近代建築に想いを巡らす
近代建築、花街の研究をライフワークとしている身にとって、建物との会話は最も重要視するところ。中でもフィールドワークとしての京都は魅力的な街で、1〜2ヶ月に1回程度訪れています。
花街『先斗町』のシンボルである先斗町歌舞練場。
無知な学生身分で散々飲み歩いた先斗町ですが、時が過ぎ、立場が変わり、再び訪れることで、当時、何気なく見ていた建物が、実は、最先端の様式美と絶賛され、先斗町の発展に欠かせない建物だったことを知る。
設計顧問は武田五一、設計・施工は大林組(木村得三郎)。
外壁には、建築家・フランク・ロイド・ライトの様式を模した茶色のスクラッチ・タイルが使われ、そのタイルは、「自然の窯変美」を備え美術工芸品としてタイルを追求していた、泰山製陶所製造の泰山タイルを用いた。
武田五一、フランク・ロイド・ライト、泰山タイル、・・・
「東洋趣味を加味した近代建築」と賞賛された和洋折衷の鉄筋コンクリート造。
花街のシンボルとして鴨川縁に建ち、先斗町の舞妓、芸妓らを見守り、進駐軍に摂取されるも、再びシンボルとして返り咲く。
近代建築巡りは、私がこの世に生を受ける前から長きに渡りその空間に佇み、歴史の証人たる建造物と会話をすることで、私の記憶が新たに作り替えられ、ひとつのピースを生み出してくれる。
生み出されたピースを、ジグソーパズルのようにひとつひとつ埋め、これから発展していくであろう当時の街の様子、戦火を生き抜き、新たに発展していく街の姿、衰退していく街の姿、そしてこの街とともに生きた人々の姿を想像しながら、その建造物の生き様に想いをめぐらす。
やはり私はこの作業がたまらなく好きなのかも知れない。