東大「ネット検索を前提とした院試」

これを聞いて驚くよりも「ついにこの時が来たか」と思う人も少なくはないだろう。個人的には大学の成績評価基準に疑問を持っており、記憶力だけで成績が決まる仕組みでは大学としての存在意義がないとすら思っている。

知識と知恵は別物だ。前者が記憶力を意味するなら後者は応用力を意味する。前者に長けていた優秀な学生が就労現場(特に、自分の専攻を活かせた職場で)では初心者と変わらないことが多いのは、筆者のみならず社会人経験がある人は同意するところだろう。

大学は知識と知恵、どっちを磨く場だろうか?どっちも疎かにはできないけれども、強いて言うなら後者に違いない。ましてや、大学院となると「勉強」ではなく「研究」になるので、応用力の方が非常に大事になってくる。勉強は出来るけど研究は出来ない人、勉強はできなかったけど研究には長けている人がいるという話は、昨日や今日の話でもない。

学部時代、課題や試験の評価基準がキーワード式(内容よりもキーワードが多ければ点数が高くなる方式)という話を聞いてがっかりしたことがある。もちろん、多数の学生を相手する教員の立場となるとわからなくはないが、ただただ知識を入れ込むだけなら独学でもできる。自分の考えを語り、それに対するレスポンスがあってこそ大学の存在意義があると言えるのではないだろうか。

理系の大学では、本を持ち込むことが可能な試験も珍しくはない(せめて、海外では)。本に答えが書いてない上に、本を読んだところで応用ができないと答えを書けないからだ。大学によっては試験監督もいない、制限時間もないという噂も聞くぐらいだ。とんでもない野放しではないかと思うかも知れないが、筆者はこれが大学らしい試験だと思う。

昔は、字をきれいに書くことすら評価基準であるという噂もあったぐらいだが、そういった試験の本質とは無縁なテクニカル的な要素は排除されつつある。ついに、機械的に取り入れた知識量だけの勝負という無意味な競いも、過去の話になる時代が訪れたかも知れない。

*オンライン入試は全ての東大の大学院で行われるわけではありません。

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