、そのリスクをとるためには、日本が滅びるかもしれないという危機感が必要なのかもしれません。

危機感を煽るマーケット手法は好きではありませんが、今回の柳井さんの発言は、かなりポジショントークとしてわざと強い言葉を使ったなぁという印象でした。

ではでは。

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