第五話:「堕ちる影」

ご挨拶申し上げます。

この度、私の小説を手に取っていただき、誠にありがとうございます。作品には覚醒剤が登場しますが、ここで明確にお伝えしたいことがあります。この小説は決して覚醒剤を推進するものではありません。

物語の中で描かれる覚醒剤は、主人公や他のキャラクターたちが直面する様々な課題や葛藤の一部として存在しています。私の意図は、薬物の危険性やそれがもたらす影響をリアルに描写することにあります。薬物依存やその結果としての人間関係の崩壊、社会的な影響について考えるきっかけを提供できればと願っています。

読者の皆様がこの作品を通じて、薬物の問題について深く考え、理解を深めていただけることを期待しています。どうぞ、物語をお楽しみいただきながら、同時にそのメッセージにも目を向けていただければ幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。


第五話:「堕ちる影」


トンコと天野のラーメン屋経営は順調に進んでいた。ラーメン「パキパキラーメンシャブ家」の人気は衰えることを知らず、二人はいつしかその成功に甘んじるようになっていた。


しかし、成功の影で、二人は新たな試練に直面していた。ストレスの多い日々、経営のプレッシャー、そして過去のトラウマから逃れるために、トンコと天野は次第に覚せい剤に依存する生活を送るようになっていた。初めはガラスパイプでの吸引だったが、次第にその効果では満足できなくなり、二人は更なる強い刺激を求めて注射器を使う決断をする。


「トンコさん、これで楽になれるんだよね?」天野は震える手で注射器を持ちながら、トンコに問いかけた。


トンコは頷き、しかしその目には過去に見たことのない暗い光が宿っていた。「そうよ、天野君。これで、全部忘れられる。少なくとも、その時だけは...」


彼らはそう言って、現実から一時的に逃避する手段を選んだ。注射器を使うことで得られる即効性と強烈な快感は、彼らが現実に戻ることをますます難しくさせた。


しかし、この選択は彼らの日常に深刻な影響を及ぼし始める。ラーメン屋の経営にも乱れが見え、従業員たちはトップの異変に気付き始めた。二人は仕事中でも隠れて使用するようになり、集中力や記憶力が著しく低下。仕事の質が落ち、客からのクレームが増えていった。


トンコは元々、冷静で鋭敏なビジネス感覚を持っていたが、薬物の影響下では判断が鈍り、誤った経営判断を連発してしまう。そして、天野は厨房で手を切ったり、火傷を繰り返したり、明らかに仕事に支障をきたしていた。


彼らの関係も変わった。初めは共依存で支え合っていたが、次第に薬物を巡って口論が増え、信頼が揺らぎ始めた。 


この章は、成功のピークから薬物依存へ転落する二人の姿を描き出す。ラーメン屋という表舞台の裏で、トンコと天野は自分たちの人生のコントロールを一時的にでも薬物に委ね、現実から逃れようとする。しかし、その代償は彼らの健康、ビジネス、そして互いに対する信頼を蝕んでいくのだった。

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