「漬ける」第十一話：「探偵の登場」

第十一話：「探偵の登場」

ダビッドソンのレクサスは、静かにうどん屋の前に停車した。現場はすでに警察によって封鎖されており、黄色いテープが風に揺れている。ダビッドソン、トンコ、天野は車から降り、現場に近づこうとしたその時、意外な人物が姿を現した。

「おや、これはこれは。興味深い事件に遭遇したようですね。」

その声に振り向くと、そこには一人の名探偵、麻畑任三郎が立っていた。トレードマークの帽子を目深に被り、知的な眼差しで彼らを見つめている。

「麻畑さん、どうしてここに？」ダビッドソンが驚きを隠せずに問う。

「ええ、ちょっとした縁でこの事件を知り、私も興味を持った次第です。さて、皆さんの話を聞かせてもらえますか？」麻畑はそう言って、ポケットからメモ帳を取り出す。

トンコはその姿に少し身を引くが、麻畑の鋭い視線はすでにトンコに注がれていた。「特にあなた、トンコさんでしたね。昨晩のあなたの行動が少々気になります。長いトイレの時間...何か隠していませんか？」

麻畑の推理は、トンコが犯人だと仮定し始めており、彼の行動や言動に注目しているようだった。

一方、ダビッドソンは、車内での匿名掲示板の書き込みを思い返す。房州アナウンサー犯人説はまだ彼の中で最も有力だったが、麻畑の登場とトンコへの疑いは、新たな波紋を投げかけていた。

「房州さんの話もありますが...」とダビッドソンが切り出す。

「ふむ、房州アナウンサーですか。確かに裏の顔を持つ人物は少なくありません。しかし、証拠がなければ推測に過ぎません。まずは、確たる証拠を集めることから始めましょう。」

麻畑はそう言って、現場の方へと歩き出す。彼の存在感は、まるでこの事件の全貌を解き明かすかの如く、3人を先導していった。

現場の空気が張り詰める中、麻畑の推理は進展し、事件は名探偵の手によって、どのように解明されていくのか、期待と緊張が交錯する。