仕事終わりの本屋さん。
私は、進学を機に地元を出て、しばらく都会で働いて。
また地元に帰って働いている。
都会にいたときには、仕事終わりに同期とごはんに行って、ひとしきりその日のもやもやしたものをすっきりさせてから帰ったり、
ざわざわと人の溢れる繁華街に行くことで気を紛らわせたり、
キラキラと輝くデパートに寄ってみたり、
あたたかい灯りのある夜カフェに入ったり、
本屋さんに立ち寄ってから電車に乗ったり、
そんな風にしてストレスを逃していた。
ど、がつくほどの田舎に帰ってきた私。
仕事終わりにごはんに行ったりすることはあったけれど、ごはん以外で「どこかに立ち寄る」という動きはしなくなったなと思う。
車社会というのも大きい。それに、新しい仕事に慣れるまでは必死だったのかもしれない。
この街には、デパートも、繁華街も、夜にやっているカフェもない。
でも、田舎にも本屋さんはちゃんとある。
そこそこ大きな本屋さん。
(地元のなかでは。)
最初は絵本、そのあとはドリル、そのあとは問題集、参考書をお世話になってきた本屋さんだ。
今日は仕事終わりに少しドライブしつつ立ち寄ってみた。
え、歩いてないから立ち寄ってない?
乗り寄ってみた。
そういう気分だった。
吸い寄せられるように、
車を停めて。
本のにおいが落ち着く。
何も考えずに歩き出してみる。
やはり自然に手に取るのは仕事関連の本。
ヒントがいっぱい。
欲しいなと思うけど、あれも、これも気になる。選べない。
ファッション誌をばらり。
秋のファッション、見てるだけで楽しい。
可愛いモデルさんと服を見たら抜群に癒された。
最後は占いをチェック。
ラッキーデー、過ぎてた。何かあったっけ。
でもきっと良い日だったに違いない。
旅行の本。
行きたいところがたくさんある。
景色の写真を見てほっこり。
来年のカレンダーと手帳のコーナー。
年、よりも、年度、が気になるなぁ。
3月終わりのが出てから買いにいこう。
店内には、リリースされたばかりであろう且つ巷で流行っているであろう曲が流れている。
高校生のときよく聞いていた大好きだった歌手の新曲だ。声ですぐにわかった。
当時の失恋をきっかけにあの歌手もなんとなく封印して聞かなくなってた。
でも、やっぱりすっと入ってくる好きな声と、歌詞だ。
また、聞こう。
人はそう変わらないらしい。
特に好きなものに関しては。
文庫コーナー。
目に付いたものを買ってみることにした。
仕事に関連した内容の小説。
なんだかんだいって今の私の気持ちは仕事に一番の比重をおいているらしい。
それがよくわかった。
本屋さん、
好きなものに自ら向かっていける喜び。
今から始めるヒントもたくさん。
なんて幸せな場所なんだろう。
帰る頃には頭と心がすっきりしたような気がした。
絵本、ドリル、参考書。
そのコーナーにはもういかなくなった。
真っ先に向かう場所が変わった。
仕事のことが気になる。
ファッションは自分で選べる。
旅行にだって自分で行ける。
スケジュールだって自分で決められるんだ。
知らない間に大きな自由を手に入れていたらしい。
私、もしかして大人になったんじゃない?
もしかしなくても、大人、なんですけどね。
今度もまた来よう。
仕事終わりの本屋さん。
ありがとう。
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