TPEフィラメントの最適スライス設定を探る【オリ鉢研究日誌#1】
ド文系&数字アレルギーだがガジェットオタクの女が植物にハマった結果、3Dプリンターで自作鉢を作りたくなってしまった。
とはいえ、「3Dプリント鉢」が作りたいのではない。
3Dプリントで自由な形にデザインしたモールド(型)を使って「石膏鉢」を作りたい。
今のところネット上で同じ欲望を抱いた人間を見たことがないので、新しい概念だと思いたい。
そいういうわけで、イチから制作方法を模索して2週間ほどになる。
ド文系、数字アレルギー、ものづくり経験なし。
完全ド素人の私が、重なる失敗に萎えながらネットを漁りまくっていたら出てきた「TPE」という素材。
ものすごく良さそうだが、マイナー素材らしく先人の設定が全然出てこない。
似た素材であるTPU関連の動画を参考に色々設定をいじってみて、私の用途に合うスライス設定(3Dモデル設計)を模索してみた。
TPEがどんな素材か知りたい人は、別の場所でググってきてね。
目指している形
石膏鉢を作るためのモールド(型)を作りたい。
流し込んだ石膏を硬化後、取り出す際に裏返す・元に戻すという作業をするため、
・柔らかくしなやか(柔軟性・弾性)
・薄くても強度がある
・形を歪めても元の形に戻る(非可塑性)
・型として何度も利用できる(耐久性)
といった素材である必要があり、今回TPEをチョイス。
実験してみる!
3cm×3cm×3cmの円筒をプリントして、形のきれいさ・強度・曲げやすさ・復元力(元の形に戻るか)をチェック。
本番用のモデルはオーバーハング部分があるので、実験②からはサポート材を付け剥がれやすさも検証。
先に結論
色々いじって、結論メッチャ大事だと思ったのは下記の3点。
移動速度を落とす
PLAだと700mm/sとかが標準設定だが、精度や糸引きがとんでもないことになるので、本実験では積層時のほぼすべての速度を「40mm/s」で固定。リトラクションは無し。
ノズルとビルドプレートの温度を高くする
TPUの推奨設定では「なるべく低い温度で」と出てくるが、低くするほど強度が低く・糸引きがひどくなった。
使用フィラメント公式の推奨値のMAXに近い値が、試した中だと一番きれい(ノズル240℃ / プレート60℃)
壁の厚さは「厚すぎず薄すぎず」の絶妙なライン
スライスソフトではなく、3Dモデル側の設計時に必要(blenderを使用)。
モールドとしての用途だと1.5mmでは厚すぎ、1mmでは薄すぎて裂けやすい。1.25mm付近がベスト。
他の設定は、ほとんどBambu Lab A1 miniのデフォルトプリセット(0.20mm Standard @BBL A1M)からあまり変えていない。
※薄さと強度を両立させるため、若干いじった項目は下記
実験結果
計4回の実験結果をまとめるとこんな感じ。
字ちっちゃいので下にも書きます。
【実験1】初手から良い感じ
TPEでのスライス設定を取り上げた日本人の記事・動画がほとんど無いので、下記の動画を参照し印刷したところ、初手で結構良い感じのクオリティに!
尚この方も初心者ということだったのと、動画内で完璧な仕上がりにはならないため、この時点では参考程度だったのだが、最終的にこの動画の温度設定(公式推奨の温度設定)が一番良かった。
モールドとして使うにはやや厚すぎたので、厚みの最適値探しと糸引き・継ぎ目の荒さを改善するため、実験2に移る。
【実験2】設定変えたら大失敗
壁を薄く&ノズル温度を下げたことで強度がダメダメに。
温度周りはTPUのおすすめ設定として先人が紹介しているものを参考にしたが、大失敗だった。
【実験3】フィラメント送れなくて大失敗
実はこのフィラメント、エクストルーダーが引っ張る力がうまく伝わらず、自動でフィラメント供給ができない=手動で引っ張り出してあげなきゃいけないというクソ環境。
放置していたらフィラメント送り出しが止まっており、強制終了。。
本番印刷の時もこれで相当苦しんだので、詳しくは次回の記事へ。
ただ、厚みに関しては成功しており、「1.5mmだと厚すぎ、1mmだと薄すぎ、その中間がベスト」という結果が得られた!
【実験4】元の設定に戻す+微調整が一番良かった
結果、現状最強はこの構成!
サポート材もきれに外せたし、強度や非可塑性も問題なし。
次回は、この設定で本番用データのプリント(試作第1回)に臨みます。