「漬ける」第十一話:「疑惑の道程」

第十一話:「疑惑の道程」

ダビッドソンの運転するレクサスGS450hが、静かにうどん屋へと向かう。車内は重い空気に満ちていた。

「やっぱり、行きたくないな...」トンコが突然口を開く。彼の声はどこか震えているようだった。

天野はその言葉に反応し、昨日のトンコの行動を思い出す。トンコが長時間トイレにこもっていたこと、そしてその間の行動に疑念を抱く。「もしかして、トンコが...?」と心の中で呟いた。

一方、ダビッドソンは、前に話していたアナウンサー犯人説をまだ信じていた。そして、車を運転しながらも、スマートフォンを操作し、ある匿名掲示板の書き込みに目をとめた。

「フリーアナウンサーの房州さんって、毎年ラオスで幼女売春しに行ってるよ。」
「西成のうどん屋を殺したのは」

その書き込みを読んだダビッドソンの眉が寄る。房州アナウンサーといえば、家族を持ち、テレビで笑顔を見せるあの人気アナウンサーだ。信じがたい情報に、ダビッドソンは思わずスマホを握る手に力が入る。

「房州さんが、うどん屋の社長を?」ダビッドソンは半信半疑でつぶやく。

車内の空気が一層重くなる中、トンコは窓の外を眺めながら、何かを恐れるように小さく震えていた。天野はそんなトンコを横目で見ながら、ますます彼への疑いを深めていく。

「本当にトイレにいたのか、確かめなきゃ...」天野は心の中で決意する。

ダビッドソンは、房州アナウンサーの件を頭の片隅に置きつつも、今は目の前の殺害現場に向かうしかないとアクセルを踏み込んだ。疑惑と不安が交錯する中、彼らは真相を求めて、西成のうどん屋へと急ぐ。

物語は、真実と嘘、信頼と裏切りの間で揺れ動きながら、新たな展開へと進んでいく。

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