人間はトマトをつくれますか?
スペインのバルセロナには、アントニオ・ガウディの未完の建造物サグラダ・ファミリア教会があって、今日もコツコツコツコツと造られている。中でも手間ひまかけているのが彫刻。その彫刻を、日本の外尾悦郎さんが主任彫刻家として手掛けている。〈生誕の門〉はユネスコ世界遺産に登録。
昨秋、愛知県豊田市で農業を営んでいる友人をふらっと訪ねたら、トマトハウスで野良仕事をすることに。そして「年末年始には帰ってきて」という言葉を真に受けて、クリスマス前に舞い戻って毎日トマトを食べています。トマトの品種は桃太郎。ホープ(赤)とゴールド(黄)の2種。施設園芸農業(ハウス栽培)という栽培方法で、空調、水やりも自動、冬でも暖かく半袖で作業ができます。今は最新の施設で夏野菜も冬においしく食べられます。人の手と技術の進化がトマトを作っていました。100%のトマトジュースの味はトマトでした!
↑施設園芸のハウス内の様子。黄色いトマトは桃太郎ゴールド。ジュースになるのは、こちらの黄色いトマトございます♪
さて、ちょうど10年前、外尾悦郎さんのお話を直接聞かせてもらえる機会がありました。福岡に渡ったすぐのこと。当時のぼくは外尾さんのことをちゃんと知らずに、友人に誘われるがまま九州大学の小さな教室へ向かいました。参加者は、ほとんどが大学生や院生。話は多岐にわたり、西洋と東洋の思想のこと、日本人として培ってきたものひとつひとつを聖書に照らし合わせていること。風や水などを表現する時は、自然との調和の中で生まれ育った幼少期からの体験を頼りにしているということ。
「人間はトマトをつくれますか。」
外尾さんは、ぼくらにこんな投げかけをしました。学生たちは「タネを撒いて水をやって……」と答えていました。外尾さんは西洋思想の塊のような建造物に、東洋思想を組み込んでいました。そこに西洋と東洋の神様の存在を意識しながら、常に自問自答しながら。
「人間はトマトを創造できるか。」
なーんてことを、未完のまま死んでいくことになるぼくは、暖かい温室の中でトマトをちょきちょきしながら哲学していたのでした。おしまい。
↑真っ赤なトマトは桃太郎ホープ。収穫時、リンゴが紛れ込んでる!と、見紛うほど真っ赤っか。色を体系化している色相環(虹色プラス2色を連続的に配列し円環状にしたもの)、向かい合う色同士を補色と呼ぶそう。補色同士は真反対の色なので、並べるととても目立つ!
トマトの真向かいにある色は葉っぱの緑。真っ赤なトマトが、そりゃもう目立つ目立つ!「もいでくれー!今がチャンスだぜ!」と言わんばかり。自然のままって、そういうことなんだと思うんです。みんなで朝トマト♪