「崖っぷちギャンブラータイキ」第三章

第三章: 命の賭け

タイキはそのカードを手に取る。部屋の中央には大きな円形のテーブルがあり、そこには既に数人のプレイヤーが座っていた。皆、異様なまでの緊張感を纏い、その目は真剣そのものだった。老人はタイキを席に導き、「ここでは、君の全てが試される。頑張りたまえ」とだけ言い残して去った。

ゲームは「ロシアンルーレット」の変形版だった。ただし、銃に込められているのは一発の本物の弾丸ではなく、カプセルに入った未知の薬物だという。勝者には巨万の富、そして負ければその薬物の効果を自ら体験することになる。

タイキは、自分の人生がこんな形で賭けの対象となることに恐怖を覚えつつも、既に逃げられないことを理解していた。ゲームが始まり、最初の数回は他のプレイヤーがカプセルを引き当て、奇妙な症状を示しながらも、ゲームは続行された。

タイキのターンが回ってきた時、彼の心臓は早鐘を打つ。銃を手に取り、震える指でトリガーを引く。空砲。安堵が一瞬訪れたが、ゲームはまだ終わっていない。

次のラウンド、タイキは再び運命の引き金を引く。この時、奇跡的にまたもや空砲。プレイヤーの中で生き残っているのは彼ともう一人、冷たい目をした女性だけになった。

彼女の名はリナといった。リナは最後の勝負に挑む前に、タイキに問いかけた。「何故、こんな場所にいるの?」と。タイキは自分の借金と、この船に乗った経緯を簡単に話した。リナは静かに頷き、「私も似たようなものよ。でも、ここで終わるつもりはない」と言い、彼女は静かに引き金を引いた。

空砲。そして、タイキの番。彼は最後の決意を胸に、静かに銃を上げた。その時、リナが「一緒に逃げない?」と囁く。タイキは一瞬動揺するも、ゲームのルールを破ることがどれほど危険かを考え、首を振った。

トリガーを引く直前、リナが突如として立ち上がり、銃を奪い取ると、部屋のガードに向かって発砲。彼女が引き当てたのは、意識を失わせる薬物だった。ガードが倒れ、混乱の中、リナはタイキの手を引いて走り出す。

「どうして?」とタイキは走りながら問う。

「私たちはただの駒。勝っても負けても、この船から出ることは許されない運命だったのよ。でも、まだ終わりじゃない」とリナは答えた。

二人は船のデッキに出て、海を見下ろす。背後からは追っ手の足音が聞こえてくる。選択の余地はなかった。リナとタイキは手を繋ぎ、暗い海へ飛び込んだ。

海面に叩きつけられた衝撃は、冷たさと共にタイキの意識を一瞬奪う。だが、リナの力強い泳ぎに導かれ、二人はどうにか岸へと向かう。

エスポワール号は遠くに見え、そこからの光が夜の海を微かに照らしている。タイキは、自由の代償と、ギャンブルがもたらす真のリスクを、身をもって知ったのだった。

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